7月9日「ラジオ深夜便のつどい」で福井県若狭町を訪ねました。徳田章アンカーの体調不良により、急きょ高橋淳之アンカーとステージに立つことに。この3人は同期で、いずれも北陸での勤務経験があるので話題に困ることはありません。新人研修の思い出を語りながら、よくこの歳までアナウンサーが続けられたとしみじみ思います。本当にひどい新人でしたから。
日本遺産に認定されている「海と都をつなぐ若狭の往来文化遺産群〜御食国若狭と鯖街道」 。御食とは、神へのお供え物や天皇の お食事の料のこと。若狭は、古代から塩、海産物などの豊富な食材を都に運び、都の食文化を支えてきた地です。タイ、イガイ、イワシ、ホヤ、ウニ、アワビ、カマスなどのなれずしや干物などが運ばれたようです。
鯖街道は、鯖が京の祭礼には欠かせない食材だったので、若狭湾で取れた鯖を徒歩で京まで運んだことから、若狭と京をつなぐ道が広く「鯖街道」と呼ばれています。最も物流量が多かったのが若狭町熊川宿を通る若狭街道です。宿場町の面影を残す町並み。この道を多くの人や物、そして文化が行き交ったと想像すると、当時の人々のさまざまな話し声が聞こえてくるような気持ちになります。
熊川宿の一角にある「村田館」は、私が〈きょうの料理〉でお世話になっている京都の老舗料亭「菊乃井」3代目主人・村田吉弘さんゆかりの建物でした。初代主人の村田寅吉さんの生家を食文化展示施設として公開しています。2013年ユネスコの無形文化遺産に「和食」の食文化が登録されましたが、村田吉弘さんは、その立役者と言われています。御食国の食の歴史がさまざまな形で現代につながっているように感じます。
ところで若狭町の前日は別の仕事で、奈良県明日香村に行っていました。共通点は、いにしえの面影。そして食。明日香村の棚田は生産者の皆さんの愛がおいしい米を作っています。歴史が育んだ土がみずみずしい野菜を生み出しています。FOODは風土だ!
(ごとう・しげよし 第1・3・5土曜担当)
この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年9月号に掲載されたものです。
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