
いつの時代も若者を熱狂させ、ときめかせる“アイドル”。昭和初期から終戦間際まで、戦時下の日本で、1日も休むことなく営業を続けた劇場「ムーランルージュ・新宿座」。そこは、“アイドルに会いに行ける劇場”でもあった。
ファンとともに成長し、劇場の絶対的エースとなった明日待子(あした・まつこ)。日本が戦争へと進む中でも、ファンの声援に笑顔で応え、ステージで歌い、踊り続けた……。
この番組のテーマは“戦時下のエンターテインメント”。明日待子という一人のアイドルの青春を描いたドラマでもあり、劇場での歌とダンスをぜいたくに物語に取り込んだ、音楽ステージ・ショーでもある。当時実在した登場人物や劇場をベースとした、オリジナル作品。
【あらすじ】
昭和11年、岩手から上京した小野寺とし子(古川琴音)はスターになるため、新宿の劇場・ムーランルージュのオーディションを受ける。その場で支配人兼プロデューサーの佐々木千里(椎名桔平)や劇場の看板女優・高輪芳子(愛希れいか)の目に留まり、座員として劇場で働き始める。
とし子は下積み生活を続け、寝る間を惜しみ、1日の大半を稽古や本番のステージに費やしていた。そんな中、ある事がきっかけで、とし子はステージのセンターに立ち、歌い踊ることになる。
半年後、とし子は名前を“明日待子”に変え、同僚の小柳ナナ子(田村芽実)らとともに、若手グループを結成し、圧倒的人気を誇っていた。大勢のファンが詰めかけ、劇場は連日満員御礼となった。待子は不動のセンターとなり、ファン一人一人の恋人“アイドール”となった。
その一方、日本は戦争へ突き進み、その影響はムーランルージュにも及んだ。劇場のシンボルだった赤い風車が取り外され、看板俳優の山口正太郎(山崎育三郎)も出征し、やがて待子も戦地のファンの期待に応えようと、戦争に協力していく...。
【主な出演者コメント】
古川琴音
(小野寺とし子/明日待子役)

上京し、 ムーランルージュのオーディションに受かり、座員となる。下積み時代を過ごす中、ある事がきっかけで、センターに抜てきされ、トップアイドルへの道を歩み始める。
古川琴音さんコメント
戦争と共に生きた、まっちゃん。どんな時代だったとしても、ファンが明日を楽しみに待てるような、そんな希望を与え続けた、まっちゃんの煌めきを届けられたらと思います。とにかく、懸命に歌って踊って、演じました。是非、たくさんの方に見ていただけるとうれしいです!
山崎育三郎(山口正太郎役)

ムーランルージュ初期から参加し、劇場の看板俳優として活躍する。面倒見の良い、兄貴的存在で、座員たちのことを気にかけ、待子やナナ子のあこがれの先輩でもある。
山崎育三郎さんコメント
山口正太郎役を演じます、山崎育三郎です。名前自体に親近感が湧き、更に、歌い、踊り、演じる、ムーランルージュを代表するエンターテイナー、このようなやりがいのある役を与えて頂き、感謝しています。戦時下で、舞台に全てをかける役者たちの葛藤、今この時代だからこそ大きな希望を貰える作品です。今回のためのオリジナル楽曲も、チームで歌い踊り、リハーサルを重ねてきました。そのパフォーマンスも是非楽しみにして頂きたいです。
愛希れいか(高輪芳子役)

ムーランルージュを代表するトップ スター 。過去に 松竹歌劇団のマドンナとして期待されるも、挫折し退団。そんな中、千里に拾われる。待子が目標とし、背中を追い続ける存在。
愛希れいかさんコメント
台本を読ませて頂き、どんな状況でもファンのために行動し、自分たちの出来る事を精一杯やろうと、諦めない待子や千里さんの熱い思いに、とても胸を打たれましたし、すごく共感しました。待子が憧れる芳子を、自分なりに精一杯演じたいと思います。よろしくお願いいたします。
正門良規(須貝富安役)

