槙野万太郎(神木隆之介)がついに新種を発見するなど、大きな盛り上がりを見せる連続テレビ小説「らんまん」。万太郎と一緒に新種を発見した、東京大学植物学教室講師の大窪昭三郎を演じる今野浩喜に、役への思いや印象的なシーン、そして共演者とのエピソードを聞いた。


――今野さん演じる大窪は、どんどん存在感を増していますね。
そうなんです。想像していた以上に出番が多かったので、途中から焦って、モデルではないかという人物を調べました(笑)。大窪のモデルと思われるのは、植物学者の大久保三郎さん。万太郎のモデルである牧野富太郎さんと連名で、日本で初めて植物に学名をつけた、植物史に名を遺した人物です。偉大な人だと知り、さらに気が引き締まりました。

――大窪というキャラクターをどう演じられていますか?
どのドラマに出演するときもそうなのですが、役の感情をシーンごとに考えることはあまりありません。自分が役の感情に寄り添うよりも、視聴者の方がその役に対して何か思いを抱くことの方が大事だと思うんです。だから、脚本・演出の方が考えていることをくみ取って、丁寧に演じることを心がけています。台本に「!」があれば大きい声を出すし、「……」があれば間をしっかり取る、といったように忠実に演じています。本当に、役の感情に深く入り込まないので、インタビューを受ければ受けるほど、「俺は変わっているのか…!?」という気持ちにもなります(笑)。

――第15週の放送で、大窪は万太郎に「研究に参加させてくれないか」と訴えますね。
そうですね。当初は、槙野に強く反感を持っていた大窪でしたが、「植物が大好き」という思いのまま、研究にまっすぐ打ち込む槙野の姿に心打たれるものがあったんだと思います。これまで仕事として植物学を行っていた大窪が、「植物を好きになりたい」と思うくらい、槙野は大窪に大きな影響を与えました。ですから、「お前が植物に抱く心を、お前が何を見てどこが好きなのか、傍らにいて知りたい」という大窪のセリフは、彼の本心だと思います。槙野の弟子になりたいくらいの勢いだったのではないでしょうか。今野としては、このシーンで(俳優として)売れてしまうなと思いました(笑)。

――そして、ついに2人は新種を発見します。このシーンを演じられていかがでしたか?
槙野、大窪にとってとても大切な場面でしたので、見せ方をすごく考えて演じました。表情や口調などで、感情が思わずあふれてしまっているように見せられたらなと。役の感情には入り込まないけれど、見せ方は理詰めで考えているんです(笑)。また、「ギリシャのものとは違う、日本だけの種…!」というセリフを、槙野ではなく大窪に言わせるって、なんだか粋だなと感じました。機会があれば、脚本の長田さんに理由を直接伺ってみたいです。

――神木隆之介さんと今回ご一緒されていかがですか?
神木さんは、広い視野で物事を捉えているように感じます。「このシーンはこう撮影する」と言ったことを、演出の方以上に見えている感じがあるんですよね。芸歴28年以上ですよね、さすがだなと思います。また、反応もすごく早くて。もちろん使われていないと思いますが、一度アドリブで、「じぇじぇじぇだな」と僕が言ったら、「クドカン(宮藤官九郎)さんは、良い脚本を描きますね」とすぐに返してくれて。頭の回転も速く、本当にすてきな俳優さんです。

――撮影現場で印象に残っていることはありますか?
神木さんの30歳の誕生日当日、撮影があった植物学教室メンバーでお祝いをしたのですが、その進行役を自分が務めると知って、本番以上に緊張しました(笑)。30歳になるという節目の日ですからね。「槙野、今日5月19日は何の日だ!」と聞いたり、当日撮影のなかった浜辺美波さんのサプライズ登場のきっかけとして、「槙野、お前に来客だ」と言ったり…。重大なポジションを任されたことにドキドキしましたが、みんなでお祝いすることができてうれしかったですね。

今野浩喜(こんの・ひろき)
1978年12月12日生まれ。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「まんぷく」「エール」、大河ドラマ「真田丸」など。