NHK-FMの人気番組「アニソン・アカデミー」で生徒会長(番組MC)を務めている“しょこたん”こと中川翔子さんの連載コラム。今回は「アニアカ」放送500回を迎えての思いや、自身の楽曲である「65535」が主題歌としてオープニングを飾ったアニメ「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」について語ります。


♪トゥットゥル~。中川翔子です。
先週、1月27日の生放送で、「アニソン・アカデミー」は放送500回を迎えました! 500回、なんと500回ですよ! いつも聴いてくださっている生徒(リスナー)のみなさんのおかげで、ここまで来ることができました。本当に、感謝してもしきれないですね。

10代のころからアニソンに助けられてきた私にとって、この番組は心の故郷で、実家にいるような居心地の良さを感じてきました。たくさんの講師(ゲスト)の方たちが来校してくださって、今はもう宇宙一の学校になっていると思いますが、でも「この世に存在するアニソンを全部流す」という夢は、道半ば。次は1000回を目指して……。1000回まで、あと10年? 私としては、余裕なんですが(笑)。

さて、現在は冬アニメが絶賛放送中ですが、私は秋アニメの「呪術廻戦/渋谷事変」が好きすぎて、放送終了後は何を支えに生きていけばいいの?という状態でした。完全に「呪術廻戦」ロスでしたね。新作はいつ? 私の生きがいなのに……、って。

と言いつつ、「呪術廻戦」だけじゃなくて、同じクールに放送された「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」も、私のお気に入りのひとつだったんですよ。この作品、いわゆる「覇権アニメ」という評価はされてなかったけれど、刺さる人には刺さる、すごくおもしろい作品だったんですよね。

それは、私が主題歌の「65535」を歌っていたから言うわけじゃなくて。美少女ゲームをテーマにしたタイムリープものだったのですが、ゲームの箱を空けると(そのゲームが発売された)いろんな時代に飛ばされてしまうという設定がまずおもしろくて、そもそも原作にはその要素がないから、オリジナル作品と言っていいものでした。

そこで描かれていたのは、ゲームを本気で作ることへの情熱や尊さ、それがいかに誰かの人生を変えるものなのか(それこそ歴史や世界も変わってしまうんです!)という世界観。AIによるモノ作りの問題点。それこそ誰も描いたことがないものを作ろうとしたすごい作品だ、という評論家の方の言及もあったので、今後、時が経つにつれて評価が高まっていきそうな作品だと思いました。

草創期の美少女ゲームだけじゃなくて、PC-9800シリーズ、秋葉原の街の変遷に対する愛も貫かれていて、そういう「あの頃」にかれたのですが、それは人の手によるアナログ味を強く感じたからかもしれません。

「65535」の歌詞の中に「終わってないぞ、そのコンテンツ」というワードがありますが、それってこの世にあるあらゆるコンテンツに言える気がするんですよね。「昔流行って、今じゃオワコンだよ」みたいに言う人こそ終わってるなと思うし、その時代に輝いてくれたことに感謝したいし、リスペクトしたいし、軽々しく扱うことは絶対にしたくないなと改めて思いました。この作品と「65535」に出会えて、本当によかったなと思っています。

「65535」は、シンプルでピコピコしていて、不思議で、歌うのが難しい曲なんですけど、アニメを最後まで見たことで、もっとエモ味も感じるようになりました。アニメを見ていて「確かにそうだよな」と思うことが多々あったので、歌い重ねることで、もっと説得力を持たせて伝えられたらいいなと思っています。

例えば、私の「空色デイズ」は16年前の曲なのですが、今でも「『空色デイズ』こそ私の青春でした」とか「『空色デイズ』と『グレンラガン』のおかげでアニメが好きになりました」という言葉をもらうことが多くて、みなさんの人生の一部に組み込まれている、そこで輝いていてくることが、ものすごくうれしい。それこそ「終わってないぞ、そのコンテンツ」ですよね。

「アニアカ」も続けていることが大事なので、これからもみなさんに応援していただきながら、さらに存在感を高めていければと思っています。

「空色デイズ」:2007年に発表された中川翔子3枚目のシングル。同年放送のアニメ「天元突破グレンラガン」のオープニングテーマソングで、「アニソン・アカデミー」のオープニングテーマでもある。

5月5日生まれ、東京出身。2004年に開設した公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」が大評判となり、アニメ・漫画・特撮・カンフーなどの豊富な知識で大きな話題を集める。2006年に歌手デビューして、翌年「空色デイズ」で「第58回NHK紅白歌合戦」に出場。俳優としてのNHKドラマ出演は、連続テレビ小説「まれ」、ドラマ10「デイジー・ラック」ほか。2011年公開のディズニー映画「塔の上のラプンツェル」(日本語吹替版)では、主人公・ラプンツェルの声を担当。4月には中国・上海での音楽ライブ出演、5月には毎年恒例のバースデーライブ開催も決定している。

☆「NHKラジオ らじる★らじる」の聴き逃しサービスでも、放送翌週の月曜正午から1週間配信しています。
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