さよなら8月、そしてこんにちは、9月──。
どうも! 朝ドラ見るるです。
「らんまん」の放送も、残り1か月。あと4週で終わるとは、全然思えないんですが……時間が過ぎるのって、早いものだなあ。
9月になっても暑い日は続きますが、皆さんものんびり頑張りつつ、万太郎たちの冒険を最後まで見届けましょうね。
それじゃ今回も行ってみよう! 朝ドラレビュー、はじまりはじまり!


朝ドラ見る家会議
議題その1>>
タネを撒くように──万太郎式世界平和!?

さて、田邊教授亡き(泣)後、植物学教室のトップに君臨した徳永“教授”に呼ばれ、東京大学で大学助手をすることになった万太郎。
ですが徳永教授は、留学前と少し雰囲気が変わった印象……。
というか、先週のレビューで立てたフラグ、回収されちゃってましたよね!?

姉さん「どうする? 東大戻ったら徳永さんが『Let’s begin the botany lesson.』って言ってたら」
見るる「嫌だ!!!! それはユーシーのセリフだもん!!!!!」

徳永「Meine Herren! Heute widmen wir uns der Botanik.(ドイツ語で、“諸君! 今日も植物学を始めよう”)」

見るる「い、言ってる!! 今日も植物学を始めようって言ってるよ徳永教授……!!」
父さん「見るる、すごいな。ドイツ語のリスニングができるのか?」

見るる「まあ、大学でちょっと勉強してたから、なんとなくわかった……って、あれ?」
父さん「どうしたんだ?」

見るる「いや、英語の“begin”にあたる言葉って、ドイツ語だと“beginnen”のはずなんだよね。でもこの徳永さんのセリフ、動詞が“widmen”でしょ? なんか気になって」
父さん「動詞が“widmen”なのか? ドイツ語がわからない俺にはさっぱりだが……」

ということで、首をひねっている父さんを置いておいて、辞書をペラペラ。すると……。

見るる「うわ! マジか、このドラマ細かすぎ!?」
父さん「どうしたんだ、大きな声を出して」
見るる「いやね、“widmen”って、“始める=begin”とは全然違う意味の言葉なんだよ。直訳すると徳永教授の言葉は……“今日も私たちは植物学にこの身を捧げます”みたいな意味になる」

ドイツ語で“widmen”は、“捧げる”とか“没頭する”、“時間をあてる”的な意味合い。文法的に見ても、田邊教授の英語が“Let’s begin〜(私と一緒にはじめませんか?)”=相手を誘う表現なのに対して、徳永教授のドイツ語は“Wir widmen〜”って、普通の肯定文表現。どっちかっていうと、みんなに宣言してるような印象です。
田邊教授の言う「植物学を始める」とは、全然ニュアンスが違ったんです……!

見るる「“植物学を始めよう”ってすごく田邊教授を表すすてきな決めゼリフ(?)だったから、一瞬徳永教授にそれを取られちゃったのかと思ったけど、そうか。徳永教授がトップになった植物学教室は次のフェーズに入ってきてるっていう表現だったのか……」
父さん「日本文学の専攻で『万葉集』の夕顔の歌が好きだと言っていた過去の徳永さんからは考えられない変化だがな。留学帰りの日本人はみんな外国語を日常会話に織り交ぜるようになるのか?」

見るる「それはわかんないけど(苦笑)。でもあっけなく大窪さんも切られちゃったし、ほんと新時代の感じだよね。去り際の大窪さんの『バ〜カ』には正直萌えたけど、いなくなってほしくなかったなあ……」
父さん「まあ、激動の時代だからな。さまざま移り変わる中、戦争も始まるし」

そう、明治以降の日本を描くとき、避けて通れないのが戦争の話題。
「らんまん」でもいつかくるとは思っていたけど、放送も終盤にしてついに、って感じですよね。

見るる「寿恵子さんの職場(新橋の料亭)の雰囲気とかも、今は戦争に勝ってる状況だから景気も良いし、戦争に対して社会全体が肯定感を持ってる感じだよね。なんかわたしたちくらいの世代だと戦争のことはもちろん直接知らないし、戦後の好景気の社会とかも全く知らない。当時(悲しいことに今も存在するものだけど……)の侵略戦争がよくないことだったという価値観で生きてるから、この時代の雰囲気ってすごく不思議に感じるな」

父さん「徳永教授や細田さんもだが、留学組が軒並み西洋コンプレックスみたいな感じで帰ってきているのも印象的だな。きっと徳永・細田と同じように、田邊にもこのコンプレックスはあったんだろう。ローマ字の推進やバイオリン趣味、女子教育への関心も背景はそれだろうな。“先進国”にバカにされて、遅れを取り返さないといけない気持ちになって、国のためにという価値観で働き、裏返しの自己肯定感を持とうとして戦争に繰り出していく日本……今見るといろいろ、思うところがある」

