「青のオーケストラ」
毎週日曜 Eテレ 午後5:00~5:25
再放送 毎週木曜 Eテレ 午後7:20~7:45
※放送予定は変更になる場合があります。
【番組HP】https://www.nhk.jp/p/ts/3LMR2P87LQ/
青野くんが海幕高校オーケストラ部に入部して出会った先輩たちには、むちゃくちゃ魅力的な人物が多いのだけれども。
町井美月先輩、今回ついに登場!
いやもう、第3話「海幕高校オーケストラ部」から姿を見せてはいたのだけれど、ようやく声が聞けたー!!! なんというか、頼れる大人、みたいな? 極私的な見解として言わせていただくと、オーケストラ部のトップサイド(次席奏者)として存在感はコンサートマスターの原田先輩に匹敵するほどのもので、青野くんにも極めて示唆に富む言葉を投げかけてくれます。
阿久井真先生の原作でも、登場シーンが極端に多いわけではないけれど、町井先輩の涼しげな眼差しと言動が、どれほど「青のオーケストラ」という物語に潤いを与えているか……。
まずは、第14話「歩み寄る」の物語をおさらいしてみましょう。
夏休みに入り、定期演奏会のための本格的な合奏練習が始まった。だが、1人ずつの音程やリズムは正しいのに、合奏になると音がまとまらず、青野(声:千葉翔也)は大勢で音を合わせることの難しさを痛感する。そのとき、コンサートマスターの原田(声:榎木淳弥)が、ヴァイオリンの弓や身体の動きを使ってオーケストラ全体に合図を送り、演奏がひとつになり始めた。青野はその手腕に感銘を受け、昼の休憩時、原田にアドバイスを求めようとする。
だが、原田が多くの部員たちに囲まれていたために話しかけられず、トップサイドを務めている町井美月(声:安済知佳)に相談。町井は青野を木陰でのランチに誘い、どうやって周囲の音に合わせればいいのかを問いかける青野に、自分の経験談を語った。「ヴァイオリンだけでなく、ほかの楽器のことも意識してみたら?」という町井のアドバイスを受けた青野は、その夜、チェロの山田(声:古川慎)に連絡。翌日の早朝、2人で合奏練習をすることになる。練習に付き合ってくれたことに感謝する青野に、山田は「ずっと佐伯(声:土屋神葉)のライバルでいてやってよ」と語りかけて……。
町井先輩のことをもう少し書いておきますと。
○意を決して話しかけた青野くんに「まずは腹を満たそうじゃないか!」と語る、独特の口調。
○1人でいるのが好きなタイプで、青野くんを「私と同じ気がする」と分析。
○読書好きで、今読んでいるのは森鷗外の『舞姫』。
○コンサートマスターの原田蒼に対する信頼が厚い。
○元々はヴァイオリン奏者だったが、中学時代は市民オーケストラでヴィオラを弾いていた。
……という感じなんだけれど、ここで重要なのが、元ヴィオラ奏者ということですね。
ヴァイオリンやピアノのような華々しさがないと言われることも多くて、その音を自己主張する機会があまりない(ヴィオラ協奏曲だって、めっちゃ少なくない?)けれど、ほかの楽器の活躍を支える縁の下の力持ちというか、弦楽アンサンブルやオーケストラになくてはならない存在なんですよね、ヴィオラは。そんなヴィオラ経験者だからこそ語れる、町井先輩の言葉の数々。
これがねぇ、たまらんのですよ!
特に、オーケストラを構成する人と楽器、それぞれの性格や音が違っていることを青野くんに語ってくれた後に、原作には「そのバラバラが一つになる瞬間が...、たまらなく気持ちいいんだけどね」というセリフもあって。その見守っている感じが、すっごいヴィオリストっぽいなと感じました。さらに、その見守っている感は、青野くんに対して「だけ」じゃなくてだな......(というところは、おそらく定期演奏会あたりで描かれるはず)。
というわけで私は、とてもすてきな町井先輩推しです(笑)。
ところで、配信公開されている【青のオーケストラ 聴きドコロ♪】では、コンマス・原田先輩のテクニックによって、オーケストラの音が途中から変わっていく演奏を紹介しています。
♪ドヴォルザーク「交響曲第9番『新世界より』第 1 楽章
指揮:吉田行地
演奏:洗足学園フィルハーモニー管弦楽団
ね、変化がはっきりとわかるでしょ?
