「アンパンマン」の生みの親である、やなせたかしと、その妻・小松のぶの夫婦をモデルに描く、2025年度前期の朝ドラ「あんぱん」。2月に主人公・朝田のぶを今田美桜みおさんが演じることが決定したが、このたび4月26日(金)、東京・渋谷のNHK放送センターで記者会見が開かれ、のぶの夫・柳井たかしを、俳優でミュージシャンの北村匠海さんが演じると発表された。

柳井 嵩役 北村匠海(きたむら・たくみ)

東京都出身。2008 年に映画『DIVE!!』で俳優デビュー、2011年には4人組バンド 「DISH//」を結成。映画『君の膵臓をたべたい』で第41回日本アカデミー 賞新人俳優賞を受賞。主な出演作にドラマ「仰げば尊し」「にじいろカルテ」「名探偵ステイホームズ」「星降る夜に」「アンチヒーロー」、映画『アンダードッグ』『さくら』『明け方の若者たち』『とんび』、『東京リベンジャーズ』シリーズ、『法廷遊戯』などがある。また、昨年配信された実写ドラマ『幽☆遊☆白書』は全世界で大ヒットを記録した。連続テレビ小説は今回が初出演。

会見では、先に制作統括の倉崎憲チーフ・プロデューサーと、主演の今田美桜さんが登壇。今田さんの「嵩さん!」という呼びかけに応じ、北村さんが壇上に上がった。北村さんは開口一番、

「今日のこの日まで、長い間緊張しておりました。昔、朝ドラの「なつぞら」のオーディションに参加したのですが、その時はご縁がなくて。朝の時間に、僕の顔はあんまり合わないのではないかと思ってたんですけど……」(北村さん

と話して会場の笑いを誘い、続けて、

「でも今回、出演のお話を……しかもやなせたかしさんをモデルとした役をいただいて。『なんで僕なんでしょうか』と伺ったんです。すると、バンドのライブで僕がMCをしたとき、日頃のモットーとして話したことがきっかけだと言われました。
そのモットーというのは、『10分後に命を落とすかもしれないんだから、今どう生きるかを大事にする。その瞬間の連続が、日々を全うすることだ』みたいなことで。僕は、やなせさんという方は、生きること、そしてこの社会に生かされているということは素晴らしいし、ありがたいことだと考えていらっしゃって、その思いを『アンパンマン』をはじめ、いろんな作品に落とし込んできた方だと思っています。そういう自分の中に持っていた思いが、この役、この作品、そして主人公の今田さんとも出会わせてくれたんだなと思っています。
これから長い時間をかけて1つの役と向き合い、1つの世界と向き合い、その日々を全うしながら、皆さんと過ごしていけたらと思います」(北村さん

と、一つ一つの言葉をかみしめるように語った。
その北村さんとは、今回で6度目の共演となるという今田さん。

「朝ドラは撮影期間もとても長いですし、夫婦役というところで、嵩さん役をどなたがやるんだろう?とドキドキしていたんですけど、最初に北村さんだと聞いたとき、ホッとして、もう安心しかありませんでした。
何度かご一緒させていただく中で、北村さんは朗らかな部分もありつつ、真っすぐで、秘めた強さを持った方だなと感じていました。嵩さんとして、北村さん自身の人柄が映し出されたお芝居を見るのがとても楽しみですし、2人で柔らかく、温かく歩んだであろう2人の人生を、丁寧に描いていけたらいいなと思います」(今田さん

と、北村に全幅の信頼を寄せた。

質疑応答で「やなせたかしさんに、どんなイメージがあるか?」と問われた北村さんは、

「もともとは、明るく朗らかな晩年のやなせさんのイメージしかなかったのですが、今回著書などを読ませていただいて、若い頃どんな人生を歩まれたのかを知りました。そこで改めて感じたのは、人としての弱さを持ち合わせた方だったんだなということです。
言ってみれば、アンパンマンは水に濡れてしまえば何もできないし、誰かの手を借りて顔を取り替えてもらわなきゃいけない。それでも自分の一部分を誰かに分け与え続ける、その優しさが常にアンパンマンを前に進めていると、僕は思うんです。
それは自分が弱いとわかっていないとできないことだし、みんなに手を差し伸べる優しさこそがアンパンマンの正義。そして、描いているやなせさん自身が、実はアンパンマンだったんだなと思いました。だから、嵩として歩んでいく中で、 そういう人としての弱さも強さも敏感にキャッチして、皆さんに伝えていければと思います」(北村さん

