ロシアによるウクライナへの侵攻から2年。
苦境が続くウクライナには、過酷な状況におかれた最前線の兵士たち、平穏な日常を奪われ、終わりの見えない戦場で希望と絶望のはざまに生きる人々が数多く存在します。
「NHKスペシャル」をはじめ、ウクライナの「今」をお伝えするさまざまな番組が放送されます。


NHKスペシャル
「戦場のジーニャ~ウクライナ 兵士が見た“地獄”~」
2月25日(日) 総合 午後9:00~9:49

ロシアによるウクライナ侵攻から2年。最前線は“地獄”の様相を呈している。米国からの武器や弾薬の支援が激減するなか、前線のウクライナの兵士たちはロシア軍の激しい攻撃にさらされ、防戦を強いられている。

テレビカメラマンをしていたジーニャ(35)は、南部の激戦地であるザポリージャの最前線に送られた。彼を待っていたのは第一次世界大戦さながらの塹壕ざんごう戦だった。深さ2メートル、幅1メートルほどの塹壕を掘り、その中に数人の兵士がろうじょう。至近距離でロシア兵と撃ち合うことになった。
辺り一面には死臭が漂い、寝袋には無数のねずみが入り込んでくる。「これは殺人ではない、ゲームだ」と生き抜くため何度も自分に言い聞かせ、必死に感情を抑え込む。
番組では、軍と特別に交渉し、ジーニャら最前線の兵士の“自撮り映像”を大量に入手。そこには、ごく普通の日常を生きてきた市民が、戦場を生き抜くため、兵士として人を殺すことを受け入れていく様が生々しく刻まれていた。ロシアによる軍事侵攻が、ウクライナの人びとにもたらした現実を伝える。


NHKスペシャル
「ウクライナ 戦火の放送局Ⅱ~それぞれの正義~」
3月2日(土) 総合 午後10:00~10:49

「このつらさが分からないんですか?」――ウクライナのジャーナリストが、インタビューにそう言い放った。
ロシア軍の侵攻直後から取材を続けてきたウクライナ公共放送ススピーリネ。あれから2年が経ち、記者たちが置かれた状況は様変わりしていた。長引く戦争への厭戦えんせん気分、戦争協力を巡って高まる不公平感……当初は見られなかった不満や怒りが国中に充満していた。
そうした中、かつて戦争報道の最前線にいた記者たちは、ある者は取材現場に立たなくなり、ある者は放送局を辞め軍人となっていた。彼らは、どんな現実に直面し、何を考えてきたのか。
2年前に出会った記者たちを再び取材。見えてきたのは、それぞれの正義が揺らぎ、苦悩を抱えながらも異なる道へと歩み出そうとする姿だった。
侵攻から2年。戦争を伝えてきた記者たちの選択からウクライナの“今”を見つめる。


ウクライナ 家族の戦場「軍事侵攻2年 終わりの見えない苦悩」
2月23日(金・祝) 総合 午後5:15~5:59

暮らしの場が戦場となり、平穏な日常を奪われたウクライナの人々がみずからの心情をつづったビデオダイアリー。
ロシアによる軍事侵攻が始まった直後、アメリカ留学中だったレシィ。ウクライナの音楽シーンで活躍していたミュージシャンのアンドリーイ。戦争が始まった直後、その現実から目をそらしていたカメラマンのワレンティン。
終わりの見えない戦場で、希望と絶望のはざまに生きる人々の記録を伝える。

出演:有馬嘉男(NHK記者)
語り:井上二郎(NHKアナウンサー)


ETV特集「戦禍に言葉を編む」
2月24日(土) Eテレ 午後11:00~11:59

戦時下のウクライナで、市井の人たちの体験を聞きとった本『戦争語彙集』が出版された。「ゴミ」「スイーツ」「恋愛」など77の短編には、それまでの日常……ささやかでかけがえのない生活や記憶が、ひたひたと戦争にむしばまれていく様子がつづられている。
ロシアによる侵攻開始から2年、ウクライナの人々の心の奥底では、どんな変化が起きているのか。現地を歩き、戦禍に編まれた1人1人の言葉をみつめていく。

語り:池松壮亮


BSスペシャル「ウクライナ 戦場のシェフ」
2月24日(土)NHK-BS 午後10:30~11:19

「軍隊は胃袋で動く」。
このナポレオンの言葉を実践するのは、シェフのジェニャ・ミハイレンコさん。本職はキーウで、人気レストランを経営するウクライナの有名シェフだ。
ロシアとの戦いが始まってから、40人の料理人を率い、ウクライナ兵士においしく栄養豊富な料理を提供する活動を続けている。
開戦から2年、世界からの支援は細り、ウクライナは劣勢を強いられている。料理の力で兵士たちを支えようとする、もうひとつの戦い。


ⓒStarlight Media/Gaumont/Roman Lisovsky

ドライブ in ウクライナ 彼女は「告白」を乗せて走る
2月26日(月) NHK-BS 午後11:30~午前0:57(第1~3回/3話連続)
2月27日(火) NHK-BS 午後11:30~午前0:25(第4~5回/2話連続)
※全10回のうち、制作が終了している第1回~5回を日本語字幕版(各回30分内)で放送。

ウクライナの制作会社が制作したウクライナの「今」を描くドラマ。
ウクライナ東部出身の心理学者リディアは、運転ボランティアとして、さまざまな乗客を目的地に運んでいる。妹とケンカ別れをした女性オリガ、夫の愛人であるインガ、国外へ出ようとするフランス人夫妻など……その道すがら、乗客たちはリディアに心情を語る。
リディア自身も問題を抱えている。不誠実な夫のドミトロ(愛称ディマ)と離婚したいが、応じてもらえない。2014年の騒乱のさなかに起きたバスの爆撃事故で亡くなった妹のことも忘れられない。
彼女の車には妹が物語を朗読したCDが残されている。その声に導かれるかのように、リディアと乗客たちの旅は続く。
主人公・リディア役はウクライナの実力派俳優、アナスタシア・カルペンコ。