日本酒やみそなどの発酵食品を生み出すもとになる「米こうじ」。今、これを使って家庭で“新しい発酵食品”を作るレシピが流行中。おすすめの作り方とおいしさの理由、そして健康効果を紹介します!

●米こうじ×○○”に注目!
 手軽に作れる発酵食品がブーム!

米こうじには上の2種類があるが、手に入りやすいのは日持ちするように乾燥させた「乾燥こうじ」。漬物・豆腐売り場に置いてあることが多い。

「米こうじ」とは、蒸した米にこうじ菌というカビを繁殖させたもの。万能調味料として知られる「塩こうじ」や「甘酒」ブームの際に耳にしたことがある人も多いのでは?
しかし、今、注目されているのは、それらの加工品ではなく、米こうじそのもの。そして、米こうじと“何か”を混ぜ合わせることで、さまざまなものを発酵させるレシピが人気なのだとか。そこで、簡単にできておいしいおすすめ発酵レシピを、料理家で発酵マイスターの榎本美沙さんに教わりました!


●ひと晩発酵みそ

材料(作りやすい分量/スープジャー1個分)
米こうじ(乾燥)*・・・130グラム
塩・・・・・・・・・・・13グラム
おから(生)・・・・・・75グラム
水・・・・・・・・180ミリリットル
*常温に戻しておく。
作り方
①米こうじをフードプロセッサーに入れ、20秒ほど回して砕く(米粒が半分〜3分の1の大きさになる程度)。
②①に塩を入れ、混ぜ合わせる。
③小鍋におからと水を入れ、弱めの中火で焦げないようにかき混ぜながら3分ほど温める。表面がふつふつしてきたら火を止める。
④③をスープジャーに入れて、65度になるまで冷ましたら、②を入れて手早くかき混ぜる(温度が下がり過ぎないように注意!)。
⑤しっかりふたを閉めて、ひと晩(8時間程度)置いておく。
⑥8時間たったら完成。保存容器などに移し、冷蔵庫で保管(2週間保存可能 )。
※腐敗を防ぐため、保温時間は10時間以内、そのあとは必ず冷蔵庫で保管すること。

スープジャーに、温めたおから、米こうじ、塩を入れて、8時間置くだけ♪

塩分控えめなので、みそ汁などを作るときには、普通のみそより多めに使うのがおすすめ。
※スープジャーは、400ミリリットルのものを使用。また、必ず熱湯やアルコールで消毒した清潔なものを使ってください。


●専門家もびっくり!米こうじの“酵素”の力

普通は半年かかるみそ作りが、たったひと晩でできるなら、ぜひ試してみたいですよね。でも、味はどうなの……? そこで、右の方法で作った「ひと晩発酵みそ」について、発酵前と発酵後の成分を専門家にチェックしてもらいました!

結果、驚きの変化が起きていることがわかりました。うまみ成分であるグルタミン酸の量は、発酵前は100グラム中4ミリグラムだったのに対し、発酵後は95ミリグラムに増量。甘みも約10倍に変化していたのです。つまり、「ひと晩発酵みそ」のおいしさは折り紙つきということです! ちなみに、これらはすべて、米こうじに含まれる酵素の働きによるものだそう。食品の成分を分解する酵素は、ちょうど50〜60度で最もよく働くことがわかっているそうです。


●発酵ケチャップ

材料(作りやすい分量/スープジャー1個分)
米こうじ(乾燥)*・・・・・・・・・・・・・・70グラム
塩・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4グラム
トマトの水煮缶(カットトマト)・・・1/2缶(200グラム)
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・60ミリリットル
*常温に戻しておく
作り方
①・②は、右ページ「ひと晩発酵みそ」と同手順。
③小鍋にトマトの水煮と水を入れ、弱めの中火で焦げないようにかき混ぜながら3分ほど温める。表面がふつふつしてきたら火を止める。
④③をスープジャーに入れて、65度になるまで冷ましたら、②を入れて手早くかき混ぜる(温度が下がり過ぎないように注意!)。
⑤しっかりふたを閉めて、ひと晩(8時間程度)置いておく。
⑥8時間たったら取り出し、フードプロセッサーにかけてなめらかにして完成。保存容器などに移し、冷蔵庫または冷凍庫で保管する(冷蔵庫で1週間、冷凍庫で1か月保存可能)。

スープジャーに、温めたトマトの水煮、米こうじ、塩を入れて8時間。さらにフードプロセッサーでなめらかに♪

材料はシンプルなのに、米こうじに含まれる酵素の働きでタンパク質などが分解され、複雑な味わいに仕上がる。

●米こうじたっぷりの朝食メニュー!

●発酵あんこ

作り方は、「ひと晩発酵みそ」「発酵ケチャップ」とほとんど同じ。ゆでた小豆(乾燥小豆80グラムを水で戻して、ほどよいかたさにゆでたもの)とゆで汁70ミリリットル、砕いた米こうじ80グラムと塩ひとつまみをスープジャーに入れ、温度を保って8時間置けばOK(冷蔵庫で約3日、冷凍庫で1か月保存可能)。


●米こうじの健康効果最新研究で次々と明らかに……‼︎

米こうじには、体にいい効果がたくさんあります。現在わかっているだけでも、中性脂肪低下、関節痛緩和、高血圧予防、便通改善、美肌効果、疲労軽減など。さらなる健康効果についても、研究が進んでいるのだとか……。これは、取り入れない手はありませんね!

前橋健二教授 コメント
「米こうじは体にいい」ということは、経験的に知られていましたが、ここ10年ほどで急速に研究が進み、その健康効果についての科学的根拠が、次々と明らかになってきています。これからも、米こうじの健康効果が続々と発見されることが期待されています!

(NHKウイークリーステラ 2022年3月18日号より)