細田「知らないんだお前は。留学先で日本人が、どれだけ惨めか! 国が力をつけて初めて、俺たちの立場も変わるんだ」

見るる「なんていうか、戦争に勝って他国を侵略して先進国の仲間入り!って方向に進む日本もどうかと思うし、そもそも先進国と後進国を分けて、後進国をバカにするかつての西洋的な価値観もマジでどうかと思う! だからこそ、そんな中、台湾に出張調査しにいくことになった万太郎の振る舞いはすごかったよ。いちおう、日本よりも“遅れた”とされてる国に行くのに相手の国の言葉も文化もバカにしないし、攻撃手段持ってかないし」

いや、実はここだけの話、初登場時の志明さんがちょっと不穏な表情をしていたのでドキッとはしたんですけど……(←疑ってゴメン! 万太郎助けてくれてありがとう!)。

台湾の村で、言葉も違う、文化も異なる人たちと、植物を通じて交流する万太郎。
こうしてみると、まさに“平和のタネ撒き”って感じ。
相手を同じ立場として理解しようとすることの大切さがわかりますよね。人間に対しても植物に対しても同じ姿勢を崩さない万太郎、ほんとすごいよなあ。

まあただ、今回のケースに限って言えば、万太郎が無事に帰ってこれたのはシンプルに運が良かったからって言うのもあるとも思いますよ。
中には日本人に対していい感情を持っていない現地の人もいたと思うし、自衛手段なくてそのまま……みたいなことも、あり得なくはないしね。言葉を奪われるのって、本当に恐ろしいことだし。

……ハッ、というかもしかして、留学先でいじめられて(?)、惨めな思いをした徳永教授、細田さん(それにおそらく田邊教授)が、軒並み外国語を日常会話に織り交ぜるようになったのって、ここと重なってたりする……!?

うわああ怖! ちょっと角度変えるといろんなものが見えてくるじゃん……!!
教科書的に戦争はダメだ!みたいなのじゃなくて、こういうさりげないところで多面的に物事を見せてくれる「らんまん」のこの感じ、めっちゃ好きです。

父さん「日本が台湾に対して高圧的な態度で自分たちの文化を押し付けるのは、中学三年生にいじめられた部活の一年生が、三年生になった時に新しく入ってきた一年生をいじめ返すみたいなものだな。しかし、この激動の時代を乗り越えた今、日本はどの立場にいるんだろうか? 戦後、先進国の仲間入りをして、今でもそんな顔をしているが、果たして、今もそのままの立ち位置でいられているのか……」

……「らんまん」がわかりやすくてさりげない一方、父さんのたとえ、わかりづらくて説教くさいな!? 少しはドラマの温度感を見習ってください!!


議題その2>>名コンビの偉業達成! おめでとう、波多野&野宮さん!

さてさて、万太郎が台湾調査に行っている間に、大学では別のプロジェクトが進行中でした。それは、イチョウの生殖に関する研究。顕微鏡を使った、世界の最先端の“植物解剖学”です。
「顕微鏡の奥の奥、倍率900倍の世界を見る」ということでコンビを組んだ波多野&野宮さんの快挙です。

見る子姉さん「波多野さんと野宮さんとのペア、なじんできたよね。いい組み合わせだ」
見るる「いや〜、推せるよね。万太郎が徳永教授から世知辛いお言葉を聞くシーンのあとに、ふたりがギンナン解剖しながらイチャイチャ(!?)してるシーンあったじゃない? あのほんわか具合というか、好きだからやってます!感、癒やしだった。それですごい発見して世界の最先端に躍り出るんだから」

姉さん「むしろ世界がやっとついてきたって感じじゃない? ふたりが手を組んだのって、時系列的に何年前なんだろう」
見るる「見るるデータベースによるとね……たぶん12〜3年くらいは経ってるはず。ふたりが手を組んだのって確か、園ちゃん(万太郎の最初の子ども)が生まれる前くらいだった気がするし、ちいちゃん(万太郎の次女)の年齢的にもそんなもんじゃない?」

姉さん「そうか、そう考えると長いなあ……そんなに長く波多野さんに色々教えてもらってたら、そりゃ大窪さんにもしっかり『画工兼、植物学者』って言われるわ」
見るる「そうだよ〜。ちなみに史実でも、野宮さんのモデルと思われる平瀬作五郎さんは、イチョウの精子を発見して論文を発表してるし、波多野さんのモデルと思われる池野成一郎さんもソテツの精子を発見してます」
姉さん「お〜、すごい。それにしても徳永さんたちの喜び方、すごかったね」

