〇ゲスト:ryuchell、松井奏(IMPACTors/ジャニーズJr.)、アンジェリーナ1/3(Gacharic Spin)
○ナレーター:水瀬いのり
2021年の東京パラリンピックに、シッティングバレーの日本代表選手として出場した、嵯峨根望さん。ふだん両足義足で生活する望さんは、印象的な唐草模様の義足で「NHK杯 輝け!!全日本大失敗選手権大会~みんながでるテレビ」に出演し、義足での失敗談を披露したこともある。そんな彼のお相手は、3歳年下で、出会った当時は小学校の事務員として働いていた、ももこさん。いったい2人は、どうしてカップルに?
こちらは2人の「なれそめ」を語るのに欠かせない、「なれそメモ」!
▶出会い>>この人ヤバい
田村「きょうも、唐草模様の義足ですね!」
望「これがオシャレって聞いているので、ずっと唐草模様でやらさせてもらっています」
田村「これ、塗っているの?」
望「布を持っていったら巻いてくれて、樹脂で固めてもらう、という」
アンジェリーナ「すご~い。想像以上に唐草模様でびっくりしました」
そんな望さんとももこさんの出会いは、共通の友人を交えての食事会。そこで初めてももこさんに接した望さんは、彼女が悪口を言わず、前向きな発言がきわめて多いことで、性格のよさを強く印象づけられたという。そして『結婚相手はこんな子にしたいな』と思った望さんは——。
望「飲みに行って、次の一軒でカラオケに行ったんですけれど、そこで気づいたら(ももこさんの)手を握っていまして」
ももこ「カラオケで横に座ったときに、自然と勝手に手を握ってきたんです」
田村「自然と、勝手に!?」
アンジェリーナ「問題です。問題(笑)」
田村「『この人ヤバい』というのは、初対面なのに、手を握ってきたこと」
ももこ「そうです。絶対にチャラい人だと思って」
田村「でも、断ることもできたけど、とりあえず委ねた?」
ももこ「友達の友達だったので、『すごく嫌だ』と言ってしまうと、なんとなく雰囲気が……。もうカラオケで終わりなので、この場をしのいだらいいかなって」
松井「僕、けっこうこの番組を見させていただいているんですけど、今まで見た中で、いちばん“入り”が最悪ですよ(笑)」
望「でも、僕は結婚すると思っていますからね、手を握りながら」
田村「望くんの想いはものすごく真剣なんだけど、対するももこさんは全然受け入れ態勢ができてない状態じゃない? カラオケが終わって別れたら、それっきりになるところを、なんで、もう一回会うことになったんですか?」
望「家がほんまに近所なんですよ。その日のうちに“告白”みたいな感じになって」
田村「早い!」
アンジェリーナ「ヤバい。新幹線くらい速い(笑)」
田村「想いが先行しちゃうとね。2時間手を握っていても怒らないということは、気があるのかな?って、望くんとしては思うわけよね」
望「これ、付き合ってるもんかな、ってくらいのイメージですよね」
全員 (笑)
田村「ももこさんはどう受け取ったんですか?」
ももこ「真面目で誠実な人がタイプだったので、『絶対に断ろう!』と。でも、告白の最後に、彼が『俺、実は義足やねん』って、ひとこと言って」
田村「それまで、わからなかった?」
ももこ「そうなんです。『右足が』『左足が』と説明してくれて、その話を聞きながら、本気で告白していることがわかって。それで『お互いのことを知って、友達からならいいよ』という感じでお返事しました」
望「告白して、当然足のことも言おうと思っていたので。お互いのことを知っていこうと言われたから、僕としては完全に“作戦成功”やな、と」
松井「言っちゃった。“作戦”って言っちゃった(笑)」
田村「ちゃんと想いが伝わった、と」
望「そうですね」
ryuchell「“技”がすごくない? 急にドキッとさせて引かれたかもしれないのに、真剣に自分のことを、言わなくちゃいけないことをその日のうちにちゃんと伝えられて……」
▶交際>>ひとりトイレで…
田村「この『ひとりトイレで…』というのは?」
望「2人でごはんを食べに行ったとき、僕は両足が義足なので、話の中で『足、悪いやんか』みたいな話をするんですよね。そのときに、ももこが『足が悪いんじゃなくて、ないだけじゃないん?』と言ってくれたんですよね。そう言われて『あぁ……』と思って。そのままトイレに行ってから、しみじみ『めっちゃいいこと言われたなぁ』って、おしっこしながら思った、という話です」
田村「めちゃめちゃいい感性だなぁ」
ももこ「『俺、足悪いから』って、すごく申し訳なさそうに言っているように聞こえて、すごく悲しそうやな、と。ただ足がないだけやのに、『悪い』という言葉に違和感を感じて、それを彼に伝えただけなんですけど」
田村「そうね。でも、なかなか気づかない視点だと思うよ」
松井「出てこないですよね、そんな。ももこさん、ステキだな~」
望「(ももこさんに)ちょっと、(松井奏くんが)男前なので気をつけて」
田村「心配すな!(笑)」