青年兵士に襲われそうになった待子を助けた学生。その後、待子のことが気になり、劇場にファンとして、通い始める。そして、歌い踊る、待子の姿に魅せられていく。
正門良規さんコメント
須貝富安役の正門良規です。令和を生きる僕たちと、作品を通してみた昭和を生きる人々は、時代は違っても、変わらず目の前にある時間を生きていたのだなと感じました。今だからこそ、皆さんに見て頂きたい物語です。アイドルとしてこの作品に関われたことが本当に幸せです。是非、放送をご覧になってください。
田村芽実(小柳ナナ子役)

待子と同じ時期にムーランルージュに入り、ともに成長し、競い合う、親友であり、良きライバル。やがて待子と二枚看板のアイドルとなり、劇場の全盛期を支える。
田村芽実さんコメント
小柳ナナ子役としてこの作品に出演させていただけること、とても幸せで、毎日の撮影が楽しくて仕方がありません。この作品を通して日本のアイドル文化の歴史に触れることができ、その奥深さと魅力に、私自身、今まで以上に虜になってしまいました。古川琴音さん演じる明日待子さん(まっちゃん)をさりげなく柔らかく、隣で支えながら、一緒に同じ夢を持つ親友として、新宿ムーランのアイドルを一生懸命に全うしたいと思っています。
椎名桔平(佐々木千里役)

ムーランルージュの支配人であり、演出にも口を出す、敏腕プロデューサー。待子などの新人を発掘、育成し、劇場を連日満員にして知名度を上げ、成功を収めていく。
椎名桔平さんコメント
NHKで戦争について考えるドラマを、「アイドル」というテーマで制作すると聞いた時は、一瞬耳を疑った。これまでの感覚から、もっと重厚なテーマを予測しがちだったからだ。でも脚本を読むと、しっかりと戦争が大きな背景として描かれている。そして目まぐるしく移りゆく戦時中の人々の心情が、「ムーランルージュ・新宿座」を舞台に、明るく、エロチックでコメディーな演目によって語られる。そのギャップがむしろ悲しく切ない。ロベルト・ベニーニの「ライフ・イズ・ビューティフル」を彷彿させられる戦争の痛烈な痛みだ。ムーランを作り“娯楽第一”を信条に、疲れ切った観客に希望を与え続けた支配人、佐々木千里。ケチで博打好きで女好きという人間味あふれる彼を、生き生きと演じたいと思います。
【作者 八津弘幸さんのコメント】
明日待子らアイドルたちも、ムーランルージュという劇場も、そこに押しかけるファンたちも間違いなく実在し、自分の“推し” の名前を叫び、一緒に歌って踊っていました。その光景は今と何も変わりません。そんな彼女、彼たちが、戦争によって何を奪われ、何を願っていたのかと向き合うことは、奇しくもコロナ禍に不要不急が叫ばれる現在、娯楽はどこまで必要なのか、僕たち自身に突きつけられた問題とも向き合うことでした。
そして試行錯誤を繰り返し、答えを模索して、どうにか本を完成させた矢先、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発しました。実際にその悲惨な現実を目の当たりにして、正直、僕は今わからなくなっています。終戦ドラマにありがちな、重く暗い作品にはしたくない、などと言っていた自分は、浅はかだったのではないか。ふと気づけば、これこそまさに当時の登場人物たちが抱えていた葛藤と、同じなのかもしれません。
それでもアイドル・明日待子のように、見て下さった皆さんが元気になれるように、前を向けるようにという思いで書いたことも、また同じです。この作品が少しでも明るい明日につながる、皆さんの“推し”となってくれたらうれしいです。
【演出 鈴木航ディレクターのコメント】
あの頃の日本にも、今の私たちと変わらないアイドルがいて、ファンがいて、不要不急と言われながらエンターテインメントを守り続けた人々がいました。“戦争”は、その日常から地続きにあったのです。戦時下の時代に輝いた女の子の青春の日々を、めくるめくショーとともに描きます。是非、ご期待ください。
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【再放送】2023年9月22日(金)よる8時15分から9時44分 BSP・BS4K