終わる……終わってしまう……終わりの気配がビンビンしている……!!
どうも。朝ドラ見るるです。
ラスト前週の放送が、終わってしまいました……なんか今週、回想多かったですよね。こういう演出が増えてくると、いよいよ……という感じがしてさみしい気持ちになってしまいます。「らんまん リターンズ」「らんまん シーズン2」「もっと!らんまん」とかなんでもいい。スピンオフでもいい! 放送、延長してほしいよ〜!
……なんて、うだうだわめいてても仕方ないので(泣)、腹を括って今週も振り返っていきましょう!
▼朝ドラ見る家会議
議題その1>>名前をつける──存在を認める

さて、物語も終盤。万太郎の子どもたちも、ずいぶん大きくなりました。
見るる「すごいのは浜辺美波ちゃんだよ、これで23歳って。娘の千歳ちゃんを演じてる遠藤さくらちゃんは、ことし22歳。実年齢はそう変わらないのに、寿恵子さんはちゃんと年取ってるように見えるし、子どもを何人も産んだお母さんに見える」
父さん「娘役と1歳しか違わないのか。それはすごいな! 喋り方も立ち振る舞いも落ち着いているし、つまり、いまの寿恵子さんは、うちの母さんと同い年くらいの設定だろう? 娘が結婚する年齢だものな……」
見るる「そうだよ。そういえば千歳ちゃんの結婚の振袖、寿恵子さんが結婚したとき、タキおばあちゃんに仕立ててもらった着物だったよね! 着物を通してタキさんの思いもちゃんと受け継がれてる感じがして、泣きそうになっちゃった」
そう、槙野家のお姉ちゃん・千歳が、万太郎の3代目助手である虎鉄くんと結婚したのです。
わたし、ここの結婚すっごくうれしくて!!(←突然の語り)
千歳ちゃんって、いろいろ我慢してきた子だと思うんですよ。寿恵子さんが働きに出ているぶん、幼かった弟妹たちの面倒を見なきゃいけなかっただろうし、家の経済状況が苦しかったときのこともよく覚えてるだろうし。
そんな千歳ちゃんの恋が叶った。「私が虎鉄にいのお嫁さんになりたいのに」という一言に、幸せがいっぱい詰まってる。そのことが、本当にうれしい……!!
見るる「千歳ちゃんが虎鉄くんのこと意識し始めたのはいつ? どっちから告ったの? ふたりのお付き合いを両親に報告したとき、どんな感じだったの? ……うわ〜〜ん、知りたいことが多すぎるよ!! スピンオフ求む!」(←まだ言ってる。笑)
父さん「す、すごい勢いだな……。でも、結婚式のシーンは、確かに良かった」
万太郎「千歳、今日までありがとう。ここまで健やかに生きてくれて。千歳が生まれたときは、ただ、生きてくれ、生きてくれゆうて。『千歳』と名付けるだけで精いっぱいじゃった」
千歳「それが、いちばんの贈り物です。名付けてくださって、ありがとう。お父ちゃん」
父さん「このセリフ、グッときたぞ。そういえば、最初の子が亡くなったショックから立ち直らせてくれたのもこの子だった。それを思い出したよ」
見るる「あ〜、なるほど。わたしは、いままで万太郎が見つけ、書き記してきたすべての植物の気持ちを千歳ちゃんが代弁してるみたいだなって思って見てた。名前をつけることって、人間の認識と深く結びついてるでしょ? たとえば日本語には、他の国の言語に比べて“雨”を表す名詞が多いって知ってる?」
父さん「ん? ああ、五月雨とか、霧雨とか、春雨とか、涙雨とか、小ぬか雨とか。いろいろあるよな」
見るる「そうそう。季節とか降り方で違う呼び方するよね。一方、アラビア語では“ラクダ”を表す名詞が多いんだって。年齢や性別によって、細かく分類してるの。『ジャマル』なら8歳以上のオス、生後6か月までは『ハワール』、1年までは『マフルード』って。でも日本では、ラクダはひっくるめて全部“ラクダ”でしかないじゃん」
父さん「く、詳しいな。いつラクダ博士になったんだ? まあいいや、それはつまり、日本は多湿で雨が多いから雨に対する解像度が高くて、アラビア語圏ではラクダが身近だから、ラクダを表わす言葉が多いってことか」
