どうも! 朝ドラ見るるです。
トラコ(寅子)&優三さん、結婚おめでと〜〜〜!!
弁護士にはなれたものの、「未婚の女性は頼りなくて弁護は任せられない」という理不尽な理由で仕事を任せてもらえないトラコ。そのうえ、完全に両思いだと思ってた花岡が別の相手と婚約! その反動もあってか(?)、“社会的地位”をゲットするために結婚相手を探し始めたわけだけど……、いや〜、まさかお相手が優三さんだなんて!
いやいや、お兄ちゃんじゃないけど、私だってわかってましたよ? 優三さんが最高の男性だってことは! 一見、頼りなさそうだけど、優しくて穏やかで、いざというときにはしっかりトラコを支えてくれる。うん、相性は抜群だよね。
ところで、トラコのモデルである三淵嘉子さんの場合は、どうやって結婚相手を探したの? というか、当時の女性弁護士たちの結婚事情って……? 今週は、そのあたりが気になってきました。
というわけで、今回は、弁護士の佐賀千惠美先生のご登場です!
佐賀先生の義理のお母様だった佐賀小里さんは、三淵嘉子さんの10年後輩として明治大学法学部で学び、日本で2人目の女性検事になった方。
さらに佐賀先生ご自身も、40年近く弁護士としてご活躍されているので、当時から現在に至るまでの弁護士事情、いろいろお話が聞けちゃいそう!
当事者に聞く! 法曹界の恋愛事情って?
見るる 佐賀先生、今回お聞きしたいのは、ずばり、女性法曹の結婚事情についてなんです! 寅子のモデルになっている三淵さんのケースや、そのほかの女性弁護士の方たちの結婚について、教えてください! あ、個人情報にさわらない程度に……。
佐賀先生 ええ、もちろん、私にわかることであれば、なんでも聞いてくださいね。
見るる ありがとうございます! この話題、実は第1週からずっと気になってたんです。「法律を勉強する女性は結婚できない」とか「嫁のもらい手がない」みたいなことが盛んに言われてたじゃないですか。
今週も、「弁護士の女性はなんだか怖い」とか言われて、なかなかお見合い相手が見つからなかったし。実際のところは、どうだったんでしょうか?
佐賀先生 それでは、まず実際の三淵嘉子先生(結婚前は武藤/今回は結婚で苗字が変わったりするため、今回は嘉子先生とお呼びします)はどうだったのか、というお話からしましょうか。嘉子先生は弁護士になった翌年、1941(昭和16)年、ご実家の武藤家で以前書生をしていた和田芳夫さんという男性と結婚されました。
見るる 書生さんと⁉︎ ということは、トラコと優三さんと同じですね!
佐賀先生 ただし、ドラマでは優三さんが寅子さんの結婚相手に立候補しましたが、現実では、嘉子先生の方から和田さんを“ご指名”されたそうです。なかなか結婚しない嘉子先生に、お父様が「気になる人はいるか?」と聞いたところ、和田さんの名前が上がったそうで。
弟の輝彦さんからうかがったところでは、和田さんは、嘉子先生の周りにいた男性の中で最も優しくて性格のいい人だったそうですよ。嘉子先生のお父様の親友の親戚で、お父様の関係した会社で働きながら、明治大学夜学部に通う努力家でもあったとか。
見るる おお、なるほど優三さんと同じだ! ドラマの2人の流れもよかったけど、実際には嘉子さんの方からのアプローチだったっていうのも、それはそれですてきですね〜!
じゃあ、嘉子さんと一緒に高等試験に合格して弁護士になられた中田正子さんと久米愛さんの場合は、どうだったんですか?
佐賀先生 中田正子先生(結婚前は田中)は、人の紹介で28歳で結婚されています。そのとき、相手に出した条件は「学問が好きなこと」だそうですが、そうして出会ったのが、京都大学農学部を出て東亜研究所に勤めていた男性で、のちに参議院議員になった中田吉雄さんです。
中田先生は結婚後も弁護士を続けながら、また3人の子育てをしながら、夫の議員活動を支えておられました。たいへんなおしどり夫婦だったと、ご自身で語られていましたね。
久米愛先生は、学生時代、大学は違いますが同じ法学部という共通点のある男性と出会って恋愛結婚されたというのは、前回お話したとおりです。こちらは愛先生が先に亡くなられてしまうのですが、夫だった方に取材をした時にも、お互いを尊敬しあっていて、たいへん仲がよかった様子が伝わってきました。
見るる そうなんですね〜。みなさん幸せな結婚をされていると思うとホクホクします! ……でも、あれ? 3人とも結婚されてるじゃないですか。「法律を勉強する女性は結婚できない」っていうのは、デマってことですか……?
佐賀先生 まあ、当時、世間一般的にそのように考えられていたのは事実だと思いますよ。ただ、結婚相手というのは一人ですから(笑)。いい出会いさえあればいいわけで。言われるほど、実際に「結婚できなかった」わけではないのかもしれませんね。
見るる ですよね! ほんと、みなさんすてきなお相手に出会われていてよかった! ところで、やっぱり、その出会いっていうのは同じ法曹界で、っていうことが多いんでしょうか?
佐賀先生 そうかもしれません。私の周りでも弁護士同士で結婚した人は少なくないですし、私の義理の母だった佐賀小里は司法修習で同じクラスだった者同士で結婚、日本で初めての“夫婦検事”でした。かくいう私も、裁判官と結婚しましたしね。
ちなみに、2020年の記録でいうと、弁護士の中での結婚経験者は男性で76.0%、女性で71.9%。やや女性が少ないですが、大きな差というほどではなさそうです。
それに、女性弁護士の中では若い世代の比率が高いので、今は未婚ですが今後結婚する人もあるでしょう。そう考えると、「法律を勉強する女性は結婚できない」は、今や完全に当てはまらない説といえるでしょうね。
見るる それをうかがって、なんだか安心しました。それにだいたい、「嫁のもらい手がない」なんて言い方自体、トラコたちの時代はともかく、令和では死語だし、全く余計なお世話ですしね! 佐賀先生、お話ありがとうございました!
