今年、開館50周年を迎えたNHKホールには、国内最大級で世界的に見ても大規模なパイプオルガンがあります。

「うたコン」など、NHKホールの公開番組で、舞台に向かって右側壁面にオルガンバルコニーと何本もの巨大なパイプが並んでいるのを見たことはありませんか?圧倒的な存在感を発揮しているこのパイプオルガンは、創業70年以上のドイツのオルガン製作所によるもので、開館当初から据え付けられています。

圧倒的な存在感がある、NHKホールのパイプオルガン

パイプの数は全部で7640本! 一番大きなパイプは長さが11メートル、直径45センチもあります。実は、壁面に見えている縦に並ぶパイプや前方に突き出ているパイプは全体のほんの一部で、大部分はオルガン裏側のスペースに設置されています。このうち最も小さいパイプは、長さ1センチと小指の先ほどの大きさです。楽器というより建物と一体化した建造物のようですね。

パイプオルガンは、送風機から送られる風によって音が鳴る、いわば笛に近い楽器です。NHKホールのパイプオルガンは鍵盤が5段もあり、オルガニストは両足で足鍵盤も使って演奏するほか、鍵盤の左右についている音色を調節するためのストップというつまみを操作することもあります。あの荘厳で優雅な音色を奏でるには、全身を使い、さらには体力も必要なのです。

父の代からメンテナンスを担当する望月一郎さん

いつでも美しい音色が奏でられるようメンテナンスを手掛けているのは、オルガンビルダーの望月一郎さんです。父親の廣幸さんは、50年前の開館時にパイプオルガンの設置を担当した日本を代表するオルガンビルダーで、一郎さんもドイツに留学するなどして高い技術を引き継ぎました。NHKホールのパイプオルガンは望月さん親子によって、代々守られてきたのです。

パイプオルガンは定期メンテナンスが大切な楽器で、月に1回、朝から夕方まで1日かけて丁寧に行われます。どのようなメンテナンスが行われるのか、特別にステラnetでご紹介しようと、一郎さんの仕事現場におじゃましました。なかなか見ることができないパイプオルガンの内部や調律のようすをぜひ動画でご覧ください。

【動画】必見!パイプオルガンのメンテナンス 音🎵も楽しんでください

昨年の春から今年の夏にかけては、一郎さん立会いのもと開館以来初めての大規模な改修が行われ、送風機やふいごなどの老朽化した設備を更新したほか、音色の組み合わせを記録するメモリー装置の数も大幅に増えました。

メンテナンスを続けてきた一郎さんに、NHKホールのパイプオルガンへの思いを聞きました。

「パイプオルガンは持ち運ぶ楽器と違い、ホールに来ないと会えません。いつもどっしりと構えて待っていてくれる。私にとって、NHKホールに来ることは、オルガンのコンディションを確認し、声を聞く大切な時間です。そんな一期一会の対話を繰り返しながら、美しく仕上げたパイプオルガンの荘厳な音色、ぜひ聞きにいらしてください」

12月のNHK交響楽団第2000回定期公演で演奏されるマーラー作曲《交響曲第8番「一千人の交響曲」》では、オーケストラの編成に今回ご紹介したNHKホールのパイプオルガンも加わります。

NHKの番組でも放送される予定ですので、ぜひお楽しみください。

NHKホール


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