おもちゃに関する法案が成立

おもちゃ屋さんへ行くと、男の子向けのおもちゃと女の子向けのおもちゃを分けて陳列していることが多いと思います。アメリカ・カリフォルニア州では、そんなおもちゃ屋さんの様子に変化が起こりそうです。

2021年10月、カリフォルニア州のギャヴィン・ニューサム知事が、2024年より大型小売店に対して性別で区別しないおもちゃ売り場を設けることを義務付ける法案に、アメリカで初めて署名しました。

この法律の目的の1つは、女の子でもパトカーや消防車、恐竜などに興味を持っていたり、男の子でも人形やままごと遊びに興味を持っている子どもがいるので、そういう子たちが違和感なく自分が好きなおもちゃを見つけられるようにすることです。


子どもはおもちゃから学ぶ

カリフォルニア大学サンタクルーズ校で心理学を担当するキャンベル・リーパー教授によると、おもちゃを性別で分けるようになったのは1940年代から50年代にかけてだそうです。子どもたちは3歳くらいになると性別を意識するようになり、性別で分けられたおもちゃに敏感に反応することが分かっています。

そのころから男の子と女の子を区別することで、外見から判断される自分の性別に適合しなければいけないと感じさせてしまったり、自分で自覚している性別を模索している子どもたちに、劣等感を抱かせてしまう可能性が大きいと、リーパー教授は話しています。

子どもたちは、おもちゃを通して生活に役立つスキルを学びます。例えば、積み木やブロックなどのおもちゃは空間に関するスキルが学べますし、それが後に、学校で数学を学ぶ際にも役立ちます。また、ドールハウスや人形で遊ぶことで社会性や感情のスキルを学び、コミュニケーション能力や人間関係を形成する能力を向上させます。

おもちゃに対する性別の固定観念によって学びが偏ることが、将来男女間の格差につながる可能性があるとの研究もあります。自分の性別を認識している子どもの場合、興味があるおもちゃがあっても、それが性別と一致しないと言われたら、そのおもちゃで遊ぶことを避けてしまうこともあるそうです。


時代にふさわしい環境作りを

子どものころは、おもちゃで遊ぶ時間が非常に長いため、早い段階でいろいろなことに興味を持って学ばせることが大切です。もう、おもちゃ遊びを通して男女の役割を学ぶ時代ではなくなってきているのでしょう。

今は、仕事でも家庭でも、男であろうと女であろうと同じように活躍する時代です。そんな時代だからこそ、おもちゃ売り場でも、子どもたちが自分の興味のあるものを堂々と選べる環境を作ってあげることの方が、理にかなっているのではないでしょうか。

二見文子 (ふたみ・あやこ)

翻訳家。アメリカ・ロサンゼルス在住。日本映画の英語字幕制作、映画やCMの台本の翻訳などで活躍中。

※この記事は、2021年10月22日放送「ラジオ深夜便」の「ワールドネットワーク~アメリカ・ロサンゼルス」を再構成したものです。
(月刊誌『ラジオ深夜便』2022年2月号より)

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