植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く、連続テレビ小説「らんまん」。主人公・万太郎を演じる神木隆之介に、物語終盤で印象に残っているエピソードについて話を聞いた。
――植物図鑑の完成が間近となったとき、「この図鑑は愛されるじゃろうか」と万太郎が不安を口にする様子が描かれました。
そうですね。これまで自分が多くの人に支えられてきたことを思い返し、その思いに応えられる図鑑になっているのか、不安になったのだと思います。図鑑を完成させたいという一心で、これまでただひたすらに走り続けてきましたから。完成間近になってふと周囲を見渡したときに、自分を支えてくれた人物、特に寿恵子が喜んでくれるのかという恐怖が襲ってきたんでしょうね。
――そんな中、万太郎は早川逸馬と再会を果たします。撮影を振り返っていかがですか。

悩める万太郎を助ける人物は、逸馬さんしかいないと思っていましたから、まもさん(宮野真守)が「らんまん」に帰ってきてくださって、すごくうれしかったです。万太郎にとって逸馬さんは、暗闇を提灯で明るく照らして先導する人物。植物研究の道に進む後押しをしてくれた逸馬さんが、自分が信じて歩んできた道は本当に正しいのかと悩む万太郎の前に、再び現れたことは運命的ですよね。とてもすてきなシーンになったと思います。
――渋谷で「待合茶屋」を開くなど、寿恵子も挑戦を続けていきます。
寿恵子にはものすごいパワーがありますよね。ただ「商いをやりたい」と寿恵子に言われたときは複雑でした。これ以上、寿恵子に無理はさせたくないけれど、そうさせているのは万太郎自身で、今の自分にはどうすることもできない…。そんな思いがぐるぐると頭の中を回っていました。正直に言うと「万太郎、稼げよ!」と思いました(笑)。
万太郎を支えながら新たなことにも挑戦している寿恵子は、本当に頼もしいです。そんな寿恵子を見事に演じている浜辺さんには感謝しかありません。浜辺さんのおかげで、寿恵子そして万太郎もより魅力的に映っていると感じます。

――その後、関東大震災が万太郎たちを襲いました。どのような思いで演じましたか。
震災発生時、万太郎は彼の人生そのものでもある標本を守り抜く行動をとりました。それは標本を後世に残すため。当初、万太郎は「逃げえ、寿恵ちゃん!」と家族を逃がそうとしましたが、寿恵子、そして子どもたちも標本を運び出します。万太郎の大切なものを一緒に守りたいという思いでの行動だったと思います。
またこの週は、さまざまな人々の思いがたくさん交差する週でもあります。その中での万太郎の心情や震災に向き合う様子は精一杯出し切りましたので、視聴者の方それぞれに受け取っていただけていたらうれしいです。
――そして25週、寿恵子は万太郎のために土地を購入しました。この場面、寿恵子からどんな思いを受け取りましたか。
「この土地、私が買いました。あなたと、あなたの標本を守るために」という寿恵子のセリフを台本で読んだとき、万太郎と寿恵子は一心同体だと思いました。寿恵子の深い愛情を受け取るとともに、もう寿恵子は万太郎といってもいいくらいだなと感じて(笑)。一番の理解者という言葉では足りないですよね。万太郎よりも万太郎のことを理解している気がします。
――最後に視聴者にメッセージをお願いします。
最終週は、万太郎たち登場人物の集大成の週になりますので、ぜひ最後まで見守っていただけたらうれしいです。これまで「らんまん」をずっと追いかけてきてくださった方々、本当にありがとうございました。そして次の“朝ドラ”「ブギウギ」も絶対見てください!

1993年5月19日生まれ、埼玉都出身。NHKでの出演は、大河ドラマ「義経」「平清盛」「いだてん~東京オリムピック噺~」、「あおきいろ」(声の出演)など。