表題の曲は、サザンオールスターズが1982年に発表した14枚目のシングルです。チャコは女性の名前のように聞こえますが、実はチャコの愛称で知られる飯田久彦さんのことだそう。『ルイジアナ・ママ 』のヒットで知られる歌手ですが、当時はサザンが所属しているレコード会社のディレクターでした。ちなみにチャコが出てくるのは一番の歌詞だけで、2番では「ミーコ」こと弘田三枝子さん、3番では双子のデュオ、ザ・ピーナッツに変わります。桑田佳祐さんならではのシャレが詰まったラブソングです。
サザンと言えば夏の海をイメージする方も多いでしょう。この曲がヒットしたとき、私は大学生。海辺のドライブに自分で編集したサザンのカセットテープは欠かせませんでした。当時、多くの若者たちにとって、海やプールに繰り出すことは、〝夏の必須行事〞 だったような気がします。ファッションビルには水着の特設コーナーが設けられ、テレビでは流行の水着特集。男性たちも負けずに、ショートパンツやビーチサンダルなどを買い求めていました。ファッションだけ真似た「陸サーファー」が登場したのもこのころで、サーフボードを載せた車が、都内を行ったり来たりしていました。
とはいえ、すべての若者が裕福だったわけではありません。コツコツとアルバイト代を貯め生活を切り詰めて、やって来る夏に備えていました。なぜそうまでして若者たちは海に向かおうとしていたのか? それは、自分にも訪れると信じて疑わなかったラブアフェアへの憧憬と妄想が、巨大なエネルギーとなって私たちを突き動かしていたからにほかなりません(あくまで個人の感想です)。
思い返してみると、もう何年も海水浴に出かけていません。子どもが小さかったころに行ったきりですから、ずいぶんと前のことになります。ですから、今持っている海水パンツは、残念ながら夏の海ではいたことがありません。腰痛のリハビリで近所のプールに通うために購入したものです。
(よしの・きよし第1・3水曜担当)
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年9月号に掲載されたものです。
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