NHK-FMの人気番組「アニソン・アカデミー」で生徒会長(番組MC)を務めている“しょこたん”こと中川翔子さんの連載コラム。今回は、この夏、全力投球で挑んだ舞台『SHOW BOY』などについて語ります。
♪トゥットゥル~、中川翔子です。
前回、アニメ「【推しの子】」に関連して、私の父・中川勝彦のことに触れましたが、その話題をもう少しだけ。父は芸能界で活動していたのですが、母とは入籍していたし、「子どもを作ろう」という話をして私が生まれたと聞いています。今の時代はSNSもあるからそんなことは出来ないだろうけど、昭和の芸能界だったから、世間には内緒だったんですよね。父のお葬式のときも「親戚の子」みたいな感じで言われていて。だけど、家では父親としての顔があったし、私もそんな状況を嫌だと思ったことはありませんでした。
そういったこともあって、星野アイの子どもがアクアとルビーという設定で描かれている「【推しの子】」に、より共感しているのだと思います。ただ、アイは母親として頑張っている姿を子どもたちに見せていたのですが、私は父の芸能活動については断片的にしか記憶に残っていなくて、それが残念だな、という思いもあります。
当時の父を応援していたファンの人たちの中には、私がデビューしたときにすごくショックを受けた方もいらしたそうですが、「今では、しょこたんのことも応援しています」と言ってくださったり、私が見たこともなかった当時の記事や写真をSNSにアップしてくださったり、父娘として応援していただいている感じがして、とても感謝しています。
父は、アニメ「超力ロボ ガラット*」で声優もしていたのですが、最近サンライズの YouTubeチャンネルで「ガラット」がアップされていて、当時を知らなかった若い世代の方たちが、「マイケルの声って、しょこたんのお父さんだったのか!」と話題にしてくださって。そういう生きた証しの繋がり方があったのも、すごいことだなと思っています。
*「超力ロボット ガラット」…1984年10月から翌年4月まで、テレビ朝日系で放送されたロボットアニメ。中川勝彦が主人公・マイケルの声を担当した。アニメーション制作は、日本サンライズ(現・サンライズ)。
さて、私はこの夏、ミュージカル『SHOW BOY』に全力集中していました。やっぱり、舞台って勇気と覚悟がいるんだな、と思いましたね。公演自体は再演なのですが、細部までアップデートされていて、私が演じたキャバレーの支配人は、前回よりも登場場面が増えたうえに、舞台上に設置された階段を何度も駆け上がって、ずっと走っている、みたいな。一つの公演の中に踊りと階段ダッシュが何十回もあって、2年前の公演のときは何とかなっていたものが、体力が続かず……。自らジムに通って、筋トレをして、公演に臨みました。
今回の支配人は、運動が苦手なリアルな私に近くて、不器用でどんくさいというコンプレックスを抱えている設定が追加されていました。階段の昇り降りも苦手だけれど、一生懸命やるしかない、みたいな。でも、欠点があっても、それを乗り越えるから楽しい、ということに救われたというか、私自身もそう感じながら演じていました。
公演が始まってから、最初は動きが一歩でも遅れたら終わりとか、どこに走って、どのタイミングで、どの角度でとか、いっぱいいっぱいだったのですが、途中からは時間が過ぎるのが早くて。ふぉ~ゆ~さんとは仲良しなので、舞台裏で一緒に歌ったりとか、毎回アドリブで繋ぐ場面は、辰巳雄大さん、松崎祐介さんと3人で話し合って内容を考えて、それこそ「アイドル」(「【推しの子】」のオープニング主題歌)を歌って松崎さんに踊ってもらったりとか。もう毎回違うお芝居になって、これがいちばん大変だったのですが、でも、とてもやりがいがありました。コロナ禍での2年前の公演では味わえなかったのですが、お客さんがとても、特に地方公演では大きな声で笑ってくださったので、それが私にとって大きなご褒美でしたね。
この舞台に取り組んで思ったのは、私は本当に歌うことが大好きなんだな、ということ。その歌があったからこそ、ここまで生きてこられたなぁ、と思うんですよね。ことしは音楽に縁がある一年だなと感じていて、秋にはライブツアーも行うので、歌うことが何より好きなんだという思いを噛みしめながら挑みたいと思っています。
「アニソン・アカデミー」
NHK-FM 毎週土曜 午後2:00~4:00
【番組ホームページ】
https://nhk.jp/anison-ac
☆「NHKラジオ らじる★らじる」の聴き逃しサービスでも、放送翌週の月曜正午から1週間配信しています。
https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/
5月5日生まれ、東京出身。2004年に開設した公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」が大評判となり、アニメ・漫画・特撮・カンフーなどの豊富な知識で大きな話題を集める。2006年に歌手デビューして、翌年「空色デイズ」で「第58回NHK紅白歌合戦」に出場。俳優としてのNHKドラマ出演は、連続テレビ小説「まれ」、ドラマ10「デイジー・ラック」ほか。2011年公開のディズニー映画「塔の上のラプンツェル」(日本語吹替版)では、主人公・ラプンツェルの声を担当。4月には中国・上海での音楽ライブ出演、5月には毎年恒例のバースデーライブ開催も決定している。