西軍敗北! 最大の「戦犯」は誰?

見た蔵 センパイ! 今回もボクです! 前回に引き続いて「関ヶ原」ですから! やっぱり戦国大河は「合戦シーン」ですね。迫力たっぷりで大満足でした!
同 門 私は、家康(松本潤)と、三成(中村七之助)、この二人のキャラクターの対比が面白かった。これは今回のレビューのテーマの一つにしよう。
ところで、この合戦の詳細なんだが、前回の「小山評定」同様、信頼できる史料が少なくて、学術的には不明なことが意外に多いんだそうだ。

見た蔵 あんなに有名な合戦なのに? まさか合戦そのものがなかった、なんて説はないでしょうね(笑)。
同 門 その点は大丈夫みたい(笑)。
合戦が当日午前中に決着がついたこと。そして東軍の勝利には、小早川秀秋(嘉島陸)の寝返りの効果が大きかった、ということは間違いないようだ。そういえばキミが疑っていた小西行長(池内万作)は裏切らなかったね。
そういうわけで今回も、ドラマの描写に沿って話を進めるよ。

見た蔵 寝返りといえばもう一人、腹ごしらえ中だから出陣できぬ、と言った西軍の武将がいましたね。合戦の日なんだから、メシは早めに食っとけよ!(笑)
同 門 吉川広家(井上賢嗣)だね。西軍の総大将・毛利輝元(吹越満)の家臣なんだけど、すでに東軍に内通していた。彼の軍勢が居座ったために、後方にいた西軍の軍勢は動きが取れず、参戦できなかったんだ。

見た蔵 なるほど。それにしてもセンパイ、ボクは西軍敗退の最大の「戦犯」は、その毛利輝元だと思っているんですよ。
西軍総大将なんだから、茶々(北川景子)の言うように、秀頼を擁してサッサと関ヶ原に行けばいいのに。三成からも矢のように催促が来てるんだし。
同 門 確かに輝元が秀頼を擁して現場に赴くのは、西軍にとって最善手だ。
家康たちもそれを一番懸念していたよね。

見た蔵 秀頼を連れていけば、東軍の豊臣系武将たちは、主君に刃を向けることになりますから、動揺が広がるでしょう。西軍が優位に立てるのは確実です。
同 門 でも輝元は言うことを聞かない。キミはなぜだと思う?
見た蔵 輝元は茶々と三成が嫌いだからですよ! 前回でも言ったけど(笑)。

同 門 ……(笑)。輝元は二人の要求の正しさは十分理解していると思う。しかし彼らの「上から目線」の要請に従うのが不快だったのは確かだろうね。
見た蔵 茶々は「機を見誤るなよ!」と叱りつけるように言ってました。総大将に向かって、これはさすがに無礼ですね(笑)。輝元が反抗して出陣しないのはわかります。でも最後、敗戦を知った輝元は、三成のしくじりが原因だと、責任転嫁(笑)。

同 門 そもそも輝元はあまりやる気がなかったと思う。この合戦に勝ってもどうせ三成の下に置かれるだろうし。メリットはあまり期待できなかったんじゃないかな。輝元にとってはこの合戦よりも、まずは西日本の覇者になるのが優先だったようだね。現に関ヶ原の直前まで四国や九州の大名といくさをしている。

見た蔵 ドラマにちらっと出てきましたが、輝元も東軍の調略を受けてたんですね! 
同 門 本人も若干迷ってた(笑)。結局動かなかったけど。
見た蔵 東軍が総大将に調略をしかけるなんて、三成らは想像もしてなかったでしょう。気づいていたらもう少し扱いをよくしてたかも(笑)。西軍の危うさはこんなところにも表れてますね~。


経験不足の三成が率いた西軍の「もろさ」

見た蔵 そもそも西軍の「最高責任者」は誰なんですか? 東軍は家康だけど。
同 門 よくわからないよね(笑)。形式上は秀頼。でも幼いから茶々が代理だ。だから秀頼(=茶々)、三成、輝元の三人が共同責任者になるのかな。
見た蔵 その三人の意見が一致しないと物事が決まらないように見えました。ならば輝元は三成や茶々に逆らっても、責任を問われない? それマズくないですか?

同 門 輝元に「命令」できる組織的な決まりがないとすれば、大問題。まして一刻を争う戦時だから、意思決定を司る「最高責任者」や「指揮命令系統」は絶対必要だ。
見た蔵 誰かが責任を負って物事を決めなければ、戦争には勝てませんよね。

同 門 家康は輝元が動く前に、秀忠(森崎ウィン)軍を待たずに戦闘に踏み切った。これは家康の独断だ。しかし「最高責任者」の彼にはその権限があるんだよ。
見た蔵 三成は関ヶ原を「クモの巣」に例えていました。そこに東軍が引っかかるのを見て、「これで勝った」と安心しちゃったみたいです。
同 門 東軍はわざと引っかかって見せたのにね(笑)。もう一つ、三成は西軍内の「寝返り」に対する危機管理ができていなかった。さっきの輝元の件もそうだ。

見た蔵 小早川の裏切りは警戒してたけど、もしそうなったらどうするのか、対策が不十分。彼の裏切りを知ったときには、もう「打つ手なし」だったんですね。
同 門 三成のいくさの経験不足が、そこに顕著に出ちゃったな~。

