大河ドラマ「どうする家康」で織田信長を演じる岡田准一。
第28回では、信長討伐の兵が本能寺に集結――。
物語は中盤の大きな山場を迎える中、
岡田に、家康と信長の関係や主演・松本潤への思いを聞いた。
――物語は折り返しを迎えましたが、これまでの撮影を振り返っていかがですか。信長の登場シーンは、数日でまとめて撮影することが多かったので、現場に入るたびに変化する家康の姿を見られるのが楽しかったですね。
そこは松本(潤)君のプランニングの中で、家康の成長を表現していると思いますし、段取り通りの芝居になるのではなく、お互いの感情があふれ出すような瞬間を一緒に作ることができたらいいなと思っていました。
瀬名の死から本能寺の変までの間で、視聴者の皆さんが“想定外”と感じていただけるような、何かを超越する芝居ができたらいいなと思っていましたし、それを僕から松本君に託すバトンとして伝えていきたかった部分でもあります。
大河の主演を経験した僕から伝えられるのは、物語が終盤へと進むにつれて、松本君が「これが家康なんだ」と胸を張って言える瞬間を作るのが大事だということ。それは松本君自身で見つけていかなければならないので、信長と家康とのシーンの中で、その時を共有できたらいいなと思いながら演じていましたね。
――家康と信長の関係については、どのように捉えながら演じていましたか。
これまでを振り返ると、2人のシーンでは信長から家康に圧力をかけていることが多かったですよね。ただ僕は、家康は信長が死んだ後にこそ、本当の意味での変化を遂げていく――。その変化のきっかけを与える存在が、瀬名であり、信長であると感じていました。
そのためには、信長が家康の大きな壁になることが大事だなと。僕としては松本君が思う存分演じられるようにサポートしていきたかったですし、信長としても家康の前に立ちはだかる圧倒的な存在という役割を最後まで全うしたいと思いました。
同時に、天下を治める意味では、いずれ天下人となる家康の前任者であることも意識しつつ、信長のやり方には限界があったということも伝えられたらと。
強じんな精神力をもって戦国乱世を生き抜き、競争社会を築いた信長は、200年以上続く徳川幕府の礎を築いた家康とは対極でなければならないですし、信長のやり方がなぜダメだったのかということも家康に残していきたいと思っています。
――信長が目指した世はどのようなものだったと感じていますか。
文化・文明を発展させながら、本来の日ノ本に戻したいという思いだったのではないでしょうか。また、そこには、朝廷が機能しているのであればうまく利用すべきであり、逆に朝廷に邪魔されるのであれば排除するしかないという考えがあったと思います。
さまざまな思惑がうごめく戦国時代、日本のあるべき姿を目指す中で、武家が政治を治め、天皇の役割をしっかり整えることが大事だと考えていたのかなと。
――いよいよ、第28回では本能寺の変が描かれます。視聴者の方にメッセージをお願いします。
本能寺で追い込まれた信長が最後まで戦い抜く姿をイメージされている方もいらっしゃるかもしれませんが、僕としては「信長は家康に何を残せるのか」「家康と信長の関係はどんな形になるのか」ということも表現したいと思っています。これまでの家康と信長の歩みを思い出しながら、ご覧いただけたらうれしいです。

岡田 准一(おかだ・じゅんいち)
1980年生まれ、大阪府出身。1995年V6のメンバーとしてCDデビュー。俳優としても映画やドラマで活躍し、2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」では主人公・黒田官兵衛を好演。NHKでは「大化改新」などに出演。