一面に広がるれんげ畑。花が終わると田に水が入り、田植えが始まる。

日本海から京都市へ至る街道沿いにたたずむ南丹市美山町。小さな山里には古いかやぶきの家が立ち並び、訪れる春を心待ちにしています。美山を愛する柳生リポーターが、春の山里を案内します。

*       *       *

その名のとおり美しい山に囲まれた美山町は、冬、一面の銀世界に閉ざされます。そして少しずつ寒さが緩むと、花が次々にほころぶのです。早春のふきのとうやつくしに始まり、梅に水仙、れんげ、そめよしに八重桜……。

木々が芽吹き、山も柔らかに笑います。雪に覆われていた山里が急にカラフルに、にぎやかになる様は、まるで"花リレー"を見ているようです。

人々もコートを脱ぎ捨て、田んぼのあぜや山の科面に、春を探しに出かけます。私の大好きな季節が訪れます。

暖かくなり、由良川(ゆらがわ)に川霧が立ち上ると、桜が咲き始める。
染井吉野からバトンを受けた八重桜が、鎌倉神社の参道を彩る。

“かやぶきの里”の大通り。主に江戸時代に建てられた古民家が人々の営みを見守る。

ムスカリ、水仙、チューリップ。庭が一気に花畑に。
雪の下、よもぎ、わらび、たらの芽。大切な春の味覚。
雪解けを待ちかねたように、ふきのとうが顔を出す。

写真提供/柳生みどり、勝山恵子


柳生みどり (やぎゅう・みどり)

関車から美山に移住して約40年。四季折々の美山の魅力を“外からの目線”で紹介。「日本列島くらしのたより」に出演中。

(月刊誌『ラジオ深夜便』2023年4月号より)

購入・定期購読はこちら
12月号のおすすめ記事👇
▼前しか向かない、だから元気! 池畑慎之介
▼闘う現代美術家 村上隆の世界
▼毎日が終活 菊田あや子
▼深い呼吸で心を穏やかに 本間生夫 ほか