作家として、僧侶として「人を愛することの大切さ」を伝え続けてきた瀬戸内寂聴。去年11月に、99歳で人生の幕を閉じた寂聴師の名言の数々や華やかな交友録などを紹介する展覧会が、日本橋髙島屋でスタートした。

この展覧会では、愛に生き、ペン1本に人生をかけ、戦後の自立した女性の先がけである寂聴師の人生を7章立てで紹介。その生涯を振り返るだけではなく、テレビなどのメディアを通して私たちが見てきた、寂聴師の姿やイメージとは異なる魅力、そして新しい発見が随所に感じられる内容になっている。
 

■第1章 人生の原点
価値観を根底から揺さぶられた敗戦の体験、作家活動の源になった出奔時の思いを、関連資料の展示や著作に書き残したことばでたどる。

文楽人形「お染」(左)と「お園」。寂聴師が文学に憧れを抱くきっかけとなったのが、徳島の伝統芸能「人形浄瑠璃」だった。

■第2章 瀬戸内晴美の文学
仕事と恋愛という女性にとって普遍のテーマに正面から向き合い、人気作家として文壇での地位を固めていった瀬戸内晴美の文学を紹介。
同人誌「文學者」。上京した瀬戸内晴美は、丹羽文雄主宰の同人誌「文學者」に入って本格的な小説の勉強を始めた。

■第3章 得度式
岩手県中尊寺での得度式の模様とその決意を、剃髪した黒髪や得度の挨拶文、貴重な写真資料などで伝える。

出家時に剃髪した黒髪。

■第4章 ようこそ寂庵へ
僧侶として痛みや孤独を抱える人々を励まし、反戦など社会問題にも積極的に向き合い行動した姿を、寂庵ゆかりの品や懐かしい法話映像などで振り返る。
再現された「寂庵の書斎」。

■第5章 源氏物語の世界
「平成の源氏ブーム」を巻き起こした華やかな寂聴源氏の世界を、日本画家・石踊達哉画伯が描き下ろした圧巻の装幀画原画ほか、ゆかりの品々などで紹介する。
寂聴源氏・装幀画「真木柱」六曲一隻屏風 石踊達哉 作。

■第6章 人縁という宝物 
作家仲間や各界著名人との書簡、寂聴師との思い出の品をエピソードとともに展示。
著書『奇縁まんだら』挿絵 横尾忠則 作(複製)。

■第7章 生きることは愛すること
晩年に執筆した著書と活動紹介を通じて、寂聴師が遺したもの、我々に伝えたかったことは何だったのかを探る。
絶筆となった原稿。

「なぜ小説を書き続けたのか」「なぜ出家をしたのか」「なぜそこまで人をひきつけてきたのか」「寂聴師がいちばん伝えたかったことは何なのか」――それらの答えを1つ1つの展示から感じ取ることができる。すべて見終わり会場をあとにするときには、私のように「寂聴先生に会いたい」という思いを強く抱く来場者も多いかもしれない。


初日となった8月3日にオープニングセレモニーが行われ、ゲストとして寂聴師と長年交流を続けていた俳優の南果歩が登壇。寂聴師との思い出をこう振り返った。
「会場を見せていただきましたが、寂聴先生の99年間の濃厚な人生がつまっていて、私もまだ本当の瀬戸内寂聴を知らないことに気づかされました。いちばん驚いたのが、先生が出版された400冊を超える本の数です。これだけ書き続けた創作意欲が、最後まで枯れなかった事実に驚がくしました。また、なんといっても先生の屈託のない笑顔。私にとってはまさに“アイドル”です。戦前、戦後、昭和、平成、令和という時代を生きながらも、その時代を鋭く分析し、“今、自分が何をなすべきか”を常に念頭に置きながら活動をされていた姿も、今を生きるアイドルなのではないかなと思います。先生と最後にお話しできたのが、去年の5月15日、先生のお誕生日でした。そのときに『来年の100歳の誕生日は盛大にお祝いしましょう。100歳でみんなのアイドルになれるのは先生以外いませんよ』という話をしたら、『それはいいわね、100歳のアイドルなってみたいわ』とおっしゃったんですよね。100歳には1年足らなかったですけれども、“99歳のアイドル”は本当にすばらしいと思います」
寂聴師の魅力や寂庵での思い出を語る南果歩。

一般財団法人NHKサービスセンターが寂聴師に関連する展覧会を開催するのは、1998年、2007年以来3度目となる。
「寂聴さんは過去の展覧会の際、『生きている間に自分の展覧会が開かれると思ってもみなかった。夢をみているような気持ちがする。無数の読者の厚い声援なくして、どうしてこの長い歳月、物書きとして生きてこられただろうか』とお話されていました。そして、全ての会場のオープニングに出席していただきました。どの会場でも法話やサイン会をしていただき、サプライズで会場にかけつけてくださったこともありました。きっと、きょうも寂聴さんはこの会場にもいらっしゃっていて、ほほ笑みながら私たちのことをご覧になっていらっしゃると思います。今回、寂聴さんのすべて、そしてすばらしい方々とのご交友を一堂に展覧することがかないました。この会場いっぱいにつまっておりますので、どうかごゆっくりとご覧ください」(主催者)

400作を超える著書、写真や秘蔵映像などの貴重な資料とともに、寂聴師が伝えた心に残ることばを空間演出で表現する今回の展覧会。99年の人生を精いっぱい生き抜いた寂聴師の心と生きざまに、多くの方がふれることを願いたい。

たくさんの愛を、ありがとう 追悼 瀬戸内寂聴展 (takashimaya.co.jp)
【会期】開催中~2022年8月22日(月)
【会場】日本橋髙島屋S.C. 本館8階ホール
【入場時間】午前10:30~午後7:00(午後7:30閉場)※最終日は午後5:30まで(午後6:00閉場)
【入場料】一般1,000円、大学・高校生800円、中学生以下無料 ※税込み価格

今後の巡回予定
2022年  9月14日(水)~26日(月)大阪髙島屋 7階グランドホール
2022年10月12日(水)~31日(月)京都髙島屋 7階グランドホール