大河ドラマ「どうする家康」で於愛の方を演じる広瀬アリス。
側室として、深い愛情と明るさで家康を支える於愛。
今作が大河ドラマ初出演の広瀬に役柄への思いや撮影エピソードなどを聞いた。
――「どうする家康」の出演が決まったときの率直なお気持ちを教えてください。
俳優を始めて10年以上たちますが、大河ドラマへの憧れをずっと持っていました。いつかは大河ドラマに出演したいと思っていたので、「どうする家康」のお話をいただいたときはとてもうれしかったです。
また、脚本が古沢良太さんというのも私の中では大きかったです。セリフのテンポであったり、登場人物の人間味であったり、古沢さんの作品はどれも大好きだったので、「どうする家康」も絶対面白いだろうなと、すごく楽しみにしていました。
その中で於愛の方は、近眼で笛を吹くのが苦手というひと癖あるキャラクターですので、私なりに面白く演じられたらいいなと思いました。
――於愛の方は、どのような人物と捉えながら演じていますか。
最初に台本を読んだときは、その場の空気をパッと明るくする女性だなというのが第一印象でした。私が登場するシーンも、家康が苦しい状況にいることが多いので、家康の心に明かりを灯すような存在なのかなと。時には、於愛がコミカルに登場して、クスッと笑いを届ける場面もあります(笑)。
また、私の地元である静岡市は、於愛ゆかりの地でもあるので、現地に行って彼女に関する史料などを拝見させていただきました。ただ、今回は「どうする家康」で描かれる人物像を大事にしたいと監督からも聞いていたので、史実に捉われず、於愛の明るさを大事に演じられたらと思います。
衣装の色も黄色やオレンジといった明るい色が基調になっているので、そのイメージカラーに沿った明るさを表現していきたいです。
――途中からの撮影参加となりましたが、現場の雰囲気はいかがでしたか。
於愛の登場も途中からですし、私自身も撮影現場に途中からの参加ということで、心境がとても似ているなと思いました。ドキドキという緊張感もありましたけど、楽しみな部分も大きかったです。
実際、撮影前のリハーサルでは、まだ私の中でシーンの想像ができていないところもたくさんあったので、家康役の松本潤さんが一緒に本読み(台本の読み合わせ)をやってくださったんです。
於愛の下手な笛の音が流れている場で本読みをしたのでシュールな感じでしたが(笑)、松本さんが「そのまま自然に演じれば大丈夫だよ」とおっしゃってくださったので、気持ち的にもすごく楽になりました。
――側室として家康を支えていく於愛の方ですが、2人の関係性をどのように捉えていますか。
最初に監督から言われたのが、「於愛の明るさで殿(家康)を救ってほしい」ということ。殿が苦しい状況にいる中で、於愛の素直でまっすぐな愛情が大きな支えになると思うんです。於愛自身も「殿にとって私の支えが必要なんだ」ということをわかっているからこそ、より一層頑張れる強さを持っているんですよね。
それは、殿の弱い部分もちゃんと理解しつつ、そこを責めるのではなく、明るく話しかけることで殿の心を少しでも軽くできればと考えているんだと思います。
そのうえで、殿と於愛を見ると、側室ではあるけど本当の家族のような関係性なのかなと。2人のシーンは、於愛がずっとしゃべっていることが多いんですけど、殿はそれをにっこりと聞いてくださっている。於愛としては、そんな殿を見ていると自然と手を差し伸べたくなる存在なんだと思います。
――戦国時代を生きる女性を演じてみて、どのような印象を持ちましたか。
この時代は強い女性が多いと思います。それはストロングの意味ではなく、自分の考えを曲げず、芯の通った女性像と言いますか。於愛もおっちょこちょいな面はありますけど、“殿を支える”ということを一心に生きようとしています。
2人の子も生まれ、於愛自身もそこでまた強い母でいなければという思いも芽生えたでしょうから、家族を一生懸命支えていく存在でありたいです。
――於愛の方の注目ポイントも含めて、視聴者の方にメッセージをお願いします。
シリアスなシーンが続く中で、於愛が登場することで、重苦しい空気が明るく変わっていく――そんな存在になれたらと思っています。
今までの登場人物とは、ひと味違ったキャラクターですし、於愛のシーンで笑ってほっこりしていただきたいです。そして、殿の心に明かりを灯すすてきな女性を演じますので、ぜひご覧いただけたらうれしいです。
広瀬アリス(ひろせ・ありす)
1994年生まれ、静岡県出身。2008年に俳優デビュー。NHKでは、連続テレビ小説「わろてんか」、正月時代劇「家康、江戸を建てる」などに出演。