「ラジオ深夜便」アンカーのエッセーをステラnetでも。今回は徳田章アンカー。最新のエッセーは月刊誌『ラジオ深夜便』9月号で。

古い話で恐縮ですが、初めて東京アナウンス室に異動した昭和の終わり、毎日の宿泊勤務はテレビ、ラジオ、国際放送担当の4人。当時は午前0時に放送が終わると一段落。先輩を囲んでしばし話が弾みます。報道やスポーツの裏話やこぼれ話、時には芸能、文化、教養と専門分野の仕事のけつや取り組み方など貴重な話も多く、東京に来たばかりの私にとって内容の濃い時間でした。

しかし時代が平成に変わるころには放送も終夜になり「深夜便」も始まって〝皆で一息〞の時間はなくなりました。先輩後輩が居酒屋で意見を交わすこともめっきり少なくなった昨今、先輩の培った財産をきちんと後輩に伝えたいと思っていました。

そんなとき始まったのが「アナウンサー百年百話」。この番組はNHKアナウンス室が制作。再来年(2025年)、ラジオ放送が百年を迎えるのを機に最前線のアナウンサーの「ことば」をもとに放送の百年を振り返るというもの。
…ラジオ第2 毎週水曜 後10:00 再放送土曜 後 3:45/翌週水曜 前10:30
「ラジオ深夜便」でも毎月1回木曜 前1時台に放送。

放送れいめい期からスポーツ、戦争、エンターテインメント、事件・事故などさまざまな場面で情報を伝えてきたアナウンサーがその時々でどう向き合ってきたのか、当時の録音も聞きものです。

私は4月の「のど自慢」の回に出演。宮田てる、金子辰雄先輩の番組を聞きながら司会について、短時間で出場者との距離をどう縮め、いかに思いを語ってもらうかなど、小田切せんアナウンサーと共に語り合いました。

最近ではやなせたかしさんへのインタビューにあたり、聞き手の石澤典夫アンカーが本音を引き出す心構えについて、「深夜便」の先輩・さちさんや山根もとさんは女性アナウンサーが開いた新しい時代について語るなど、後輩たちの仕事につながっていく貴重な話ばかり。近頃はAIアナウンサーも登場、私たちの仕事も変わっていくのかもしれません。若い後輩諸君には是非聞いてほしいし、「深夜便」リスナーの皆さんにはアナウンサーの「ことば」をもとに放送の百年を振り返っていただければと思います。

(とくだ・あきら 第1・3・5日曜担当)

※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年7月号に掲載されたものです。

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