栗山英樹さん(62歳)は、大学卒業後にドラフト外でヤクルトスワローズに入団。現役引退後は北海道日本ハムファイターズの監督などを経て、野球日本代表・侍ジャパントップチームの監督に就任。今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)で日本代表を三大会ぶりの優勝に導きました。栗山さんが、これまでの野球人生とこれからの夢を語ります。
聞き手/工藤三郎
――夢だったプロ野球選手としての生活に見切りをつけて、スポーツキャスターや解説者に転身。メディアの世界に進もうと思われたのはなぜでしょう。
栗山 「とにかくたくさんの人に会いたい、たくさんのことを見たい」と思っていました。当時は選手として中途半端に終わった負い目みたいなものがあって、「今度こそ一人前になりたい」と考えていたんです。
引退したときに、西武ライオンズの元監督の根本陸夫さんに呼ばれて、「メディアの仕事をするなら、メディアの皆さんの話を聞いて勉強させてもらいなさい。そして、野球界に恩返ししなさい」とアドバイスをいただきました。根本さんをはじめ、僕のプロ野球の先輩方は、先人が作ってきたものを次世代に伝えてさらに広げたい、という思いを強く持っている方が多かったですね。
――後進を育てると言うと少し違うかもしれませんが、栗山さんは監督時代、北海道日本ハムファイターズから大谷翔平選手を見事に世界に送り出しましたね。
栗山 彼が在籍した5年間は毎日本当に怖かったですね。翔平がもし野球ができなくなるようなけがをしたら、監督の僕が辞めて済むような選手ではありません。メジャーリーグに行ったときには、二度と翔平と野球をやるまい、と思ったぐらい。宝物を預かった、そんな時間でした。
――監督生活では、選手に夢を託すという喜びもあったんでしょうか?
栗山 実はWBCの前、福岡ソフトバンクホークスの王貞治球団会長に「選手と監督、もう一回やれるとすればどっちをやりたいですか?」と、無謀にも聞いてみたんです。「世界の王」だから当然バッターだろうと思ったんですが、王会長は「ホームランを打つのもいいけどね、監督は多くの選手のためになれるからね」と。
僕はその選択を「人の成長に関われることほどよいものはない」という意味に捉えました。僕も、翔平を含め、人の成長を手伝える仕事がいかにすばらしいことなのかということを、すごく実感してます。
――栗山さんの「夢の続き」も気になります。他のチームも見てみたいと思われますか。
栗山 ぜひ見たいですね。親会社があるからこそ野球ができるということは絶対忘れちゃいけないし、感謝しています。ただ、他チームの組織体系やお金の流れなどは中に入らないと分かりませんので。
――選手やファンのための野球をするには、経営に関わることも知る必要がある、ということでしょうか。
栗山 そうですね、それが分かれば、もっとファンの人たちが喜ぶ野球やチーム作りができると思います。お金のために野球をするわけではないけれど、それが必要なこともある。現場がただ言いたいことを言うだけではあまり成果は得られません。もう少し僕らも学んでいかなければいけないと思います。
※この記事は 2023年6月21日放送「夢の続きを語ろう」を再構成したものです。
栗山さんはWBC次期監督やメジャーへの考えについても語っています。この続きは月刊誌『ラジオ深夜便』10月号をご覧ください。
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