植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く、連続テレビ小説「らんまん」。寿恵子を演じる浜辺美波に、物語終盤で印象に残っているエピソードについて話を聞いた。
――長く演じられて、改めて寿恵子という人物をどのように捉えていますか?
何事も楽しめる心を持っているのが、寿恵子の強みだと感じています。子育てや金銭の問題を苦と思わずに、次は何をしたらいいのかと考えを巡らしている時間が、寿恵子は楽しいのだと思います。そんな寿恵子のたくましさは、借金取りと対峙したり、渋谷で待合茶屋を開くために奔走したりと、物語後半で多く発揮されるようになりました。
誰に対しても物怖じしないパワーが寿恵子にはありますよね。演じていても、不思議と力が湧きあがってきます。これは私の想像ですが、みえおばさんのパワフルさが寿恵子にも強く受け継がれていると感じています。料亭「巳佐登」を切り盛りするみえおばさんの姿に、大きな影響を受けたことは間違いないはず。個人的にも、10年ぶりの再会で、みえおばさんが寿恵子を温かく受け入れてくれたシーンは大好きです。

――渋谷で待合茶屋を開くなど、寿恵子もいろんなことに挑戦していますね。
そうですね。渋谷で新しい商いを始めることは、寿恵子にとって大きな冒険だったと思います。寿恵子は、年を重ねてお母さんになっても、心は少女のころから変わらず、若々しく生命力にあふれています。ですので、「好きなことをやるんだ!」というわくわくした感情を、演技でもそのままぶつけています。
ただ、心からやりたいことだからこそ、万太郎さんにその思いを打ち明けるときは緊張もしました。もちろん万太郎さんは反対しないという信頼はありますが、最愛の人に自分の決意を伝えることは、やっぱり緊張するものだと思います。なので、演じる上でも、そういった感覚を少し込めました。
――万太郎との関係について、寿恵子が「孤独でいいんです」と言い切ったシーンもありました。浜辺さんはどう感じましたか?
寿恵子を演じるうえで、「万太郎さんと同じ夢を見たい、そしてその夢を叶えたい」という思いを一つの軸として大切にしています。この思いは万太郎さんと結婚して以降、変わることはありません。ただ、植物研究に没頭するあまり、周りのことが見えなくなる万太郎さんに対して、寿恵子はさみしさを覚えることもありました。

そんな中、第111回の放送で、寿恵子は「結婚したての頃は、万太郎さんが研究しているのをさみしくも思いましたけど。でも、違うんですよ。孤独でいいんです」と綾(佐久間由衣)に語りました。このセリフは、諦めまたは強がりなのか、どんな気持ちが込められているのか、最初解釈に悩みました。考えた結果、心の底から出てきた寿恵子なりの答えという結論にたどりつきました。考え抜いて出した答えというよりは、「そうなんだ。孤独でいいんだ」という思いが、ふっと降りてきたんだと思います。ふとした瞬間に、納得ができたのではないでしょうか。佐久間由衣さんとお話ししたときも「ここのセリフ、すごく好き」とおっしゃっていて。現代の人にも共感していただける言葉のように感じます。
――最後に、メッセージをお願いします!
長田さんが描く世界の中で、寿恵子の人生を歩むことができて感無量です。いつも温かく応援してくださり本当にありがとうございました。皆さんの応援が、生き生きと寿恵子を演じる上での大きな糧になりました。最後まで元気に走り抜けられたことがいちばんの喜びです。
「らんまん」というタイトル通り、最後は笑顔で終わりたいとずっと思っていて、そのことはスタッフさんにもときどきつぶやいていました(笑)。最終週も、槙野一家で力を合わせながら前に進んでいきます。万太郎さん、そして寿恵子がどんなフィナーレを迎えるのか、ぜひ楽しみにしていただけたらうれしいです。
2000年8月29日生まれ、石川県出身。NHKでの主な出演作に、「ピュア! 〜一日アイドル署長の事件簿〜」「タリオ 復讐代行の2人」「オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ」など。