笠置シヅ子をモデルとする、戦後を明るく照らしたスター・福来スズ子(花田鈴子/趣里)の物語を描く、連続テレビ小説「ブギウギ」。今回、スズ子が憧れる先輩で、梅丸少女歌劇団(USK)のトップスター・大和礼子を演じる蒼井優に、役への思いや物語の見どころについて話を聞いた。
“朝ドラ”の現場に入ると、特別な気持ちに
「ブギウギ」出演のオファーをいただいたときは、本当にうれしかったです。歌って踊って、元気が出る作品に参加できることは幸運なことだと思います。ただ、出演させていただくかはとても悩みました。母親になり生活が変化している今、周囲の人たちに迷惑をかけたくなかったので。けれど、家族の大きな支えもあり、今回挑戦させていただくことにしました。仕事とプライベート、どっちも大変ではなく、両方楽しいですね。
スズ子を演じる趣里ちゃんは、大好きな女優さんの一人。これまでご一緒したことはありませんでしたが、お話しやすい雰囲気がとても心地よくて。趣里ちゃんが“朝ドラ”のヒロインに決まったことを知ったとき、勝手に喜んでいました(笑)。

今回初めて“朝ドラ”の現場に入りましたが、毎回特別な気持ちになります。ヒロイン・スズ子のことをいとおしく感じるんです。なんでしょうね、この気持ちは。現場では、趣里ちゃんのことを、「大事な一人娘」のような気持ちで応援しています。趣里ちゃんが疲れていそうに見えたら、みんなでモニターに向かって「頑張れ!」と声をかけることも(笑)。“朝ドラ”のヒロインを演じることは本当に大変だと思いますが、体調に気をつけて、最後まで元気に駆け抜けてもらいたいです。
大和と橘のバランスは、演じていて楽しい
私が演じる大和礼子は、USKのトップスターです。ゆえに孤独で、プライドもあるので、なんでも周りに話すことはできなくて…。なかでも、弱みを見せずに、舞台の演出をひとりでやりきろうとする場面は、撮影していても苦しかったですね。
だから、「自分の演出のことばかりだったかもしれないけど、私は誰も辞めさせたくないの。みんなで楽しくやりたい。ここを楽しい場所にしたいの」とUSKのメンバーに本心を打ち明けるシーンは、とても印象に残っています。自分の素直な思いを仲間に明かしたことで、大和も心から楽になったと思います。
そんな大和を温かく見守ってくれているのが同期の橘アオイ(翼和希)です。橘とは、認め合い、信頼し合い、尊敬し合っている仲。大和と橘、2人そろってこそのUSKだなと感じます。この2人のバランスは、演じていて楽しいですね。

「強く、逞しく、泥臭く、艶やかに」
今回、USKの舞台も見どころのひとつです。その撮影シーンは、OSK日本歌劇団の皆さんにたくさん支えていただきました。いろんな角度から撮影を繰り返し行うので、熱量を高く保ち続けるのが大変でしたが、OSKの皆さんが常に盛り上げてくださいました。そのおかげで、USKの標語「強く、逞しく、泥臭く、艶やかに」を体現した、すてきな舞台シーンになったと思います。OSKの皆さんには本当に感謝しかありません。
また、体をどう向けるのか、返事の仕方、号令は誰がかけるのかなど、劇団のルールも丁寧に教えていただきました。私は幼いころから歌劇が好きだったので、ショーを見る側から演じる側になれたことが本当にうれしくて。私の母も、私を宝塚に入れたいって言っていたほど、歌劇が好きなので、今回の出演を喜んでいました。
義理人情や華やかさ、泥臭さも楽しんでいただけたら
第3週で、会社のやり方に失望した大和は、ストライキをついに決行しました。団員の将来を自分一人で背負う覚悟がないとストライキを先導することなんてできません。だから、この一連のシーンは演じていて、苦しくつらかったですね。
と同時に、たくさんの仲間に愛されていることも実感しました。「一度も親に(ショーを)見てもらったことがない」というセリフがあったように、両親からは愛情を注いでもらえなかったけれど、それ以上に仲間から愛されている。その大和の心情を思うと、グッときました。
「ブギウギ」の物語は本当に楽しいです。朝から元気がもらえますし、義理人情や華やかさ、そして泥臭いところも含めて、楽しんで見ていただけると思います。また、スズ子の母・ツヤさん(水川あさみ)のパートでは、脚本を読んで思わず泣いてしまいました。愛情とは何かを教えてくれる、すてきなお母さんですよね。
スズ子をはじめとした登場人物の前向きなエネルギーを、視聴者の皆さんにも共有してもらいたいので、今後の「ブギウギ」も視聴いただけたらうれしいです。
1985年8月17日生まれ、福岡県出身。NHKでの主な出演作に、大河ドラマ「龍馬伝」、「スパイの妻」などに出演。