日の出が早くなったからか、年のせいか、早々目が覚めます。寝床の中で、起きてからの作業手順をイメージし、起床後、無駄なく行動できるようにしているのです。浴槽を洗う→洗顔後、ちょこっと化粧水を塗る→洗濯物を片づける→朝食→犬の散歩。決まった家事はせっせと済ませて、植物を植え替えたり、寄せ植えの草花を作品として眺めたり、と趣味にいそしむ時間を確保できるよう、頭の中の私は5時ごろから動き回っています。
これは計画性に富んだ生き方を自慢したいわけではなく、やたらとせっかちな性分を告白しているのです。朝食のパンを齧りながら、夕飯のメニューを考え、犬を散歩させながら、落ち葉の掃除もしなければと焦る。今やっていることに集中しないと危ないのに、先々の動線を考えては追いまくられています。
せっかちすぎて、種や球根から植物を育てる気長さがありません。一昨年、大豊作だったゆずの木は昨年、1つも実を結びませんでした。「桃栗3年柿8年 (中略) ゆずの大馬鹿18年」と言うそうです。幼苗から育てたら、結実するまでそんなにかかるんですね。移植してすぐ、たくさん実をつけてくれたのに、お礼肥も施さなかったので、木が弱ったのでしょう。手をかけ、待つ気長さも必要です。
年中、開花苗を買い込んでは飾って満足している私に、夫が提案してきました。「球根、植えよう!」。孫に手伝わせて、球根を埋め育て、開花を見せたいそうです。晩秋の或る日、チューリップや水仙の球根を買いました。それから待って待って待ちましたよ。
そして3月、暖かな光の朝、黄色い水仙がうぶで瑞々しい美を見せてくれました。待つことも悪くない、そう思えた春の日でした。
(わたなべ・あゆみ 第1・3木曜担当)
※この記事は、月刊誌『ラジオ深夜便』2023年5月号に掲載されたものです。
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