立冬を迎えると暦の上ではもう冬。漢方の考え方では、冬になると体の中では腎臓が弱りがちになるとされてきました。腎臓の大切な役割のひとつは体内の水分量や体温を適切に保つことですが、この働きをサポートするのは、漢方でいう塩からみの食材、そして黒い食材です。
塩からみというのは、塩分とは少し違っていて、具体的には貝類や鮭、さば、えび、いか、たこ、海藻類。肉類では鴨や豚肉がこれにあたります。黒い食材とは、きくらげや黒ごま、ごぼうなどの根菜類やきのこ類です。
体のためにはいろいろな食材をバランスよく、そしてその季節の旬のものを食べることが大切ですが、この季節はこれらを積極的にとってみてください。日本でも昔から鍋物の具に、鴨や鮭、根菜類を使ってきたのは自然の知恵かもしれませんね。
腸内環境を整えて春を迎える
冬は寒さから運動不足にもなりがち。運動不足は腸の動きを鈍くします。中国では昔から繊維質の豊富なものを食べて腸を動かし、きれいにするのがよいといわれてきました。芋類やきのこ類、根菜類を意識して召し上がってください。
春先、花粉症でお悩みの方も多いですが、最近ではその原因のひとつが腸内環境にあるともいわれています。冬の間に腸をきれいな状態で維持しておくと春の病気の予防にもなります。
また、気温が低くなると血の巡りも悪くなり、血管ももろくなるので、血管を丈夫に保つ食材と水分の摂取も大切です。寒さの厳しい北京では、血管の弾力性を保つ酢や豆類、ナッツ類をよく口にします。
体を温めるしょうがやねぎ、にんにくも積極的に取り入れます。また動物性コラーゲンの豊富な鶏や豚の皮、植物性コラーゲンの豊富なきくらげなども欠かせません。
水分の補給で注意したいのは、決して体を冷やさないことです。おばあちゃんから緑茶は体を冷やすと教えられてきたので、私は立冬から啓蟄までの間は飲まないようにしています。代わりに、紅茶や、ウーロン茶、プーアール茶などの発酵茶をいただきます。
自然に逆らわないことが大切
中国には「以静養生」という言葉があります。「冬は養生しながら静かに過ごしなさい」という意味です。激しい運動を避けて、やがて来る春のためにエネルギーを養うことが大切。昼が短く夜が長い季節のリズムに人間も合わせるのが自然だという考え方です。食べ物の持つ力を賢く味方につけて、どうぞ冬を元気に乗り切ってください。
中国・北京生まれの料理研究家。食養生をテーマに四季に沿った食生活を提唱し、料理教室を主宰。
※この記事は、2019年11月15日放送「ラジオ深夜便」の「ごはんの知恵袋」を再構成したものです。
(月刊誌『ラジオ深夜便』2020年12月号より)
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