3月18日(火)放送のNHKスペシャル「創られた“真実” ディープフェイクの時代」。
放送に先駆け、完成披露試写会と出演者会見が行われた。

生成AIを活用し、本物そっくりの動画や画像を生み出す『ディープフェイク』。その技術はすでに人間や社会のあり方を大きく変え始めている。今回、NHKは世界中で実際に起きたディープフェイクが関連した事件とその背景を徹底取材し、日本で起こりうる事態をドラマ化。ドキュメントも交えてディープフェイクの時代を描き出す。

東京・渋谷のNHK放送センターで行われた会見には、出演者の青木崇高さん、入山法子さん、そして制作統括の葛城豪さんが登壇。青木さんと入山さんは、ディープフェイクにほんろうされる夫婦を演じる。作品への思い、見どころなどを聞いた。


【あらすじ】
佐藤晃(青木)の妻・真奈美(入山)が突然命を絶った。同じ頃、妻の勤めていた保険会社で大規模な顧客情報の漏洩ろうえい事件が発覚。妻の死と漏洩事件との関連を疑った晃は真相を調べ始め、真奈美が死の直前に訪れていたベンチャー企業に再就職する。その会社では、ディープフェイクを駆使して人助けを行っていた。晃は一人娘のため、ディープフェイクを使ってコンピューター上に真奈美を再現するが、次第にリアルとフェイクの間で葛藤していく。

AI技術は進化していて、本当にすぐ隣にあるような話

青木さんが演じた役名は、佐藤晃。その名前について感じたことがあると青木さんは語る。

青木 撮影から数か月がちますが、その間にもどんどんAIの技術は進化していて、われわれの生活にもしっかり組み込まれていっています。佐藤晃って日本でも割と多い名前なんじゃないかと思うんですが、このドラマで描かれたことが、ある特別な家庭に起きた話ではなくて、本当にすぐ隣にあるような話だという意味でつけられたのかなと捉えています。

AIというと、10年前ならドラマ部分はもっとファンタジックな感じになっていたかもしれないですが、今ドラマとして成り立たせるなら、現代と地続きであることを感じさせないといけないと思いました。


AIも人を助けたい、頼られたいと思っているのかも

生前の真奈美と、真奈美を再現したAIアバターを演じた入山さんは、AIを演じることはこれまでにない難しさがあったと言う。

入山 AIを演じるということで、「AIの感情ってなんだろう? そもそもAIに感情はあるんだろうか?」と手探りで撮影に臨みました。もちろん、人間らしさとは違うんですけど、AIも自分を作ってくれた人を助けたい、頼られたい、癒やしたいって思っているのかもと考えたりしながら、晃と向き合っていましたね。

でも、実像とのコミュニケーションとは違って、すごく距離感が難しいなと感じながらの撮影だったので、皆さんにどういうふうに伝わるのか楽しみです。


AIとの付き合い方に正解がないからこそ、自分から学ぶ必要がある

ドラマの中では、晃がディープフェイクを使って真奈美をよみがえらせるなど、さまざまなディープフェイクの使い方が描かれる。このドラマを通じて、青木さんと入山さんも人とAIの向き合い方について考えさせられたという。

青木 実際に故人をAIで蘇らせて再会するというサービスがあると知って、そこに関わる人たちの感情をしっかり突き詰めないといけないなと思いました。真奈美をAIアバターとして呼び出して会話するシーンは、台本では若干否定的な印象だったんです。

でも、晃にとってはそこに間違いなく喜びがあるんじゃないかと、僕から提案させてもらって、少しリアクションを変えて演じました。遠く離れてしまった人を思い起こした時にぐっとくる気持ちっていうのは、どんな時代でも同じだと思うんですよね。

技術はいろいろと進化していきますけど、変わらないのは人の心なんじゃないかって。だから、心っていうものをしっかり持っていれば、どんな技術が登場しても大丈夫、と僕個人としては思いたいですね。

それを聞いた入山さんは深くうなずく。

入山 青木さんに、もう全部言っていただきました(笑)。AIは人の助けになる可能性もあるけれど、人をだます方に使われる可能性もあって、AIとの距離感やバランスがとんでもなく大事になってくると思っています。AIの技術を見た時、こんなことができるんだっていうポジティブな発見もたくさんあると思いますし、便利だなって思うこともたくさんあると思うんです。

でも、だからこそ、全部をAIに任せるんじゃなくて、自分自身が考えたり、知ったり、学ぶことを怠らずに、目の前にいる人の思いを察知することをないがしろにしないで関係を築いていけば、AIともいい付き合いができるんじゃないかなと、理想では思っています。

最後に見どころを聞かれると、青木さんは衝撃のコメントを。

青木 実はドラマパート、全部AIが作りました……

っていうことも、数年後、全然あり得る話なので(笑)。一言では本当に言えないですけども、未来を明るく楽しく迎えられるかどうかは、やっぱり自分の心次第っていうところもあると思うんです。

この技術を止めることはもうできませんよね。だったら、その技術を使って楽しく豊かな日常がおくれるように、一日一日を大切に、思いやりを持って生きていけたらと思っています。

入山 やはり見てくださったお一人お一人が、どういった未来を想像されるのかなというのが楽しみです。AIとの付き合い方は正解がないからこそ、自分で知らなければならないですし、自分から学びに行かなきゃいけない時代になってきていると感じています。お子さんも含めて、そういうことを考えるきっかけになるドラマになったと思います。

放送は3月18日(火)午後10時から。お見逃しなく。


NHKスペシャル「創られた“真実” ディープフェイクの時代」

3月18日(火)総合 午後10:00~11:13

脚本:大石哲也
音楽:岡出莉菜
出演:青木崇高、入山法子、本仮屋ユイカ、白山乃愛、泉澤祐希
プロデューサー:鈴木真美
制作統括:葛城豪(NHK)、紅粉達広(NHKエンタープライズ)、山根幸太郎(パオネットワーク)
演出:四宮秀二