関東大震災から100年。マグニチュード7クラスの「首都直下地震」が、今後30年で70%の確率で起こるとされている——。関東大震災を振り返るとともに、巨大地震への備えのヒントとなる番組が、NHKスペシャル「映像記録 関東大震災 帝都壊滅の三日間」。
2夜連続(9月2、3日初回放送)で、関東大震災発生からの3日間を追体験する番組を放送する。当時の記録フィルムを8Kでスキャンし、高精細・カラー化。すると、建物の形や看板、人々の表情が鮮明に浮かび上がった。生存者の証言音声、科学的知見も駆使しながら、100年前の巨大災害を振り返る。
木村春奈チーフ・プロデューサーに、関東大震災を調査して見えてきたこと、最新技術の活用、そして番組の見どころを聞いた。
「関東大震災の全ぼうを改めて知る必要がある」
木村チーフ・プロデューサー
100年前に発生した関東大震災ですが、調査を進めていくと、現代の災害と共通する部分がいくつも浮かび上がりました。ハワイ・マウイ島の山火事で発生した「飛び火火災」、韓国の梨泰院で起こった「群集事故」、災害時SNSなどで出回る「フェイクニュース」と同じようなことが、関東大震災でも起こっていたんです。関東大震災の全ぼうを改めて知る必要があると思いました。そして、リアリティーを持って“自分ごと”として捉えてもらうため、今回高精細・カラー化に取り組みました。

「8K×AI技術」で、高精細・カラー映像に
木村チーフ・プロデューサー
当時の映像を高精細・カラー化するにあたり、2つの技術を活用しています。
1つは、当時の記録フィルムを8K化する技術です。これは、8Kオーバーの高解像度出力を、世界で初めて可能にした「12Kフィルムスキャナー」を使用し、8K化を行っています。この技術の活用によって、高画質での着色が可能になりました。

画像提供:プラサド/イクシード
もう1つの技術が、NHKの放送技術研究所が開発した「カラー化AI」です。基本、AI技術で着色を行っていきますが、AIの作業だけだと、どうしても色が入らない部分もあるので、最終的には手作業で修正しています。当時の町並みに詳しい専門家の方にも考証いただき、さまざまな資料に基づきながら、電車や建物などの色を再現しています。
※カラー化AIについて詳細を知りたい方は、以下の記事をチェック!↓
NHKの「幕末時代劇 AI」がすごい! 大河ドラマ第1作「花の生涯」はこうしてカラー化された!舞台裏を徹底取材! | ステラnet (steranet.jp)
火の手が上がっているのに、笑顔を浮かべる姿も
木村チーフ・プロデューサー
高精細・カラー化によって、映像の撮影場所と時間が特定できるようになりました。ある時間、場所で何が起きていたのかを物語る映像に生まれ変わったのです。また、つぶさに観察すると、映っている人々の表情まで認識できるように。そこには、火の手が上がっているのに、逃げるそぶりを見せず、笑顔を浮かべている姿も。


特にご覧になっていただきたいのは、震災発生から2日目の映像です。1日経過したからかのんびりしている人もいれば、遠くで発生している火災をいち早く発見して、逃げようとしている方も。震災発生時、当時の人々はどんなことを考え、どのような行動を起こしたのか——、高精細・カラー化映像だからこそ判明した事実を番組では紹介しています。

素材提供:毎日映画社
今回の放送は、関東大震災記録映像の決定版という自負があります。実際に災害が発生したとき、何が起きているのかわからないまま、さまざまな危険が迫ってきます。今後起こりうる災害への備えとして、関東大震災を追体験いただけたらと思います。

NHKスペシャル「映像記録 関東大震災 帝都壊滅の三日間」(前・後編)
9月2日(土)午後10時~/9月3日(日)午後9時~ NHK総合(2夜連続放送)
前編(9月2日初回放送)の公式ページはこちら
後編(9月3日初回放送)の公式ページはこちら