スクープ! 嘉子、マスコミを煙にまいていた⁉︎
清永さん 見るるさ〜ん! 聞いてください、またまたスクープです!
見るる わ、清永さん! 一体どうされたんですか⁉︎
清永さん 三淵嘉子さんにまつわる独自の記事を発見したんですよ。ぜひ見るるさんにもお見せしたくて、大急ぎで持ってきたんです。
見るる なんてありがたい! 今回は何を発見されたんですか?
清永さん こちらです。1941(昭和16)年に出された『法律新報』(当時の法律業界の雑誌)の「法曹伝書鳩」というコーナー。ここを見てください!(囲み部分)
『法律新報』第624号(昭和16年8月25日発行/法律新報社)
清永さん 日本最初の女性弁護士の一人として活動し始めたころの嘉子さん(当時は武藤嘉子さん)の近況が載っているんです。記事では、「純と美と智によき印象を与えられる」とか、「よく出来た方として武藤女史の評判は至って良い」などと書かれたあとに、本人によるコメントも載っていました。注目はここです!
(武藤)女史に結婚につきて理想を問へば“考へた事もありません”と微笑みながら“今まではチャンスが無かつただけです”との答、相応しき伉儷の出現を祈る。
清永さん 「(結婚は)考えたこともありません」と言っているんです。そういうコメントだったためか、記事も「相応しき伉儷」つまり“ぴったりの配偶者が現れてほしい”としめくくっているわけです。
見るる おお、これって、いわゆる、「結婚の予定なんて全然ありませ〜ん」ってやつですよね。そんなコメントが雑誌に載るなんて、なんだか芸能人みたいです(笑)。でも、あれ? 嘉子さんが結婚したのって……。
清永さん そう、嘉子さんが結婚をしたのは昭和16年11月。この記事が載った8月は結婚の3か月前ですから、すでに和田芳夫さんとの結婚の話は進んでいたはず。それなのに嘉子さん、スンッと「考えた事もありません」と微笑んでいると……。つまり、完全に記者を煙にまいているんですよ。
見るる 記者さん、まんまとだまされちゃってる(笑)。
清永さん そうなんです(笑)。記者も「よいお相手が見つかりますように」と言っているくらいですから。取材が甘い(笑)。でも、ここからわかるのは、当時の女性弁護士たちが、世間からどんな関心で見られていたか、ということです。
見るる まるで人気アイドルみたいに、一挙手一投足が注目されていたってことですね。うーん、それはそれで本来的ではないはずだから、嘉子さん、それに対してムッとして、こう答えた可能性もあるかもしれないですね〜。
清永さん 鋭いですね。弁護士として見た場合、まだ開業して1年くらいの若手にすぎません。でも、女性だからと注目を受けてしまう。この記事でも、実は嘉子さん、前段でこんなふうに答えてもいるんです。
「若し私達が男であったら世間は只一人の青二才として何等の注意もしないでせうのに、女なるが為に珍らしがられるだけで、事実まだ何の御話する立場でない」
見るる あ〜やっぱり、ちょっと怒ってる(笑)。それにしても貴重な資料ですね。当時の世間の感覚もよくわかりました。
清永さん また面白い記事や記録を発見したらお持ちしますね。それでは。
見るる あ、ありがとうございました! これからも、“清永記者”の手腕に期待してます♪
次週!
第8週「女冥利に尽きる?」5月20日(月)〜5月25日(土)
意味:《女に生まれてこれ以上の幸せはないということ。》(辞書オンライン『ことわざ辞典』より)
次週予告の映像……みんなの服装が、なんか変わってましたね。あの国民服を見ると、戦争がどんどん厳しくなっている時代だ、っていうのが伝わってきてつらい……。一方で、トラコはついに弁護士として法服を着て法廷に! でも、なんだか一筋縄ではいかない雰囲気? 来週もがんばれ、トラコ!
というわけで、今週の「トラつば」復習はここまで。
来週の先生方の講義も、お楽しみに〜!!
1952年熊本県生まれ。1977年司法試験合格。翌年に東京大学法学部を卒業、司法修習生に。1981年東京地方検察庁検事を退官。1986年弁護士登録。これまで、京都府労働委員会会長、京都弁護士会副会長、京都女性の活躍推進協議会座長などを歴任。著書に、『三淵嘉子・中田正子・久米愛 日本初の女性法律家たち』(日本評論社)、『三淵嘉子の生涯〜人生を羽ばたいた“トラママ”』(内外出版社)などがある。
NHK解説委員。1970年生まれ。社会部記者として司法クラブで最高裁判所などを担当。司法クラブキャップ、社会部副部長などを経て現職。著書に、『家庭裁判所物語』『三淵嘉子と家庭裁判所』(ともに日本評論社)など。「虎に翼」では取材担当として制作に参加。
※清永解説委員が出演する「みみより!解説」では、定期的に「虎に翼」にまつわる解説を放送します。番組公式サイトでも記事が読めます。
2024年4月22日放送の『みみより!解説「虎に翼」解説(2)にぎやかな法廷と「権利の濫用」』はこちらから(NHK公式サイトに移ります)。
取材・文/朝ドラ見るる イラスト/青井亜衣
"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。