見るる「その通り! 名前をつけるって、あやふやな概念に、みんなが共通して認識できる輪郭を与えること。対象が大切だったり、身近だったりすると、より細かい名前をつけるようになる……。万太郎がしていることって、まさにこれだよね。そこらに生えてる草も“雑草”と一括りにしない。すべてを愛し、名付ける。だから千歳の『名付けてくださってありがとう』は、『愛してくれてありがとう』という意味なんじゃないかなって、わたし思った」
父さん「見るるが、半年間の『らんまん』レビューを経て、成長している(じーん……)」
見るる「ちょっと、姉さんみたいな反応やめてよね! ほんとに、子ども扱いもほどほどにしてよ~」
父さん「だって、うちは万太郎のとこと違って、俺も母さんもしっかり者だからな。見る子といい、見るるといい、親は心配で心配で……」
見るる「う。確かに、千歳ちゃんほどしっかりしているかと言われると……いや、もう、自分で言うかなあ! まったく!」
ちなみに、虎鉄・千歳夫婦の結婚写真を撮ってくれた写真屋さんを演じたのは、お笑いコンビ、タイムマシーン3号の関さん!
これまでの朝ドラでは、朝ドラファミリーの家族写真を撮影するカメラマンといえば、関西芸人の大御所、海原かなた師匠がおなじみ★だったらしいんですが、関さんの写真屋さんもめちゃめちゃ合ってたな〜!
父さん「親心といえば、東京大学の徳永さんだよ」
見るる「え? ごめん、ちょっとつながらないんだけど。でも、今週、ひさしぶりに徳永さんの万葉集愛が感じられたのは、うれしかった。ずっといけすかないドイツ語だったもんね」
(大学への辞表を出して、部屋から去ろうとした万太郎に向かって)
徳永「この雪の消残る時にいざ行かな……」
万太郎「山橘の実の照るも見む」(万太郎、部屋から出ていく…)
「この白い雪が消え残っているうちに、さあ行こう」
「山橘(=ヤブコウジ)の鮮やかな赤い実が、雪の中に照り輝いている姿も見よう」
という意味。大伴家持の歌です。
見るる「雪の中にあっても照り輝く山橘って、みんなで目指していた日本の植物学の発展という大きな夢のことのような気もするし、どれだけ窮屈な時代でも輝き続ける万太郎自身のことでもあるような気がする。西欧諸国に言葉とともに精神性まで奪われて若干やなやつになってしまったと思ってたけど、最後で取り戻してくれて、良かったよ……」
父さん「そこなんだがな、俺は、徳永教授は決して悪い上司ではなかったと思うぞ。何度も、『もうかばえない』『かばいきれない』みたいなこと言ってなかったか?」
(紀州熊野に採集から帰ってきた万太郎に対して)
徳永「言ったはずだ。もうかばえないと」
見るる「あ、ほんとだ。ってことは、徳永さん、これまで万太郎のこと、かばってくれてたってこと……?」
父さん「と、思うぞ。徳永教授は万太郎に雑用だけをやらせていたわけでも、田邊教授のように自分の助手にしようとしていたわけでもないんじゃないか? 大学にいなければ万太郎にできなかったことは多いし、何より金を稼ぐことができたんだ。辞表を出したとき、万太郎が深く頭を下げていたのも、万太郎にとって徳永教授は足を向けて寝られないというか……恩人のひとりだということだと思う」
見るる「そうだったんだ……そんな大事なこと、言われるまで気づかなかった。父さんありがとう……!」
父さん「うむ(やっぱりまだまだ子どもだな、と言いたそうな表情!)」
史実では、徳永教授のモデルと思われる松村教授は、富太郎博士と、確かにあまり仲が良くなかったみたい。富太郎博士の自伝には、そのへんの不仲エピソードがけっこう書かれているんですが……。少なくとも、「らんまん」の徳永教授と万太郎のあいだには、しっかりした信頼関係があったってことだよね。なんて愛のある脚本! 大好きだ!