望さんにだんだん気持ちが傾いていった理由として、3つのキーワードを挙げてくれた、ももこさん。それは『シッティングバレー』『講演活動』『タオル』というものだった。
ももこ「『シッティングバレー』は、初めてスポーツしている彼の姿を見て、すごくキラキラしているなって。『講演活動』は、自身の障害について講演していると聞いて、すごく尊敬できるなぁ、と思ったんですよね。チャラくて、不真面目なイメージだったんですけど(笑)」
望「やっぱり障害がある僕にしか伝えられへんことが多くあると思うので、そういうことを小学生や中学生をメインに話をさせてもらっていますね。『みんなも人と違って嫌なことがあるかもしれへんけど、それはいつかクリアになるよ』ということを」
ryuchell「これは確かに好きになるね。ギャップがあって、最初はめっちゃ下だったから」
アンジェリーナ「鬼の高低差ですよね(笑)」
田村「ギャップ論がわかっている人は、絶対モテると思う。上がるしかないもんね」
松井「それ、ずるいですよ(笑)」
田村「最後の『タオル』だけ、ちょっとわからない」
ももこ「彼と旅行に行ったときに、泊まったホテルに大浴場があって、お風呂に入って上がったときに『タオルがない!』と気づいて」
ryuchell「部屋から持っていくシステムだった?」
ももこ「そうなんですよ。『どうしよう!?』と思ったとき、知らない女性が『ももこさんですか?』と声をかけてくださって、私にタオルを渡してくれたんです。入口の前で、彼にお願いされた、と」
アンジェリーナ「望さん、やるやん」
田村「何でわかったの?」
望「別々で入って、僕が男湯に入った瞬間に気づいたんですよ。『ももこ、持ってないわ』と。それで、女湯の前で『すみません』と声をかけて」
田村「ももこさんもうれしかったですよね。タオルを受け取って」
ももこ「すごく優しくて、行動力がある方だなぁ、って思いました」
田村「行動力があって、気遣いもできるって」
アンジェリーナ「これはすごいよね」
松井「彼氏にするのに、最強ですね」
▶結婚>>泥棒してないけど
田村「何ですか? 『泥棒してないけど』というのは」
望「交際して3年経たないぐらいのとき、プロポーズをさせてもらったんです。親に報告をしに行くことになって、ももこのお母さんと会って話をしたら、足のことを特に気にすることもなくて。『ももこが決めたんやったら、あたしは泥棒でもOKするよ』と言ってくれたんです」
田村「ももこさんのお母様の、ももこさんへの信頼がすごいという言葉ですよね」
ももこ「そうですね。母も早く結婚してほしいと思っていたので、喜んでくれて」
望「僕の母親は、僕自身が先天性の障害やったので、2人が結婚すると『もしかしたら、障害のある子が生まれてくるかもしれへんよ。それでも、ももこさんはいいの?』と心配していた感じでした」
ももこ「健常者同士のご夫婦でも、障害のある子が生まれてくる可能性はありますし、子どもは絶対にほしいと思っていたので」
田村「何よりも、愛し合っている2人が結婚するわけだもんね」
ももこ「そうですね」
2017年に、2人は結婚。望さんが東京パラリンピックの強化選手に選ばれ、練習に励んでいた2019年、ももこさんは妊娠する。その後の検査で、お腹の中にいる子どもの足と手に障害があることがわかった。
望「そのときに『え?』ってなって、なんかこう、ふわふわしているような状態で。そこで『あ、ほんまに俺の子やな』というのを認識したというか」
田村「診断を聞いて、そう感じたんだ」
望「『俺の子やなぁ』ということを、何回も何回も言って、『ほんまやなぁ』という話をしました。その病院からの帰り道、車を運転していたんですけど、そのときにチラッとももこのほうを見たら、ポタッと一粒涙を流したんですね。それを見た瞬間に、僕はもう号泣して、『ごめん。ごめんな』と、ももこに言って」
ももこ「彼が『ごめん』って謝って、一緒にバーッと泣いてたんですけど……、私が泣くことで、彼がよけいに傷つくんじゃないか、自分を責めてしまうんじゃないかと思ったので、泣くのはすごく我慢していたんですけれど、自然と涙が」
田村「そっか……。その後は、どういう話を?」
ももこ「もう彼との子どもは絶対ほしいと強く思っていたので、障害があっても絶対にかわいいと思える自信はありました」
田村「それは、望くんも?」
望「そうですね。(生まれてくる子の)性別が女の子やったんですね。僕自身、障害があるから、男の子やったらクリアにできることというか、例えば『長ズボンなら義足ってわからへん』とかもあるけど、女の子やからスカートだとどうなるんかなとか、いろいろ考えて」
田村「経験してないからね」
望「そうなんですよ。でも僕にわからないことは、ももこが何とかしてくれるとも思いましたし、僕は義足のことはほかの人よりずっとわかっていることはあると思うので」
ももこ「わからないところは彼に教えてもらって、一緒に乗り越えていけたらいいかなって」