見た蔵 小早川の寝返りがそれなりの勝因とはいえ、実際に勝負の行方を決めたのは、家康自身の大胆な正面攻撃作戦でした。
同 門 これこそが百戦錬磨の家康ならではのパフォーマンス。西軍に囲まれ、「袋のネズミ」にされた圧倒的不利の中、総大将御自らが躍り出てきたんだから、西軍の面々は動揺するよ(笑)。これがただでさえ団結の緩かった西軍を敗走に追い込んだんだ。
見た蔵 小早川はこの攻撃を目の当たりにして「さすがいくさ巧者よ」と感心して寝返ったんですものね。日和見とはいえ、見るべきところはちゃんと見ている(笑)。


三成の「まやかしの夢を語るな!」に対して家康は……

同 門 今回の大きな見どころの一つが、家康と捕らわれた三成との対決だった。
見た蔵 松本潤と中村七之助の、がっぷり四つの演技はスゴかったですね。でも三成は居直りと罵詈雑言で、ちょっと潔くない印象でしたが……。
同 門 いやいや、家康と三成の複雑な思いが交錯した、大いに「読み解き甲斐」のある名シーンだったよ。順を追って深掘りしてみようよ。

見た蔵 まず家康は、なぜ「いくさなき世」の夢を捨てたのか、何がお前を変えたのか、と三成を責めました。
同 門 しかし三成は、自分は変わっていない、と昂然と言い返した。

見た蔵 ボクはその通りだと思いますよ。三成にしてみれば、変わったのは家康の方です。かつては天下泰平の理想を説いていたのに、今やそれは上っ面だけ。国力にモノを言わせて、世をわがモノにしようと企んでるとしか思えない。
同 門 家康はそう思われても仕方ないか。タヌキぶりがちょっと過ぎたからね(笑)。

見た蔵 続けて三成は、自分にも家康にも、そして誰にでも「戦乱を求むる心」がある。それがある限り「いくさなき世」など成せぬ、と言い放ちます。
同 門 ここがこのシーンの「肝」だ。彼は理想を説きまわっているうちに気づいたんだ。現実は力ある者たちのパワーゲームで動いていて、理想では動かないと。
見た蔵 理想で世が動かないのは、「戦乱を求むる心」のせいということですか?

同 門 うん。そもそも東軍の勝利は、西軍の武将たちの裏切りに負うところが大きい。では彼らは「家康の理想に共感した」から東軍についたのかな? 違うよね?
見た蔵 違いますね。保身というか、私利私欲というか……。
同 門 言葉は悪いけど、「欲得づく」なんだよ。さっき触れた小早川のように家康の戦術に感心して寝返った者もいるけど、所詮は「勝ち馬に乗る」のが目的だろ? 
見た蔵 そうか、そういうところに「戦乱を求むる心」が見え隠れしてるんだ。

同 門 関ヶ原の勝敗を分けたのは、そんな心を持つ者をどれだけ多く味方にできたか、なんだ。家康と三成の理想や、志の優劣の差ではなかった。
つまり、関ヶ原の戦いでは、「いくさなき世」の実現という点で、家康は敗者なんだ。本当の勝者は「戦乱を求むる心」だったんだよ。
見た蔵 そうか、家康は勝つために、それに頼らざるを得なかったんですね。これは家康も認めざるを得ない、キツイ現実だな。

同 門 家康も三成もこの合戦で、平和の理想を自らの手で断ち切ることになった。三成の考えでは、そうさせたのが「戦乱を求むる心」なんだ。思想や立場を問わず、誰をも支配でき、突き動かせる。そんな恐ろしい力を持っている……。
見た蔵 そして、三成最後の発言が飛び出します。これも厳しい言葉だなあ。「まやかしの夢を語るな!」の「捨て台詞」。
ボクには敗者の居直りに聞こえましたが、実際14年後に、大坂の陣という大いくさが起こりますからね。未来を予見したようにも思えます。

同 門 そうだね。これに対して家康は「(まやかしの夢でも)わしはやらねばならぬ」と、激昂する三成に対して、感情に流されることなく、静かな口調で言い切った。私はこれを家康の新たな「決意宣言」と聞いたんだ。
見た蔵 へえ、どういうことでしょう? 

同 門 三成の言葉は、見方を変えると、「戦乱を求むる心」を克服しないかぎり、真の平和は実現しないぞ、というメッセージとも理解できる。
家康は三成の言葉をそう読み替えて、このままでは天下泰平の理想は「まやかしの夢」で終わってしまう、という真理をつかんだと思うんだよ。

見た蔵 なるほど。夢を「まやかし」にしないための、「戦乱を求むる心」との新たな戦いが始まる。その決意を固めたということですね。
同 門 うん。勝利まで十数年かかる、長い闘いになったんだけど。
家康は内心、いつか「いくさなき世」を成し遂げたときに、亡き三成に語りかけようと思ったんじゃないかな。「やはりわれらは同じ星を見ていたのだ」と。

見た蔵 センパイ、ロマンチストだなあ。「超・前向き」な読み解きだ(笑)。
さて次回、家康は幕府を開き、武家政権を確立。平和への歩みが本格化するんですね。

同 門 見た蔵 それではみなさん、またお目にかかりましょう! 次は2週間後です。