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7月3日は、私の72歳の誕生日です。「深夜便」でゲストから「お誕生日おめでとう」と言われると、うれしいけれどちょっと微妙な気分になります。「 齢を重ねる」とは、歳を増すごとに己の人生に一つ一つ責任を重ねていく生き方だという。私が自ら言うなら「いたずらに馬齢を重ねてきただけです」となるでしょう。
誕生日を微妙な気分で迎えるようになったのは65歳、前期高齢者のころからでしょうか。鶴は千年亀は万年といえばめでたいのですが、翁の面をつけた自分の姿が思い浮かび「なんだかなぁ」という気分でした。
ある高齢者医療の専門家は、栄養事情が厳しかった時代に育ったかつての70代と、栄養が考慮されて育ってきた現在の70代とは、活動面などで若さ、元気さが違うと言います。翁の面をつけなくてよい時代になったようです。それは一般論としても、確かに徹夜の「深夜便」で私は6時間の生放送もウキウキ楽しく担当しています。
なのですが、去年私の兄が2人亡くなったことで今年の誕生日はまた微妙な気分になっています。一人は83歳、もう一人は91歳でこの世に別れを告げました。年齢からすれば決して早すぎないとは思いますが。9人兄弟の末っ子である私は、これで4人の兄を失ったことになります。
その寂しさと同時に自分の死への足音が聞こえてきたように感じたのです。亡くなった両親と兄たちの死亡年齢で平均を出すと78.5歳。今年72歳の私には、計算なんかしなきゃよかったという微妙な数字……。嫌だ嫌だ。後藤家平均でいけば、あと6年でお迎えか。やめてよ。日本人の平均寿命は男性81.49歳(厚生労働省「令和二年都道府県別生命表の概況」) 。それよりも早いのか。
番組ではこれまで年齢にかけた誕生日スローガンを発表してきました。69歳「ロックで行こうぜ」、70歳「セブンティーンの気持ちでセブンティー」、71歳「長生きで行こう」。さて、72歳のスローガンはどうしよう……。
(ごとう・しげよし 第1・3・5土曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年7月号に掲載されたものです。
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