ネットしてる時って羽目を外しやすくなりませんか? インフォメーション・ヘルスAWARD グランプリ受賞 温若寒さんインタビュー の画像
第一回インフォメーション・ヘルスAWARDグランプリ受賞/大阪大学大学院 留学生の温若寒さん

NHK財団が主催した「インフォメーション・ヘルスAWARD2024」。
グランプリに輝いたのは「しんせいけい」でした。
体重・体脂肪率・筋肉量・骨量などを測る「体組成計」の「こころバージョン」。「ネットをしている時のこころの動き」を自己診断できるツールです。

社会のルール、対人距離、対人関係の維持の3つの視点から、とかく羽目はめを外したり・タガが外れやすくなるネット上のこころの健康状態を計測する、という提案です(インフォメーション・ヘルスAWARD実施報告はこちら)。 

グランプリ受賞者のおんにゃっかんさんに聞きました。


心の健康をチェックする「心組成計」のアイデアでグランプリを受賞。

温さんは中国からの留学生で大阪大学大学院・人間科学研究科で社会心理学を学んでいます。

——インフォメーション・ヘルス=情報的健康についての意見を聞かせてください。

そもそもネットの魅力は自分の好きな情報をすぐに見られることですが、度合いの問題はありますね。見ている情報が正しいのか偏りはないのかに注意する、質の高い情報を目利きするスキルが重要です。

情報のビッグバンで、自分にとって本当に栄養になる情報に接する割合はだんだん少なくなっていると感じています。
情報は見えない、触ることができないバーチャルなものなので、その弊害を実感しにくいところがあります。
それを食生活と同じように考えることで、「健康」とか「不健康」、「偏食」という問題が、情報によっても起きているということを、直感的にわかりやすく捉えられると思います。去年出された、情報的健康に関する共同提言*を読みましたが、凄い提言だと思いました。
* 共同提⾔ 「健全な⾔論プラットフォームに向けて ver2.0 ―情報的健康を、実装へ」 (ステラnetをはなれます)

——グランプリを受賞した「心組成計」は、ネットをしている時の「こころの動き」を計測するという提案ですね。

筋トレをするときに体重計だけでは体脂肪がどれくらい減るか、筋肉量や骨量がどれくらい増えるかわかりません。そこで「体組成計」を活用して健康的に体重を管理します。
「心組成計」も同じ考え方です。オンライン環境だと普段より羽目を外しやすくなったり、思ったことをそのままコメントに書いてしまったり、しやすくなるという経験はみなさんあると思います。

心理学ではそのことを「オンラインだつよくせい」と名付けています。要するに「タガが外れやすくなる」のですが、「心組成計」はその心の状態をチェックするものです。


ネットだとタガが外れやすくなる? 心の動きを知ってみる

——「オンライン脱抑制」ですか……。

リアルの世界では自分のアイデンティティとか、社会のルール、対人関係のマナーなどいろいろ考えて振舞っていますが、オンライン世界ではそれが大きく変わるのでしょう。

匿名性が高いので、思ったことをそのままコメントしてしまったり、普段はしないようなことをしてしまったりする。タガが外れた状態です。誰もがそうした感覚を、ネットをしているときに持った経験があると思います。それを「オンライン脱抑制」と呼んでいます。

「心組成計」は、そうした自分の心の動きが他の人と比べてどうなのか、強いのか弱いのかを、アンケートに答えることで診断して3次元のチャートで見える化します。(「心組成計」の詳しい内容はこちら

ネットをしている自分の心理状態をこうしたツールを使って意識することは重要で、ヘイトやぼう中傷ちゅうしょうの書き込み、フェイクニュースの発信など、情報的不健康のリスクが高い人の特徴を見つけることができると考えています。

第1回インフォメーション・ヘルスAWARDシンポジウム(2024年04月2日)の温さん。

——情報的健康というと、受け取る情報の「バランス」が大事だと考えがちですが、その前に「自分の心の状態」を知っておくべきだということですね。

はい。あなたはネットをする時にこんな傾向がありますよ、とアラートを鳴らすことが心理学の役割だと考えています。

——温さんの母国中国と日本のインターネット情報環境の違いについて感じていることはありますか。

文化的な側面では、日本人はネット上でも礼儀正しいし、挨拶しあいます。その分効率は悪いところがありますが、思いやりがあると思います。
一方、中国の文化は自己主張が重要です。ネット上でも単刀直入に意見をやりとりするので効率的なところがあります。ネット上の行動も文化的な背景によって違いがあると思います。

第1回インフォメーション・ヘルスAWARDシンポジウム(2024年04月2日)より

——最後に第2回のAWARDに応募しようと思っている方々にメッセージをお願いします。

私自身もAWARDに応募する時に、自分の研究成果がどのように社会で使えるのかという点をとてもよく考えました。社会実装するには、みなさんにわかりやすく、問題の解決につながるものでなければなりません。
そうしたことを考える良い機会になったと思っています。これから応募される方々も実際に自分が使ってみてどうだろうかと考えながら取り組んだら良いと思います。どんなアイデアが出てくるのか、とても楽しみです。

——ありがとうございました。

(NHK財団 インフォメーション・ヘルスAWARD事務局)

インフォメーション・ヘルスAWARD 2024に関しては公式サイトをご覧ください。
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