「ブギウギ」のヒロイン・スズ子(趣里)のお母ちゃんであり、「はな湯」の大黒柱でもあるツヤさん。スズ子が入団試験を受けるといえば会社まで追いかけて行き、百日咳にかかれば季節外れの桃を探して東奔西走、ストライキで山寺にこもればすかさず差し入れを持って行き……と、常にスズ子を全力応援! まさに、スズ子の心の支えともいうべき存在だ。
さて、そんなツヤさんを演じているのが、俳優の水川あさみさん。まずは、ツヤという人物・役をどう受け止め、どう演じているのか? 水川さんに、じっくり話を聞いた。
血は繋がっていなくても、やっぱり親子!
ツヤは、なんといってもスズ子の人格形成に関わる大切な存在です。エネルギッシュで、パワフルで、何か悪いことがあってもバッとはねのけちゃうような意志の強さがある。そういうエネルギッシュさは、間違いなくスズ子に受け継がれているんだろうなって。2人は血が繋がっているわけじゃない(と、第4週で明らかになる)けど、親子として一緒に過ごしているうち、そういうものって自然と受け継がれていくものだと思うんです。それは意識して演じてきました。

スズ子の背中を押してきたツヤの言葉たち
スズ子とツヤの絆ということでいうと、もうひとつ、ツヤがスズ子に与えた“言葉”はどれも大きいですよね。もちろん、お父ちゃんだって大切な存在には違いないけど、スズ子が何かを決意して、一歩、前に踏み出すときは、やっぱりツヤの言葉が、その背中を押している気がします。もはや励ますとか、背中を押すとか以上の……突き飛ばす、くらいの勢いで(笑)。
・(幼い鈴子に)「この世は義理と人情ででけてんねん」「義理を返すのが人情や」(第1週)
・(芸名を命名)「“笑う門には福来る”……福来スズ子いうのはどないや?」(第2週)
・(ストライキで悩んでいるスズ子に)「自分の信じるようにしたらええ」(第3週)
・(東京に行きたいというスズ子に、最初はしぶったが最終的には、「東京で、思い切り歌って踊ってきはなれ!」(第5週)

懐が大きい、でっかい風呂敷みたいな人
一方、一人の女性としてみた時には、彼女なりに、苦労したこともあったと思うんです。駆け落ちして、他人の子を預かって、自分の子どもは失って……でも、そういうのを苦労と思わせないような元気さで、明るく振る舞っていて。すごくすてきだと思うし、女性として共感する部分でもあります。本当に花田家をすごく愛していて、ものすごく愛にあふれた人。懐が大きい、でっかい風呂敷みたいなイメージです。
お父ちゃん(梅吉さん/柳葉敏郎)にはキツイように見えたりもするようですが(笑)。やっぱりずっと一緒にいるわけで。一緒にいることが、彼女の意地であり、決意であり、覚悟なのかなと思います。だから、あれも愛情の一つ……ツヤなりの愛情表現なんじゃないでしょうか。

スズ子への愛情の底に秘めているもの
ツヤはスズ子に対して本当に深い深い愛情を持っています。人の気持ちって、止めようと思っても止められない、自分では抑え込むことができないものがあると思っているんですけど、ツヤも、それがどんどんあふれてきてしまって、スズ子がかわいくて仕方なくなっていく。
ドラマでは、もう少しあとに描かれることですけど、その部分の葛藤は、すごく大事なツヤの一面だと思っています。ツヤが愛情の底に秘めているもの……。それをしっかりと心に留めて、演じられたらと思っています。

そして、ここからは、水川さん自身についてのお話と、ドラマ撮影の裏話を紹介します!
大阪ことば、ネイティブのはずなのに苦戦中⁉️
──水川さんの朝ドラ出演は、2005〜06年放送の「風のハルカ」でヒロイン・ハルカの幼なじみ役を演じて以来、2本目。そのときも、大阪を舞台にした作品でしたが、水川さん自身、大阪府茨木市の出身。つまり、大阪ことばはバリバリネイティブ! そのあたり、やりやすいのでは?
それが逆なんです。確かに、ベタベタの関西弁なんですけど、ちょっと時代が古いので、言い回しやイントネーションが、今とはけっこう違っていて。実は、私がいちばん直されているかも(苦笑)。それに、私が生まれ育った茨木市は京都にも近いので、そっちにも引っ張られているらしくて、混乱しちゃうんですよ。言葉って、時代や地域で本当が違っているので、本当に難しいです。
でも、こうやって、大阪を舞台にした作品に出られるっていうのは、関西人冥利につきるというか、血が騒ぐというか、関西人でよかったなあって、心底思っています!
「も〜うるさい! あ、私もや!(笑)」
──「はな湯」には、そんな関西出身の俳優さんがたくさん「常連客」として集まってきています。易者役のなだぎ武さんは大阪府堺市、熱々先生こと医者役の妹尾和夫さんは大阪市出身。アホのおっちゃん役の岡部たかしさんと、あん摩のアサ役の楠見薫さんは和歌山県出身。八百屋のキヨさん役の三谷昌登さんは京都市出身。現場は、どんな雰囲気なんでしょうか?
すごくにぎやかですよ〜。みんな、ずーっと喋ってるんです、びっくりするくらい。最初はすごいなあと思ってたんですけど、いつの間にか私も一緒になって喋ってて、「も〜うるさい! あ、私もや!」って自分で自分にツッコミ入れてます(笑)。
それぞれ、役の個性も強いですけど、演じているみなさん本人の個性も強いから、まぶしいし。特にキヨさんがうるさい(笑)。こっちのシーンを撮ってるとき、後ろでガヤガヤしてるっていう演出もあるんですけど、後ろの喋りがうるさすぎて、「うっさいねん」とか言われたりとかして。で、毎回しょぼくれて、帰りの電車で反省してるんだそうです(笑)。本当に楽しくて、息が止まるほど笑わせてもらってます。
銭湯の番台は、私の“コックピット”
──ツヤさんの定位置といえば、「はな湯」の番台。店を切り盛りする女将の貫禄はさすがですが、そもそも水川さんは、銭湯に行ったことはあるんでしょうか?
銭湯は、子どもの頃、母や親戚のおじさんに連れていってもらった記憶があります。もちろん、おうちにお風呂はありましたけど、みんなが集まる場所っていう感じで、癒やしというか、いい憩いの場だったんじゃないかな。
私は、やっぱりコーヒー牛乳とか、フルーツ牛乳が楽しみでした。どちらかというと、子どものときはお風呂よりもそっちが目当てでしたね。でも、「ブギウギ」の時代の銭湯は、私が経験した銭湯とはちょっと違うんだろうな、とは思ってます。もっと生活に身近なもので、だから、毎日通う場所だったんだろうし。そうなると、あまり休みもとれないから、やるほうは大変ですよね。旅行なんかにも簡単にはいけないでしょうし。
「はな湯」の番台、あそこ、居心地いいんですよ〜。最初から、私の“コックピット”として、自分の台本とか小物とか、いろいろ持ち込んで隠してある(笑)。ただ、あそこに入っちゃうと簡単に出ていけないので、ちょっとした休憩のときには、みんなが飲み物とかを持ってきてくれて。実は、世話をやいてもらっているんです(笑)。

出生の秘密も明らかになったうえ、大阪と東京と離れることになった母と娘。今後、ツヤとスズ子との関係に変化はあるのか? これからも目が離せない水川さんの“お母ちゃん”役。ぜひご注目ください♪