☆1 子育てのイライラを回避する方法

  「初めての子育てはモヤモヤだらけで不安だし、仕事で落ち込むことはなかったのに、ママになるとどうしてこんなに落ち込んでしまうのでしょうか」というママからのお悩みが届きました。

木山 僕も25年間子育てをしてきて、1人目のときって、こうなりがちだと思うんです。親の思いどおりにいかないとイライラしちゃう。4人育ててわかったのは、子どもが思いどおりに動くことはほぼないということですね(笑)。そもそも目標の置き方が間違っていたんだなと。それは僕が36歳でがんになって痛感したんです。人生いつ何が起こるかわからないし、ましてや子どもを育てていると、毎日予定どおりに事は進まない。「子どもはかわいいから、それだけでいいや」くらいに気持ちをリセットしたほうが、素の自分で子育てできるなって思ったんですよね。

柴田 仕事では落ち込まなかったのに、子育てはこんなに落ち込んでしまうとおっしゃっていましたが、仕事には正解があるけど、子育てには正解がないんですよね。子どもが小さいときは、イヤイヤ期でみんな悩むじゃないですか。5歳、6歳になってくると少しずつ人間が形成されてきて、「うちの子だわね」と子育てに少し余裕が出てくる。やっぱり、小さいうちは「自分が責任を持って子育てを頑張らなくちゃ」と力が入ってしまい、なかなかかわいいと思えず、「寝顔だけがかわいい」とよく言いますよね。子どもは成長するにつれて、立派に子どもの文化を作っていくわけですから、親は楽な気持ちでいいと思うんですよ。

☆2 子育てを楽しむためには  

  子育てが楽しくなるけつは何でしょうか?

柴田 子育てが楽しいと思えない方は、自分の責任が勝っているからだと思います。子どもがみんなから歓迎されないような行動をしたら、「私のせい」と思うのではなく、「うちの子、こうなのよね」でいいんですよ。親だけが抱え込むのは間違い。子どもは親が育てるものではなく、子どもから育っていくものですから、あえて子どもから離れている時間を長くするのもいいと思いますよ。

木山 うちも4人の子のうち、最初の2人は目が行き届くから必死に子育てしていたんですけど、3人目になると目が行き届かなくなる。でも、そのころから「子育てって楽しい」と思えてきたというか。子どものことも客観的に見られるようになるし、自分自身もちょっと成長したのかなと思えたり。だから、先生がおっしゃったように、離れることも大事というのはすごくわかりますね。

柴田 もう一つはね、子どもがやっていることを自分もやってみるの。ハイハイしている子だったら、一緒にハイハイしてみるのよ。どろんこ遊びをしているときは、汚いと言わないで、一緒にやってみるの。そうすると、なんか自分の中に見えなくなっていた子ども心みたいなものが発掘されてくるのよ。私なんて、どろんこ遊びはまさにそうでしたけど。汚いと思ったときは、「なんとかやめさせよう」とか、「汚れないようにしよう」とか、いろいろ考えちゃうでしょ。もう諦めて、一緒にやり始めたら案外おもしろいなと共感できるはずですよ。

聞き手/村上里和
(NHKウイークリーステラ 2021年7月23日号より)