8月の「深夜便ビギナーズ」のテーマ は「夏のイベントといえば」。コロナ禍の長い行動制限に区切りがつき、4年ぶりに故郷への帰省、夏祭り、旅行などを実現できたというメッセージを数多くいただきました。みなさんはどんな夏を過ごされましたか。

私も、4年ぶりに大好きなイタリア旅行をと、5月から張り切ってリサーチを始めたのですが、あまりに高い航空運賃に、もう1年待とうと諦めました。

その代わり、というわけでもないのですが、6月、イタリア、シチリア島最大の都市パレルモにあるオペラ劇場、マッシモ劇場の来日公演に行ってきました。2019年に現地でたのが私のコロナ前の最後のオペラ。チケットは決して安くはありませんでしたが、イタリア旅行でかかる10分の1以下だからと、思い切って2公演観ることにしました。

生で聞く歌手の声ってなんて素敵なんだろう! というのが、2日間の一番の感想です。会場は2日ともほぼ満席。2日目に聞いたプッチーニの『ラ・ボエーム』のヒロイン、ミミを演じたのはアンジェラ・ゲオルギュー。1990年代初めに国際的な舞台でデビュー。その後、当時の夫・テノール歌手ロベルト・アラーニャとともに脚光を浴びスター歌手の仲間入りをしました。日本でも往年のファンが少なくないようです。第一幕で、ゲオルギューが『私の名はミミ』を歌い始めると、2つ隣の席の男性が、ハンカチを目に当てて聞き入っていました。会場いっぱいに響き渡る美しい声にグッときたのでしょう。

そんなすばらしいオペラでしたが、少し残念なことも。会場は歴史ある古い建物ということもあり、最近のホールに比べると座席が狭いのです。私の両サイドは年配の男性。お二人ともが、ひじ掛けにしっかり腕を置き深く座っているので、左右からひじが張り出し、私は上演時間の間ずっと、肩をすぼめて不自然な姿勢で見なければなりませんでした。

音楽ファン同士。みんなが楽しめるような気配りも大事ですよね。

(もりた・みゆき 第2土曜担当)

この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年10月号に掲載されたものです。
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