▼朝ドラ見る家会議
議題その2>>失われるもの、変わるもの、変わらないもの、先の世に残るもの

そして、ついにきたわね……関東大震災。1923年9月1日に起きた巨大地震は、東京を大混乱に陥れました。ちょうど100年の節目、それも9月にこの放送内容、完全に狙ってますよね。ハチク開花の件といい、このドラマ……現実とリンクさせてくるぞ!
ちなみに富太郎博士はこの時期、すでに渋谷に住んでいたそうで、なおかつ膨大な標本は神戸の資産家・池長孟(=永守さんのモデルと思われる方!)が買い取って、神戸に保管されていたとのこと。万太郎一家の被災は、フィクション要素。つまり、あえて、ドラマの中に、このエピソードを入れてきたってことです。
見る子姉さん「今年、関東大震災から100年でしょ。関連本もたくさん出ていて、ちょうど読んでたところだったんだよね。被災の大変さが、これまで以上にリアルに感じられちゃった。そういう人、多いんじゃないかな」
見るる「倒壊した長屋、切なかった。思い出がいっぱい詰まった家だったのに……それに倉木さん一家とか丈之助さんとか、引っ越しちゃったメンバーも大丈夫だったかな? 描かれないだろうけど、心配……」
姉さん「そうだね。火事の被害も大規模だったっていうしね。ああ、そういえば、大畑さん久々の登場だったけど、元火消しの設定、ここで生きてくるのか〜!って思った」
見るる「いや、わたし無駄にヒヤヒヤしちゃった。し、死亡フラグじゃないよね?って……生きててマジよかった!」
姉さん「神田のあたりは市民が協力して火を消したっていうのは史実だよ。こういうときの団結力は、すばらしいね。でも……」
大喜「おととい、2日の夕方。慶應大学に避難してた連中が、大学の武器庫に押し入った。『自警団』とか言い出しやがって…。そんなやつらが、市内のあちこちに湧きだしてる。勝手に関所作り始めて、『略奪から守る』なんて題目で、あいつらが拳銃と刃物振り回してる」
姉さん「まず、大学に武器庫があることにびっくりしたけど。この自警団って、震災のあと、“朝鮮人が井戸に毒を入れた”“暴徒化して日本人を襲いにくる”とかのデマが広がって、多くの朝鮮人や中国人が殺された事件を示唆してるんだよね」
見るる「うん、知ってる。しかも、殺されてしまったのって、朝鮮人に間違われた日本人もだったんでしょ?」
姉さん「そうだよ。もともと政府から睨まれていた社会主義者や活動家もけっこうやられてるし。つまり、集団からあぶれた存在への恐怖や不安だろうね。人間、不安になると攻撃性が増すから……。今年、映画化されて話題になってる『福田村事件』のことも思い出した。ちょうどこの震災の直後、香川県から千葉県の福田村に薬の行商に来ていたグループがいたんだけど、その辺じゃ見かけない顔だし言葉もなまりもあって聞き取りづらい。だから自警団が作った関所に引っかかって、やれ、村を襲いにきた朝鮮人に違いないと思い違いをした村人たちから殺されてしまった、という事件があったのね」
自警団「おい! どこへ行く?」
万太郎「根津の十徳長屋に」
自警団「通してやれ」
そういえば、万太郎が渋谷から、倒壊した自宅に帰る際に通ったあそこが、自警団による関所だったんですね。
調べたところによると、当時は自警団が通行人に「ジュウゴエンゴジュッセン(15円50銭)と言ってみろ」と呼び止めることがあったのだとか。理由は、「朝鮮人は、ガギグケゴ、ザジズゼゾといった濁音の発言が苦手だから」。この問いかけにうまく答えられず、朝鮮人だと見なされた人は、ひどい目にあわされたそうです。