ryuchell「ももこさんの『足が悪いのではなくて、ないだけ』という価値観があって、前向きな個々のことをお互いにしっかりと見ていて、好き、愛があるというのを大事にしているからこそ高めあっていけるし、それが子どもに伝わっていくみたいな、その土台作りが既にできていて、すばらしいなと思いますね」
松井「マイナスな気持ちになりそうな感じだったけど、すごいポジティブですね」
その診断の数日後、望さんは「NHK杯 輝け!!全日本大失敗選手権大会~みんながでるテレビ」に出演。学生時代にカッコ良くなりたい一心で、両足の義足を一気に長くして失敗したエピソードを披露し、この日、いちばんおもしろい失敗談を語ったとして、グランプリに選ばれた。その収録スタジオで、今の気持ちを聞かれた望さんの口から出たのは、「両足義足でよかったです!」という言葉——。
田村「これが、(子どものことがわかった)何日後?」
望「1週間後ぐらいかな……」
田村「でも、もう前を向いている感じがするよね。映像を見たら」
ももこ「やっぱり子どものことばっかり考えていた時期だったので、気分転換というか、出演している彼の姿を見て、頼もしいなぁと思って」
望「僕自身が、自分のことを『スーパーマンや!』と思ってきたように、娘も僕らの前向きな性格が似ると思ったので、『まあ、スーパーウーマンにしたら、えぇだけやろう?』と考えて、ほんまに前を向いていました」
田村「何かね、覚悟のある男の姿に、俺は映ったんだけれども。最後に『両足義足でよかったです!』と叫んで、みんなが笑顔になっている映像なんて、テレビ番組ではなかなかないと思う」
松井「めちゃめちゃキラキラしていましたし、カッコよかったですもんね」
▶現在>>見飽きてほしい
最近、望さんが始めたのが動画配信。義足でのサッカーや縄跳び、自転車などに挑戦し、その様子をYouTubeで配信している。長女は2歳になり、話す言葉も増えて、どんどん活発に。すでに義足の練習も始めた。
田村「サッカーをやったり、縄跳びをやったり、やったことがないことに、なぜチャレンジしようと思ったの?」
望「昔は縄跳びができなくて、できないのが小学生のときに恥ずかしかったりして、『もう、やれへん!』みたいな感じやったんです。今、大人になって『障害があっても、いろんなことができるんちゃうか?』と思うようになりましたし、娘が物心ついたときに『パパもいろいろチャレンジしてるやん』っていうところを見て……」
田村「できてもできなくても、チャレンジすることに意味があるという、パパなりのメッセージ動画でもあるのね」
田村「この『見飽きてほしい』は、どういうメッセージなんだろう?」
望「短パンをはいて歩いたりとか、最近しているんですけど、『義足の人がおっても、当たり前やん』みたいな感じで、みんなに見飽きてほしいというか。義足で短パンで歩いたりしたら、見てくれるのは全然いいんですけど、例えば子どもたちがわーっと見に来たときに『あかんあかん、見たらあかん』と言われることもあるんですよね」
田村「『触れちゃだめ』とかね」
望「そうそう。でも、そうじゃなくて『あ、こういう人もおるんやな』ということが子どもたちに伝わってほしい。『見ちゃだめ』って言われたら、何か悪いことをしているんじゃないかと思われるじゃないですか。全然悪くないのに」
ryuchell「人が自分を見ている角度を変えるのって、すっごく大変だと思うんですよ。でも、ずっと(人前に)出続けたり、発信し続けられたら、変えられると思うんですよね」
松井「友達同士だったら、ちょっとイジリあえるぐらいの関係が、っていうことでしょうね、きっと」
田村「それで言うと、(望さんの義足の)唐草模様はやっぱりすごいじゃない? こっちも言えるじゃん。『なんで唐草模様なの?』って」
望「そうですね、はい」
アンジェリーナ「すごくキャッチーですもん」
ももこ「(周囲から)けっこう突っ込まれてますねぇ」
アンジェリーナ「もっとかわいい義足もいっぱいできる、ってことですよね?」
望「そうですね。……これ(唐草模様)がかわいくないみたいな言い方を、今されましたけれども(苦笑)」
アンジェリーナ「ごめんなさい! ちょっと語弊がありましたね」
全員 (笑)
▶▶2人にとって“超多様性”とは?
望「人として認め合えるのが当たり前の世界だと思っています」
「東京パラリンピックに出場することができて、その選手村って、義足の人やったり車いすの人やったり目が見えへん人やったり、健常者も、もう当たり前のように、入り混じっている世界やったので、社会全体がそうなっていけば、それってほんまに超多様性やな、と思いますね」
ももこ「相手のことを知って寄り添うことです」
「相手のことを何も知らないで、『障害があるから』とか『かわいそうやな』とか、勝手にイメージをつけるのではなく、相手のことをしっかり知って、それで、知っていていけば好きになって、自然と寄り添えるのじゃないかな、と思っています」
【番組HP】
https://www.nhk.jp/p/naresome/ts/KX5ZVJ12XX/?cid=cchk-mgqc-20220910-steranet-02