紫苑さん(73歳)は、かつてはタワーマンションに住む裕福な生活を送っていましたが、コロナ禍で仕事が激減。ひと月5万円の年金のみで生活しなければならない現実に直面しました。でも工夫を重ねた節約生活は、意外と心地よく健康的。日々の暮らしをブログで発信し、人気を博しています。
聞き手/恩蔵憲一この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2024年9月号(8/18発売)より抜粋して紹介しています。
老後を考えなかったバブル時代
――紫苑さんはいつから節約生活を始めたのですか。
紫苑 69歳のときですね。フリーランスで記事を書く仕事をしているのですが、コロナ禍でいきなり仕事がなくなり、収入は年金のみという状態になったのです。それでとにかく、ひと月を年金の5万円で生活しようと決心しました。
――今はフリーでお仕事をしながらの一人暮らし。月5万円で生活するために、どのような計画を立てられたのでしょうか。
紫苑 まずはそれまでの生活費を、買い物のレシートで洗い出しました。それで分かったのは、いちばん高いのが食費で、しかもスイーツや駄菓子(笑)。それが食費の4割ぐらいを占めていたんですよ。それをなくすだけで、食費が月1万2千円ぐらいまで下がるんです。医療費をかけないためにも、正しい食生活をしようと決めました。
それからガス・水道・電気料金を固定費として1万円、固定資産税ほか税金に1万円。インターネットなどの通信費は仕事や外とのつながりを維持するために必要ですから、これも1万円。それらを除いた月2万円が食費や日用品などの雑費になりますが、とにかく食費を中心にし、残りでそのほかの必要なものを買うことにしました。
そうやって生活を始めてみると、雑費がほとんどかからなくて、月4万3千円くらいで生活できたんです。人ってこんなに少ないお金で生活できるんだと驚きました。
節約メニューで健康体に
――大好きなスイーツを節約されて、甘いものが食べたいときはどうされるのですか。
紫苑 きな粉に砂糖を混ぜたり、白玉ぜんざいやさつまいもを食べたり。どれも甘くておいしいし、市販の甘いお菓子より胃に優しくて体にもいいんですよね。私、胃腸が弱くてすぐにおなかをこわしていたんですが、この食生活を始めてだんだん元気になってきました。それはとてもうれしかったですね。
――お金に対する不安はどうですか。
紫苑 何があっても5万円で暮らせるという強さを身につけました。とにかく食べていくこと、きちんと食べて健康を最優先すれば生きていける自信です。大変なことほど乗り越えれば宝物になる。乗り越えることができてよかったと思いますね。
それから、人のことが気にならなくなりました。競争社会で生きてきて、常に人と比べていたので、その価値観を手放すのは大変でした。でも手放してみると、ファッションも食べ物もインテリアも、あらゆることは人の目を気にして選んでいたんだと気付きましたね。自分だけを基準に考えると、物事はずっとシンプルになります。ごちそうじゃなくていわしばかり食べていても、自分がおいしいのだからそれでいい。そう思えるようになって、とても楽になりました。
誰かと話をしても、以前なら「こんなこと話したら恥ずかしい」とか「あんなこと言って、きっとばかだと思われた」とか、ストレスだらけでした。「よく思われたい」という見栄ですよね。それが本当になくなりました。
それから家族との関係がよくなりました。子どもも、母親が地に足を着けて暮らしているのを見て安心したのでしょう。何というか、当たりが柔らかくなった感じがします。お金遣いが荒かったころは、一緒に生活していても子どもなりに不安はあったみたいです。
※この記事は2024年5月9日放送「年金月5万円でも、幸せなシニアライフ!」を再構成したものです。
エッセイスト・ブロガー紫苑さんインタビューの続きは月刊誌『ラジオ深夜便』9月号をご覧ください。かつての仕事や暮らしぶり、安くて栄養バランスを考えた現在の食生活、リメイクファッションの楽しみ方などについて語っています。
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