夜ドラの新作は、3編のオムニバスドラマ「ユーミンストーリーズ」。2月27日、東京・渋谷のNHKで試写会が行われ、主演の夏帆さん、麻生久美子さん、宮崎あおいさん、制作統括の神林伸太郎さんが出席した。

原作は、松任谷由実の名曲からインスピレーションを得て、6人の女性作家によって書き下ろされた小説集『Yuming Tribute Stories』。本作は、その中に収録されている3つの物語から生まれた。それぞれ監督も脚本家も異なるオムニバスでありながら、ユーミンの世界を描いた1つの作品となっている。


物語のあらすじ

第1週「青春のリグレット」

結婚して4年で夫に浮気され、夫婦関係が破綻しかけている(夏帆)。まだやり直せる。そう考えた菓子は夫の浩介(中島歩)を旅行に誘うが、その旅先で、昔ある人に言われた言葉が実は重要な意味を持っていたことに気づき……。青春時代の記憶が後悔となって呼び起こされる、ほろ苦い恋の物語。

第2週「冬の終り」

スーパーでパートとして働く藤田朋己(麻生久美子)は、新しく入ったパートの仙川真帆(篠原ゆき子)と全く会話が続かず気まずい思いを募らせる。しかし有線である曲が流れた時、初めて変化が訪れた。もう一度、少しだけ日常に変化を。一人の思いをくみ取ったパート仲間によって、ちょっとした大ごとに発展してしまう友情の物語。

第3週「春よ、来い」

一族が持つ“あれ”の力を授かったカナコ(宮﨑あおい)。誰のために使ったら良いのか。亡くなった母は誰のために使ったのか。疑問の答えを求めてたどり着いた先に、同じ“あれ”の力を授かった雄大(池松壮亮)、生きることをつらく感じる中学生の多英(白鳥玉季)が見えない糸で導かれ……。誰かを思う気持ちが春を連れてくるあたたかな物語。


第1週に放送される「青春のリグレット」は原作・綿矢りさ、主演を夏帆が務める。繊細な心情とリアルな描写の“綿矢ワールド”を夏帆さんは見事に演じ切った。

綿矢さんは「原作では、主人公が現在から回想する形で過去の出来事が描かれるのですが、ドラマでは過去の場面と現在の場面とがオーバーラップするような作りになっているので、夏帆さんの演じ分けにも興味がありますし、振り回す女性と振り回される男性、それぞれの過去と現在の差みたいなものを感じ取っていただけると嬉しいです」とコメントを寄せている。

第2週目の「冬の終り」は原作・柚木麻子、主演・麻生久美子。女性の複雑な心理描写を得意とする柚木作品は女性ファンも多い。スーパーマーケットで繰り広げられるちょっとした出来事を描き、見る人の心を温かくしてくれるストーリーとなっている。

柚木さんは「ドラマを見たあとに、ずっと会っていない人に連絡してみようかな、と思ってもらえたら嬉しいです」とコメント。

第3週目の「春よ、来い」は原作・川上弘美、主演・宮崎あおいがタッグを組んだ。川上さんは「ドラマの脚本を読ませていただいた際、自分が書いた話なのに、第4話の最後の方で、思わず落涙してしまいました。自分の小説を読み返して落涙したことなど、一度もないのに(笑)」とコメントを寄せている。

そして試写会に合わせ、松任谷由実さんからもメッセージが届いた。

「私の楽曲→短編小説→脚本+演出→役者さんたちの演技→ドラマ。こんなバトンリレーがあるなんて、不思議で光栄です。関わってくださった皆さんそれぞれの解釈が、クリエイターとしてとても興味深かったです。
歌は作り手ではなく、受け手のものだとずっと思って来ましたが、自分のもとを離れたら、本当に様々な物語になって行くのだなと実感しました」

会見では、主演の3人が出演への想いについて、以下のように話した。

「最初に企画書を見たときに、原作・綿矢りささん、監督・菊地健雄さん、脚本・岨手由貴子さんのお名前を見て、こんなに好きが詰まった座組があるんだ!と心が震えました。撮影は2週間に満たないくらいだったのですが、毎日濃密でクランクアップの時にはなんともいえない達成感、充実感がありましたね。テーマ曲である『青春のリグレット』には『私を許さないで 憎んでも覚えてて』という歌詞がでてきますが、ドラマもそのあたりを軸に描かれています。ユーミンの歌の中に自分が入り込んだようで嬉しかったです。ドラマを見る前に、『青春のリグレット』を聴いていただけると、より楽しんでいただけるかもしれません」(夏帆)

「『冬の終り』は、多分高校生が主役の歌だと思うのですが、それが小説ではスーパーで働く女性に。どう結びついていくんだろう……と楽しみでした。小説を読んだとき、脚本を読んだ時、演出もまた違う印象で、それぞれが作品を自由に膨らませていっている感じがすごく良かったです」(麻生久美子)

「撮影前にユーミンさんのライブに行かせていただいて、その時に『春よ、来い』も歌ってくださったのですが、私は勝手にバトンを受け取った気持ちで、役者として私なりに受け取って、歌のパワーや思いをドラマの中に活かせたらいいな、と思っていました。現場にいるときは、ユーミンさんの声がどこかで流れているような意識を持って過ごしていたような気がします」(宮﨑あおい)

また、ユーミンの楽曲で好きな曲を聞かれると、夏帆さんは「ユーミンさんの曲は、情景や匂い、湿度まで伝わってきます。好きな曲は『潮風にちぎれて』。この曲もすごく海を感じて、曲を聴いただけでその世界にいけるようなところが好きです」と話した。

麻生久美子さんは「高校生の頃、カラオケで何度も歌った『真夏の夜の夢』ですね。娘は『やさしさに包まれたなら』が大好きです。いつの時代の曲でも古さを全く感じさせないところが魅力的です」と思い出のエピソードを披露した。

「実は、母が大ファンなんです」と明かしたのは宮﨑あおいさん。「今回、ドラマの話をいただいたとき、真っ先に『お母さんが喜んでくれる!』と思いました。自分の子どもも『魔女の宅急便』を見て、『ルージュの伝言』を聴いたりしています。世代を問わず“今の曲”として聴けるのはすごいことだな、と思いました」。

神林さんからは「3編ともまったく違った形で曲が流れます。楽曲それぞれに意味を持たせているので、それぞれの曲がどんな形で登場するかも楽しみにご覧ください」と見どころが明かされた。


夜ドラ「ユーミンストーリーズ」

第1週「青春のリグレット」(全4回)
放送:3月4日(月)〜7日(木)総合 午後10:45〜11:00ほか
原作:綿矢りさ
脚本:岨手由貴子
演出:菊地健雄
出演:夏帆、金子大地、片桐はいり、中島歩ほか

第2週「冬の終り」(全4回)
放送:3月11日(月)〜14日(木) 総合 午後10:45〜11:00ほか
原作:柚木麻子 
脚本:ねじめ彩木
演出:箱田優子
出演:麻生久美子、篠原ゆき子、伊東蒼、クリスタルケイ、浅田美代子ほか

第3週「春よ、来い」(全4回)
放送:3月18日(月)〜21日(木) 総合 午後10:45〜11:00ほか
原作:川上弘美 
脚本:澤井香織
演出:奥山大史
出演:宮﨑あおい、池松壮亮、白鳥玉季、小野花梨、岡山天音、田中哲司ほか

劇伴音楽:青葉市子
制作統括:遠藤日登思(アミューズ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、藤並英樹(NHK)