江戸時代の男女逆転パラレルワールドを描いた『大奥Season2』の「幕末編」が始まりました。本ドラマでは、絶妙なキャスティングも話題になっていますが、「幕末編」では、13代将軍・家定と14代将軍・家茂に仕え、最後の大奥総取締になる瀧山に古川雄大さん、Season1で3代将軍・家光と心を通わせたと万里小路まりのこうじ有功ありことを演じ、家定の正室・たねあつとして再登場する福士蒼汰さんなど、放送前から注目の俳優陣が多く登場します。前編に引き続き、制作統括の藤並英樹チーフプロデューサーにお話をお伺いしました。


――『大奥Season1』で万里小路有功を演じた福士蒼汰さんが、有功の再来と呼ばれる胤篤を演じることになりましたが、有功役と胤篤役を合わせてオファーしていたのですか?

Season1を制作しながらSeason2の準備をしていく中で、脚本の森下佳子さんと「誰がいいかな」と話をしていました。福士蒼汰さん演じる有功と、堀田真由さん演じる家光が出発点になっていて、福士さんには的確に有功を演じていただいたことと、原作でも胤篤は有功の生まれ変わりのようであるという表現もあり、「大奥」シリーズのおしまいを迎えるにあたって、改めて福士さんにお願いしたいと思ってオファーしました。

福士さんは、Season1の撮影現場も含めて気に入ってくださっていたようで、クランクアップ時にも「また戻ってきたいです」とおっしゃっていたので、オファーした時はすごく喜んでいただけました。僕らスタッフもすごくうれしかったです。

――有功と胤篤は、見た目は瓜二つですが、キャラクターは全く異なります。両者を演じた福士さんを見て、どう思われましたか?

すごく堅実に、意識して演じ分けていただけていると思います。一方、福士さんの持つ、ノーブルな感じや聡明さは、有功と胤篤に通ずる部分もあり、連続性を持って演じているのかなと思います。両者とも非常にチャーミングな男性だと思いますし、そこをうまく福士さんが演じてくださっています。

――Season2では、ミュージカルなどで活躍されている古川雄大さんが瀧山を演じて、キャスト発表時から大きな話題になっています。古川さんを起用した理由をお聞かせください。

瀧山は原作でもすごく華があって、人を惹きつける力があります。そういう俳優さんは誰だろうと考えた時に、古川さんはミュージカルという大きな舞台の中でも、大勢の観客を惹きつけて離さない力があると感じました。彼は美形ではありますが、求心力や人を惹きつける“陽”の部分を感じたので、瀧山役をお願いしました。

――瀧山はもともと陰間(男娼)で花魁の装いをしていましたが、そこで阿部正弘(瀧内公美)に見出されて、家定の大奥総取締になります。花魁という女性の装いと、大奥内での男性としての振る舞いを演じ分けることになるのではないかと思うのですが、何かリクエストされたことはありますか?

男性、女性スタイルだからという差はあまりありません。古川さんには求心力と人を惹きつける魅力があるので、それをそのまま出していただければいいのかなと思いました。古川さんは時代劇が初めてで、所作など緊張された部分があるんですけど、むしろ型にとらわれずに演じていただければ、というお話をしました。

古川さんには品の良さと明るさがあるので、瀧山に通ずる部分だなと思っています。だから変に強調しなくてもそういう部分はきっと出てくると思うので、そこを大切にしてはどうかという話はしました。

――実際に古川さんの演技をご覧になって、どのように感じられましたか?

思っていた以上にチャーミングでした。古川さんが、僕が思っていた以上に、いい意味でいろんな表情を出してくださっていて、かっこいいというよりもかわいい。古川さん演じる瀧山をみなさんにも楽しんでいただければうれしいと思いました。

――Season1とSeason2のドラマ全体を通して、出演陣の表情がとても豊かに感じられますが、何か狙いはあったのでしょうか?

特に何かの狙いがあったわけではなく、それを生み出しているのはやはりよしながふみさんの原作であり、森下さんの脚本だと思います。大奥に生きる人たちの業や悲しみなどを丹念に描いていただいて、それを表現するにあたって、自然に、という言い方は変かもしれませんが、うまく露出しているのかなという風には思います。俳優のみなさんが演出と相談しながら、丹念に演じてくださった結果なのかなと思います。

――ドラマでは、衣装やセットがとても豪華ですが、こだわった部分をお聞かせください。

3代将軍・家光の時代から大政奉還まで200年以上の時代を描くにあたって、江戸もバブルの時代もあれば、質素な時代があったりしますので、その時代によってカラーをちゃんとつけていくのは、特にSeason1では意識しました。Season2もそれを踏襲して原作のイメージを損なわない世界観を作り、底辺に流れる連続性を衣装でも大事にしていったほうがいいと考えました。

その繋がりは、衣装チームのみなさんが非常に精細に作ってくださったと思います。「医療編」では、田沼意次(松下奈緒)や一橋治済(仲間由紀恵)の着物は非常に豪華です。一方の平賀源内(鈴木杏)や、黒木(玉置玲央)は庶民に近いので質素なのですが、その中でもシックさがある。視聴者のみなさんの期待に応えられるようなものにしていきたいという思いはあります。

――Season2では、かつて水野祐之進(中島裕翔)や有功が着た流水紋(りゅうすいもん)の裃を、大奥総取締になった瀧山が身にまとうシーンがあります。流水紋はこのドラマを象徴する衣装ですが、工夫されたことなどをお聞かせください。

流水紋をはじめに作った時、衣装や演出、福士蒼汰さんなどがチームで話し合い、素材や色からこだわって作りました。好評を得たので、それを引き継ぐために瀧山の流水紋も、より力を入れて作りました。Season1から2と間はあいてしまいましたが、連続性はあり、前回を踏襲して視聴者のみなさんの期待に応えるというプレッシャーはあります。でも、それをうれしく感じながら制作していったので、ぜひ楽しんでいただきたいと思っています。

▼藤並英樹チーフプロデューサーへのインタビュー前編もぜひお読みください!
「時代劇だからこそ描ける、普遍的なテーマ。とっつきにくい幕末だからこそ、知らない人も楽しめる!」

【関連番組情報】
11/14(火)放送の「100カメ」では、ドラマ10「大奥」の舞台裏に密着! ドラマの世界を作る美術スタッフたちの仕事に迫る。大奥の男たちが勢ぞろいする華やかな山場シーンの裏で繰り広げられていたドタバタ劇とは…?