人前で話すような場面で、緊張しすぎたり、言いたいことがきちんと伝えられなかったりした経験は、誰もがあるのではないでしょうか。そんなとき、話し方のポイントを知っておくことで、理想のコミュニケーションに近づけることができるようになります。

そこで、これまで「NHKニュース7」をはじめとする多くの報道番組を担当し、現在はバラエティー番組「チコちゃんに叱られる!」や「ラジオ深夜便」アンカーとしても活躍する森田美由紀アナウンサーに、人前で「わかりやすく話す」ポイントについて教えていただきました。


―― 近年、コロナ禍によりオンラインによるコミュニケーションが増えました。そんな中で、対面によるコミュニケーションの重要性が見直されつつあります。

オンラインでのコミュニケーションは、いわば2次元の世界。相手の全体状況がわからないまま、言葉のキャッチボールをしています。実際に会って話すときに比べ、少ない情報量しかないことで、話したいことが十分に伝わらないこともあります。

一方、対面によるコミュニケーションの場合は、互いに得られる情報量が増えます。表情や息づかい、声のトーン、ちょっとした仕草などを感じとることで、双方の理解が深まり、伝えたいことをわかりやすく深く相手に届けることができます。さまざまな情報を得たうえで、相手のことを考えて言葉のキャッチボールをすれば、意思の疎通がとてもスムーズで充実したものになります。

コロナ禍により家族や友人としばらく会えない期間が続いて、数か月ぶりに会ったとき、相手のことがよりリアル伝わってきて、うれしく感じたことはありませんか。情報量の多いコミュニケーションは、より深く相手を理解できたという実感につながります。

森田美由紀

―― 森田さんが、人前で話すときに事前に調べていることや、コミュニケーションをするうえで知っておきたい情報について教えてください

まず基本的なところでは、どういう方が何人くらい、どれくらいの広さの場所に集まるのか。そして、自分が話す時間はどれくらいあるのか。さらに、どういうことに関心があり、どんなことを知りたいのかも調べます。相手の情報を知っておくことで心にゆとりが生まれ、現場で安心して話すことができます。

話は相手に届いてこそ意味があるので、「この話を聞きたかった!」と思ってもらえるように心がけています。その結果、話す内容に関心をもっていいただけたり、相手の反応が伝わってきたりしたときは充実感がありますね。届けるために準備したものがちゃんと届いたという実感が、次回話す楽しみにつながります。


―― 人前で話すうえで、意識しておきたいポイントはなんでしょうか?

わかりやすく話すことに加え、視線をどこに置くかという意識も大切です。
視線の送り方に気を付けることで、聞く人に「自分に話かけてくれているんだな」と思っていただけます。例えば、広い会場では、視線を上下左右の客席に送り、会場全体に語りかけるようにします。そうすることで、会場に一体感が生まれます。

また、これから大事なことを話すのだとわかってもらいたいときや、逆に肩の力を抜いて聞いてほしいときには、あえて目線を動かして間合いをつくることもします。皆さんもオンライン会議などでカメラに向かって話すときには、自分がどのように映し出されているか、事前に確認しておくとよいでしょう。相手が受けとる印象を考え、信頼感や安心感が得られるように目線を意識することが大切です。

「わかりやすく話す」ポイントについては、以下の動画で、さらに詳しく紹介しています。ぜひ、参考にしてください。

▼Part2の動画はこちらから! 
https://steranet.jp/articles/-/1535


―― 「話す」ことに興味をもっている方、苦手だけど挑戦をしようと思っている方にエールお願いいたします

相手があってこその話す機会ですから、伝えたい相手のことをよく考えて話をすることです。シンプルなのですが、これがいちばん大切です。

そして、話す際に自分が緊張していると感じたら、大きく深呼吸して、明るく元気に第一声を出しましょう。そしてもう一度深呼吸したら、ゆっくりはっきり自分の名前を言いましょう。ここまで出来たら、会話の半分以上は成功したようなものです。あとは、自分が準備してきたことを、何かひとつでも話すことができたら、それで成功です。きっと、その場所にいる人に「私は皆さんと話したいんです」という気持ちが届いているはずですから。

まずは「元気に挨拶」、次に「名を名乗る」、そして「いちばん伝えたいことを話す」。ここからスタートしてみてください。

森田美由紀

森田美由紀(もりた・みゆき)
87年NHK札幌放送局でアナウンサーとして入局。東京アナウンス室への異動後は「NHKニュース21」「NHKニュース7」「NHKニュース10」など、報道番組を中心に担当。「第44回NHK紅白歌合戦」では総合司会、「ETV特集」「芸術劇場 劇場への招待」などのキャスターも務めた。現在は、バラエティー番組「チコちゃんに叱られる!」や「ラジオ深夜便」アンカーとしても活躍中。
現在、NHK放送研修センターに在籍:https://www.nhk-cti.jp/