佐賀市でのり養殖業を営む徳永義昭さん(64歳)は、作曲家・リストの難曲「ラ・カンパネラ」を独学で習得。大きな反響を呼び、今では全国で演奏会を開いています。そのきっかけは世界的ピアニスト、故・フジコ・ヘミングさんの演奏でした。52歳で無謀ともいえる挑戦をして夢をかなえた徳永さんに、これまでの経緯や次なる夢を伺いました。
聞き手/小原茂この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年10月号(9/18発売)より抜粋して紹介しています。
フジコ・ヘミングの演奏に衝撃
――リストの作品の中でも難曲中の難曲と言われる「ラ・カンパネラ」を弾いてみたいと思われたきっかけは何でしたか。
徳永 自分はのり養殖一筋で、シーズン以外の4〜8月はパチンコばっかしよったとです。毎日開店の10時から夕方6時までパチンコ。それが51歳で大負けして、「もうやめんないけんね」って。そんときにテレビを見とったら、フジコ・ヘミングさんが「ラ・カンパネラ」ば演奏しんさったとです。
それに衝撃を受けて「この“カンパネラ”ば弾いてみろかね」ち思うてからね。たまたま妻がピアノ教室をやっていて、家にピアノもあった。練習を始める前にまず、教室に通う子どもたちに「おじさんもピアノすっちゃ。1年後のピアノ発表会に出るぞ」と約束したとです。
――では奥様が教えてくださったのですか。
徳永 いや、絶対習わんです。最初に「カンパネラば弾くじゃ」ち言うたとき、妻が口ばとがらかして「絶対無理!」ちゅうて。そいで「何ち言いよっか」ち、その反骨精神で頑張れた。
1年間毎日8〜10時間の猛練習
――どんなふうに練習したのですか。
徳永 まずカンパネラば完璧に覚える。動画投稿サイトを検索したら、曲に合わせて鍵盤が光るのがあったとです。ゲームみたいに動画の中の鍵盤に光が落ちる。それを完璧に覚えとってから練習しよったです。
――それだけで弾けるようになるものですか。
徳永 なっとですよ。「絶対弾けるようになる」ちゅう信念のあるけん。
――弾いてみたい人も大勢いると思いますが、そう簡単に弾けるものでもありませんよね。
徳永 それは「弾いてみようかな」と「絶対最後まで弾く」との差。おいは「絶対、絶対最後までいくじゃ。弾ききらんことはなか」ちゅう根拠のない自信があったとです(笑)。
次なる夢はカンヌのレッドカーペット
――最近は演奏会などでお忙しい毎日ですね。
徳永 月に20件ぐらい演奏や講演会があり、家にいるのは月に5日から1週間くらい。ちょっと目が回るような忙しさです。
――徳永さんがモデルの映画『ら・かんぱねら』(下記参照)も公開されますね。
徳永 映画の制作をきっかけに、またいろんな方と出会えました。
――今後の夢は何でしょうか。
徳永 カンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩くことですね。監督もスタッフもみんな外国人の、おいのドキュメンタリー映画の制作が進行していて、リストの生誕地ハンガリーで演奏もします。
佐賀を舞台に、のりの養殖業を営みながら独学でピアノを練習し、夢をかなえた男の物語。
出演/伊原剛志、南果歩、大空眞弓ほか
※この記事は2024年6月29日放送「目標のもう一歩先にあるのがかなえたい夢」を再構成したものです。
今や月に20件もの演奏や講演をこなす徳永さん。強い意志を持ち、猛練習へと突き動かすきっかけとなったフジコ・ヘミングさんへの思い、さらにかなえたい夢とは……お話の続きは月刊誌『ラジオ深夜便』10月号をご覧ください。
購入・定期購読はこちら
12月号のおすすめ記事👇
▼前しか向かない、だから元気! 池畑慎之介
▼闘う現代美術家 村上隆の世界
▼毎日が終活 菊田あや子
▼深い呼吸で心を穏やかに 本間生夫 ほか