徳永「うっ…!う…うう…!」
細田「教授…これでドイツを見返してやれますね」
徳永「ああ…。もうあんな惨めな思いは終わりだ。今こそ日本人であることを誇りに思う!」

姉さん「ほんと、どんだけの思いをして帰ってきたんだろうか」
見るる「う〜ん、でもなんか、せっかくの波多野さん野宮さんの頑張りを国に絡めとられてるようで、息苦しい、窮屈な時代だったんだなとも思う」
姉さん「まあねえ。でもほんと、野宮さんは波多野と出会えて良かったし、波多野も野宮さんと出会えて良かったよね。そしてここへきて、寿恵子さんと二人三脚だったとはいえ、大学から離れてずっと孤独に研究していた万太郎にも、助手が現れる、と」

虎鉄「わし、先生の助手になりに来ました。よろしゅうお願いいたします!」

見るる「押しかけ女房ならぬ、押しかけ助手ね! いや寺田心くん、爆速でデカくなってて笑ってしまったよ」
姉さん「いやほんとそれ。ちなみに、役者さんの名前は? なんかすごい見覚えあるんだけど、何かに出てたっけ?」

見るる「任せて。大人バージョンの虎鉄くんを演じるのは、濱田龍臣さん。2010年放送の大河ドラマ『龍馬伝』で、龍馬の幼少期役を演じた俳優さんで〜す!」
姉さん「うわ〜〜〜だから見覚えあったのか! ってか、え? 龍馬伝から13年? 濱田さん、おっきくなったねえ……」

見るる「既視感の正体わかった途端、急に親戚のおばちゃんみたいな目になるのやめて(笑)。心くんに絶妙にお顔も似てるし、すごいよね。子役出身に子役出身を重ねてくるこの感じよ」
姉さん「それで言ったら神木くんも子役出身だからね。朝ドラってだいたい必ず、主人公の後継者となるポジションのキャラが毎回出てくるのよね。ヒロインの娘とか、仕事の後輩とか。『らんまん』ではそれが、虎鉄くんだったんだな。なかなか粋じゃないの……」

見るる「まあ、助手の初仕事がオーギョーチづくりだったのはかわいすぎたけど(笑)。虎鉄くん、長屋に住むっぽいし、人手が増えるのはいいことだ!」
母さん「あ、そうそう、オーギョーチといえばね(ずい)」

と、ここで姉妹の会話に母さん参戦!

見るる「びっくりした。オーギョーチといえば、どしたの?」
母さん「あの調理、何してたのかよくわからなくて気になったんだけど……オーギョーチって、一体どんな植物なの?」

はいはい、見るる調べましたよ!
オーギョーチは、台湾にのみ自生する、クワ科イチジク属の仲間なんだって。
含まれているペクチン(お菓子作りで、ジャムやゼリーを固めるときに使ったりもする成分)の量がすごく多いから、寒天みたいに加熱しなくても固まるっていう珍しい特徴があるんだとか。
オーギョーチのゼリーは台湾屋台なら定番だし、今でも普通に買えるみたいだから、気になった方は要チェックだ! 低カロリーでヘルシーだし、ダイエット中にもいいかも!

姉さん「見るる、なんかこの半年で調査の精度が上がったね? えらいじゃん」
見るる「へへへへそれほどでも」
母さん「オーギョーチ、いいわね。美味しそうだし、買ってみようかしら」
姉さん&見るる「ゼリー、楽しみにしてま〜す」


さて、第23週「ヤマモモ」。

次週、寿恵子さんは、本当に店を始めるのか!? 史実でも、富太郎博士の奥さん・壽衛さんは待合茶屋を経営していたみたいだけど、ドラマではどうなるんだろう?

ていうか、竹綾ですよ、竹綾(竹雄&綾ちゃん夫婦)。東京来たの!? 十徳長屋の前にいたけど……お子、いつの間にできたの!? 見せに来るのが遅いじゃん! え、もしかして引越し? 今は何やってるんだろう……!? き、気になる〜……!!

というわけで、今回はここまで。
今週の会議、終了!

文責:朝ドラ見るる

「らんまん」の予告動画はこちらから!(毎週土曜更新)
https://www.nhk.jp/p/ranman/ts/G5PRV72JMR/movie/

"朝ドラ"を見るのが日課の覆面ライター、朝ドラ見る子の妹にして、ただいまライター修行中! 20代、いわゆるZ世代。若干(かなり!)オタク気質なところあり。
両親(60&70代・シニア夫婦)と姉(30代・本職ライター)と一緒に、朝ドラを見た感想を話し合うのが好き。