と、自身の“アンパンマン観”を交えてコメント。さらに、やなせたかしという、視聴者の記憶にも残っているであろう実在の人物を演じるにあたっての思いを問われると、

「もちろん、実在の方を演じることに対するプレッシャーはあります。ですが、役者の醍醐味として、実在した方の人生を“生き直せる”、それを視聴者の方に届けられるということに、すごくやりがいも感じます。
そして先ほど話したように、僕自身が『生きているとはどういうことなのか』『幸福とは何なのか』と常に考えてきたことが、やなせさんの生き方と何かリンクしたから、きっと今この瞬間があるんだろうとも思うんです。今後ドラマを一緒に作っていくスタッフや、今田さん、こんなにも温かい仲間たちがいるんだから大丈夫、という気持ちもあります。
こんなに撮影期間が長い作品に携わるのは初めての経験ですが、気負うことなく、まずは楽しんでいきたいです」(北村さん

と、前向きな笑顔を見せた。制作統括の倉崎さんは、

「やなせさんがアンパンマンを生み出したのは50代。アニメーションとして世の中に浸透していったのは70代なってからです。やなせさんの人生は、アンパンマンにたどり着くまでが大変で、職を転々とし、漫画家として独立してからももがき苦しんで来られたのだと思います。
また、取材を重ねるうちに、晩年の朗らかなイメージが強いですが、実は気弱な部分を多分に持ち合わせた方ということもわかってきました。のぶと嵩の夫婦を若い時からしっかりと描きたいと考えたとき、真っ先に思い浮かんだのが、北村匠海さんでした。
先ほどご本人の口からもあったように、ライブを拝見したとき、北村さん自身が『今という瞬間をどう生きるか』ということを体現し、伝えている人なんだなと感じ、やなせさんの人生と北村さんの発するメッセージにリンクする部分も感じて、北村さんにぜひお願いしたいと考えました。今田さんとのコンビも、とてもバランスがいいなと思っていまして、2人が夫婦を演じる姿を見ることが、今から楽しみです」(倉崎さん

と改めて起用の理由を語った。
「あんぱん」のクランクインは今秋を予定。2人の家族を含め、今後さらなる新キャストの発表も控えているとのことで、さらに期待が高まる。

【物語のあらすじ】
昭和のはじめ頃、高知の町中をものすごい勢いで走る少女がいました。「ハチキンおのぶ」こと、朝田のぶです。一方、幼い時に父を病気で亡くした柳井嵩は、伯父の家に引き取られ、転校先の学校でのぶに出会います。
戦争の足音が近づく頃、女子師範学校に通っていたのぶは周りと同様に、妄信的な軍国少女になっていました。 やがて戦争が始まり、嵩は出征。嵩は弟・千尋を戦争で亡くし、のぶも最愛の人を亡くしました。女子師範学校を卒業し、のぶは戦争で全ての価値観が変わり、「何が正しいかは自分で見極めなければならない」と 高知の 新聞社に女性初の記者として就職。戦後、クズ拾いの仕事を辞めた嵩が新聞社に入社してきて、二人は同じ雑誌の担当に。
嵩は東京で 漫画家を目指したい気持ちがありつつも、生活していけるか不安でした。のぶはそんな嵩に「あなたも後から来なさいよ。先に東京に行って待っているわ」と告げ、新聞社を辞め上京。のぶを追いかけ上京した嵩と、六畳一間のオンボロアパートでの生活が始まります。お風呂はなくトイレは共同。天井には穴があき、雨の日は傘をさして入らなければいけないが、晴れた夜には星が見える。そんな暮らしをおもしろがり、「どんな環境でも楽しめるこの人と一緒にいたい」と二人は結婚。『手のひらを太陽に』『アンパンマン』が世に出るのは、まだまだ先のことです――。

2025年度前期 連続テレビ小説「あんぱん」

2025年春放送スタート
作:中園ミホ
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大