「ネヅのジットクナガヤ」……。万太郎は、土佐の方言も出さず、上手に答えられたから、関所を通れたんですね。
見るる「自警団を組織してたひとたちも、その根っこにあるのは正義感だったりするんだと思うけど、冷静じゃなさすぎるよ」
姉さん「私もそう思う。朝鮮人ってワードこそ直接出なかったけど、その事件を静かに匂わせる、ドラマ製作陣の心意気みたいなものを感じる描写だったね。歴史は繰り返すから……こういう生きすぎた正義感ゆえの残酷な事件って、現代にも通じるし。忘れちゃいけない事件だよね」
福田村事件については、こちらを要チェックです。
→https://www.nhk.or.jp/shutoken/chiba/article/015/51/
見るる「それにしても、地震と火事のおかげで今度は渋谷が賑わうって、なんか皮肉だね。相島さまの笑顔とセリフ、ちょっとしんどかったな」
相島「不謹慎ですが、我々の勝利ですね。こんなことになる前から、渋谷に目をつけていた。フフフ…。今度のことで、旧幕時代の江戸を一新し、東京は紛れもなく、世界の一等国の都市として生まれ変わるんです。我々は賭けに勝ったんです」
見るる「万太郎が大学にいたときもそうだったけど、個人の夢として頑張ってきたことが、大きな政治に絡め取られる嫌さがあるよね」
姉さん「まったくだ。でも、それにおもねらない寿恵子さん万歳。ヤマモモ売却は残念だけど、あっぱれすぎる」
見るる「寿恵子おかみの活躍も、もっと見てたかったけどね~。でも、これで寿恵子さんが買った土地が、いまの練馬区立牧野記念庭園につながるわけだ」
姉さん「万太郎の植物学人生は寿恵子さんなくして語れない。二人三脚、ほんとすごいよ」
火事で多くの標本や原稿が失われ、石板は割れ、街の様子は変わり。だけど、八犬伝や園ちゃんの絵、大事なものはちゃんと残りました。
花も咲いている。万太郎の心は何も変わっていない。寿恵子さんも、しんどいことはあったけど、前を向いている。ふたりの心は“明るい方へ”向いている。
こういう人間の強さ、どれだけ踏まれても懸命に根を張り続ける雑草的というか、生命の力強さに希望を感じます。
さて第26週、「スエコザサ」。
ついに……ついに……ついに!! お、終わる! 終わるの!? 本当に!?
でも、最終週タイトルは、この花だと思ってました。寿恵子さんの名前を冠した、スエコザサ。ハァハァ……一体、どんなラストが待ち受けているんでしょうか。
見届けるぞ。最後まで!!!
というわけで、今回はここまで。今週の会議、終了!
★ここで予告!
再来週(10月2日)から始まる次の朝ドラ「ブギウギ」をもっと楽しく観るための連載、【朝ドラ見るるの『ブギウギ』豆知識】が来週から始まります。その週の見どころやポイントとなる情報を、見るるが全力で(調べて)お届け! もちろん、見るるならではの妄想トークも、ときどき、あるかも……?
第1回配信は、来週9月27日(水)。ドラマを見る前の超基礎知識をお伝えします。
これまでの金曜日ではなく、週の真ん中の水曜日の配信になるので、チェックを忘れずに!
よろしくお願いします。
文責:朝ドラ見るる
「らんまん」の予告動画はこちらから!(毎週土曜更新)
https://www.nhk.jp/p/ranman/ts/G5PRV72JMR/movie/
"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。