植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈の生涯を描く、連続テレビ小説「らんまん」。今回、田邊教授を演じる要潤に、これまでのシーンを振り返って、そして気になる万太郎との関係性について話を聞いた。


――改めて、田邊という人物をどのように捉えていますか?
エリート街道を歩んできた人間だと思います。小さいころから英才教育を受けてきて、挫折することなく、とんとん拍子で、教授にまでのぼりつめたのではないかと想像します。

だからこそプライドが高く、自分にも他人にも厳しく生きてきたのではないでしょうか。英語ができない生徒に対してきつく接するシーンなどからも、田邊の度量の狭さがよくわかりますよね。自分の思い通りになるように、他人をコントロールしようとするんです。そして、万太郎に対しても束縛し始めるようになります。

――最初は、万太郎が東京大学に出入りすることを温かく受け入れますよね。
万太郎との出会いのシーンは、田邊というキャラクターを視聴者の皆さんに一旦受け入れてもらう、ある意味「フェイク」の場面になると思いました。ですので、万太郎を大きく成長させていく人物だと思わせると同時に、クセのある人物だということも匂わせられるように演じました。

その後、万太郎からの「ロシアに自分の標本も送ってほしい」という申し出に、徳永助教授(田中哲司)が反対するなか、田邊は許可します。それは利用価値があるからです。「私と君とは、よく似ている」と口にしてはいますが、万太郎に共鳴したのではなく、あくまでも上から目線なんです。

――そして、万太郎を専属プラントハンターとして雇おうと、「私のものになりなさい」と言い放ちます。
そうですね。このころから才能ある人間を利用してのしあがろうという、田邊教授の本性が見えてきました。けれども、お抱えの植物画工・野宮(亀田佳明)のように、簡単には操ることができない——。その焦りと、自分の力では制御できない才能に対する「怖さ」から出たセリフだったのではないかなと思います。

――ただ、その後ムジナモを発見した万太郎に、「論文を書け、植物画を書け」と進言します。
プラントハンターの申し出を断った万太郎を一度は突き放した田邊ですが、ここで関係の修復を図ろうとしたのだと思います。突き放したままだと、そのままどこかに行ってしまう気がしたのではないでしょうか。個人的には、「お前ならすばらしい論文をかける」という後押しする思いと、「やれるものならやってみろ」というちょっと意地悪な思いが、ちょうど半分入り混じったようなセリフに感じました。

――妻・聡子(中田青渚)との関係性についてはどう捉えていますか?
今のところ、夫婦というよりは、先生と生徒の延長線上のような関係性だと思います。自分の本当の思いを明かすことまではできていないですよね。聡子をシダに例えて、「私はお前の静けさを愛しているんだ」と、彼女への愛を表現するセリフがありましたが、ここでもまだ生徒に教えるような感覚が抜けていないように感じました。ただ、この言葉にうそはないように思います。今後2人の関係性がどのように変化するのか、という点にも注目してもらえたらうれしいです。

――神木さんと共演されていかがですか?
神木さんが8歳のときから知っているのですが、いい意味で印象は全然変わりません。いつも役に真摯に向き合っていて、一緒に演じていると、その彼の思いがビシビシと伝わってくるんです。そんな素直でまっすぐなお芝居がとても好きです。そして何より、誰に対してもフラットに接している姿がすてきで、いつも元気をもらっています。本当に万太郎にピッタリだと思います。

――最後に、メッセージをお願いします!
万太郎と田邊、ふたりとも間違ったことはやってはいないと思います。植物に対して純粋で熱い思いは同等に持っていますから。ふたりの意見どちらもわかるという視聴者の方も多いのではないでしょうか。そんな二人の関係は今後どうなっていくのか…、ぜひ最後まで見ていただきたいです。

要潤(かなめ・じゅん)
1981年2月21日生まれ、香川県出身。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「まんてん」「まんぷく」、大河ドラマ「龍馬伝」「花燃ゆ」「青天を衝け」、「タイムスクープハンター」シリーズなどに出演。