アニメに先だって放送されている「青のオーケストラ 5分で楽しいクラシック」も、今回の物語をより深く理解するのに役立つ、コンサートマスターの役割を解説する内容でした。こちらも公式サイトの「動画」ページでいつでも視聴できるので、#12「コンサートマスターとは?」をご覧いただきたく。なお、このページでは、過去の放送分をすべて見られるので、確認しておいてくださいませ。
さて物語の後半では、チェロの山田くんがクローズアップされていて。青野くんと山田くんのデュオ練習も初めてじゃない? それぞれの演奏を担当する東亮汰さんと佐藤晴真さんのデュオも貴重な機会で、キターーーーーー!と思ったら、演奏時間が短かった......(涙)。
ただ、もっと長く聴かせてほしかったな、という思いはあるのだけれど、今回の物語では語るべきエピソードが多すぎて仕方ないことかな、とも思います。原作2話分のアニメ化だけれど、この2話は両方とも青野くんに与える影響という意味では欠かせない要素が盛りだくさんで、どこを削ればいいのか、制作側は苦渋の選択だったでしょうね。そう考えると1話25分って、短いな。40分くらいあればいいのに!(←むちゃ言ってます)
その山田くんが語った、中学時代の佐伯直との関係。佐伯のことを思い遣る山田くんの優しさがあふれていますね。第11話「決戦前夜」で、佐伯がドイツから帰国した中学時代を思い出して「まだ日本語を上手に話せなかったとき、楽器やってて救われたことも多いんだ」と語っていたことも、ここにつながってくるわけだ。そのときに、いい関係性を築いたんだろうなぁ。
さて次回、7月16日に放送される第15話「本音」では、町井先輩と同様に個性的な3年生たちが勢ぞろいします。海幕高校の弦楽パートのいちばんの実力者たちが参加した練習で奏でられる、弦楽器の五重奏による「新世界より」第2楽章。これもまた聴き逃せないぞ。
将来のコンサートマスター候補として期待されている青野と佐伯は、弦楽器各パートのトップ奏者たちによる練習を見学することになった。コンサートマスターの原田を中心に、曲のイメージを共有して、弦楽パートの表現を具体的に決めていく場だ。参加したのは、2nd ヴァイオリンの米沢千佳(声:前田佳織里)、ヴィオラの木村隆美(声:金元寿子)、チェロの髙橋翼(声:青木瑠璃子)、コントラバスの柴田修(声:福島潤)。彼らの間には一切の遠慮がなく、激しい意見のぶつかり合いに青野と佐伯は圧倒された。しかし、その後の合奏が始まると、おだやかでやさしい時間が流れ始める。青野は、先輩たちが楽器を通して「本音」の会話をしていると感じた。
そして予告編では、青野くんのちょっと胸に迫るセリフがありました。ネタバレになるのであえて記述はしませんが、第14話をしっかり見返すと、その兆しは見えていますね。その触媒になるであろうものが何なのかも既に提示されているから、これからの1週間、またザワザワしながら待つことになるのか……。
いろんなことが絡み合いながら物語が進んでいきます。何度も言うようだけれど、ぜひ集中して見ていてくださいね!
第14話「歩み寄る」の再放送は、Eテレ 7/13(木曜)午後7:20~7:45。
見逃し配信は、NHKプラスで7/16(日曜)午後5:25 まで。
https://plus.nhk.jp/watch/st/e1_2023070919561?cid=jp-3LMR2P87LQ
追記
ちなみに、町井先輩はコンサートマスターである原田先輩の隣の席に座っていて、そこには「あうん」の呼吸があって。その町井先輩の声を担当している安済知佳さんが、原田役の榎木淳弥さんとリアル従兄妹同士というのも、アニメファン的にはうれしいポイントでした。ほかの作品でも共演経験があるけれど、コンマスとトップサイドという関係で楽しめるのが、特にね。
今回も告知
8月のアニメ「青のオーケストラ」と「5分で楽しいクラシック」は、以下の放送が休止になります。
◆アニメ「青のオーケストラ」
8月6日(日曜)/【再放送】8月 10 日(木曜)
8月13日(日曜)/【再放送】8月17日(木曜)
8月20日(日曜)/【再放送】8月24日(木曜)
☆放送再開は、8月 27 日(日曜)の予定です。
◆「青のオーケストラ 5分で楽しいクラシック」
8月6日(日曜)
8月13日(日曜)
8月20日(日曜)
8月27日(日曜)
☆放送再開は、9月3日(日曜)の予定です。
カツオ(一本釣り)漁師、長距離航路貨客船の料理人見習い、スキー・インストラクター、脚本家アシスタントとして働いた経験を持つ、元雑誌編集者。番組情報誌『NHKウイークリー ステラ』に長年かかわり、編集・インタビュー・撮影を担当した。趣味は、ライトノベルや漫画を読むこと、アニメ鑑賞。中学・高校時代は吹奏楽部のアルトサックス吹きで、スマホの中にはアニソンがいっぱい。
☆これまでの感想記事は、ここに(https://steranet.jp/list/category/stera_aniken )。