主人公の米田結(橋本環奈)が神戸栄養専門学校で出会ったのが、同級生の矢吹沙智(山本舞香)。高校時代に有名な陸上選手だった沙智は、当時はまだ珍しかったスポーツ専門の栄養士を目指しています。
しかし、ギャルファッションで登校してきた結と入学初日から衝突。結、湯上佳純(平祐奈)、森川学(小手伸也)と同じ班になるものの、ケンカばかり。献立作りの課題を成し遂げたことで、4人の距離は少し近づいたようですが……。
そんな沙智を演じるのは、朝ドラ初出演となる山本舞香さん。演じるのが難しかったという沙智のキャラクターや、撮影裏話を聞きました。
沙智は栄養士になりたいという気持ちが人一倍強い子
――実習班での献立作りをやり遂げたことで、沙智と結との距離も少し縮まったように感じましたが、そもそも沙智は結になぜいらだっていたんでしょうか。
沙智は栄養士になりたいという気持ちが人一倍強いから、中途半端に取り組みたくなくて空回りしちゃってるのかなと思います。過去のある経験をきっかけにスポーツ栄養士を目指しているんですけど、4年制大学ではなくて専門学校を選んだのにも彼女なりの理由があるんです。
だから、結がギャルファッションで登校してきて、彼氏のために栄養士になりたいって言うのを聞いて、「何言ってんの?」と思っていると思うんです。
沙智って、結や佳純のことが気に入らないなら無視しておけばいいのに、2人を批判するようなことをわざわざ言っちゃう子で。私からしたら、みんなと仲よくなりたいのか、壁を作りたいのか、どっちなの!? みたいなところがあって、演じるのが難しいと感じる部分もありました。
――確かに、気に入らないなら放っておけばいいのに、沙智はわざわざ言わなくてもいいことを言ってしまうところはありますね……。
そうなんです(笑)。会ったその日に自分から、結に「あんた、なめとん?」ってわざわざ言ったりして。沙智は早く一人前の栄養士になりたいと必死にもがいているんだけど、やっぱりまだまだ子どもっぽいところがあるんですよね。
それに、ちょっとおせっかいな部分もあるから、言わなくてもいいのに自分の気持ちをストレートに言葉にしてしまうんです。でも、本当はすごく優しい子なんですよ。この先、物語が進んでいくと、だんだんそういう部分も見えてくるんじゃないかな。
環奈が現場の雰囲気を作ってくれて、すごく助けられました
――今作が朝ドラ初出演だそうですが、出演が決まった時はどんなお気持ちでしたか?
最初にお話をいただいた時は、「え?」みたいな。朝ドラに呼んでいただけるなんて思っていなかったし、(橋本)環奈が主演というのも心強いなと感じました。脚本家の根本ノンジさんとお話しする機会があったんです。そうしたら、沙智役はもともと私をイメージして書いてくださっていたと伺って、「そうだったの!?」って。さらにうれしかったんですけど、もっと早く知りたかったです(笑)。
――橋本環奈さんとは、もともと親交があったんですか?
そうですね。一度映画で共演してから、すごく仲よくなったんです。その時はずっと泊まりでの撮影だったので、一緒に撮影して、撮影が終わっても一緒に過ごすという毎日だったので、たくさん話をしてギュッと距離が縮まりました。
――では、今回は久しぶりの共演で現場も楽しめたのではないですか?
すごく楽しかったんですけど、沙智と結って最初は距離がある役でしたので、あまり近い空気感でいられなかったのが残念でした。もっと仲のいい間柄だったらよかったんですけど(笑)。でも、初めての朝ドラの現場で、最初、私が結構身構えていたんです。あたたかいスタッフさんばかりだったのに、勝手に壁を作ってしまっていて。
そんな時に、環奈が座長として現場の雰囲気を作ってくれて、すごく助けられました。撮影の様子を見ていると、スケジュールとか衣装の繋がりを環奈が一番把握しているんです。だから、環奈自身がスタッフさんに助けられているだけじゃなくて、環奈がスタッフさんを助けることもできていて、改めて環奈ってすごいなって実感しました。
――沙智は、結、佳純、森川と一緒に学んでいくわけですが、現場では山本さん、橋本さん、平さん、小手さんの4人はどんな雰囲気でしたか?
最初は、みんな、様子見で探り合っている感じでしたね(笑)。でも、私が初めてご一緒するのは小手さんだけだったので、まずは小手さんと仲よくなろうと思って、ちょっと技を使いました。
――技、というのは?
たぶん、小手さんって一度懐に入ったら、心を許してくれそうなタイプだなと思ったので、撮影の合間に「小手さん、この後も別の仕事で大変ですね」とか自分から話しかけてコミュニケーションを取ることを心がけました。そうしたら、すぐ打ち解けてくださいました(笑)。
あるシーンの撮影で、小手さんが全力でこけたのを見て、みんなで爆笑したり。小手さん自身も現場を盛り上げてくれていたので、みんな和気あいあいとした雰囲気で撮影できましたね。
私の神戸ことばは優しい気持ちで見てください!
――沙智を演じる上で苦労されたことはありますか?
沙智は神戸ことばなので、すごく苦労しました。神戸ことばって関西弁ともまた違うんです。ずっと方言指導の先生が録音してくださったセリフの音源を聞いていたんですが、自分の中でつかめたと思っても、実際に口に出してみると全然違っているんです。
だから、付きっきりで先生に教えていただきました。もう、頭の中はずっと神戸ことばでいっぱいでしたね。小手さんだけ標準語だから、あっ、ずるいって思っていました(笑)。
――方言に苦労される方は多いと聞きますが、山本さんはどうやって乗り越えられたんですか?
スタッフさんにすごく助けられましたね。本当にやさしい方ばかりで、私が神戸ことばを上手に話せなくてズーンって落ち込んでいると、メークさんが「大丈夫よ、みんな、なんとかやりきっているから」って励ましてくださって。
神戸ことばに集中していたので、なかなかスタッフの皆さんとゆっくりコミュニケーションをとれなかったのですが、あたたかい雰囲気の中で撮影させていただき、なんとかやり切ることができました。
――結は栄養学校に通うことで、沙智をはじめ、いろいろな出会いを経験します。この先、「おむすび」のストーリーはどんなふうに進んでいくのでしょうか。
この神戸の栄養学校編で、結の大きな成長が見られると思います。自分に対して、恋人に対して、まわりの人に対して、結の中で当たり前だった考え方がどんどん変化していく。
沙智やカスミン(湯上佳純)やモリリン(森川学)に出会って、結が階段を一つずつ登っていく、大人になっていく、その手伝いを沙智たちがしていくのかなって思っています。その一方で、沙智もカスミンもモリリンもこの出会いによって変わっていくので、そんな4人の成長をしっかり見守っていただけたらうれしいです。
この4人って全然性格も違うんですけど、違うからこそ、どんどん絆が深まっていくんです。一つのことをみんなで成し遂げるというのは、どんな仕事でも大事なことだから、性格の違う人ともうまくやっていく方法みたいなものも、見ていると参考になるんじゃないかなって思っています。あと、自分としてはすごく頑張りましたが、私の神戸ことばは優しい気持ちで見てもらいたいです(笑)。
やまもと・まいか
1997年生まれ。鳥取県出身。主な出演作に、映画『今日から俺は!! 劇場版』『カラダ探し』、ドラマ「今日からヒットマン」「闇バイト家族」「Believe−君にかける橋−」など。NHKでは、大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」に出演。今作が連続テレビ小説初出演となる。