家康が招いた「瀬名の覚醒」ってなんだ?

見た花:お邪魔しま~す!……センパイ、「どうする家康」第23回見ました!  
同 門:ああ、いらっしゃい。前回はラストにダサい発言をして「500731」!
見た花:「ごめんなさい」?……やっぱりダサいかも(笑)
同 門:冒頭から、どーもん、スイマセーン!(涙)

見た花:さて今回は、次回への「仕掛け」のような内容でしたね。
同 門:そうだね、タイトルは「瀬名、覚醒」。そのためか、女性の登場人物のエピソードが続いた。瀬名(有村架純)の「覚醒」にいたるまでのプロセスが、けっこう丁寧に描かれていた。
見た花:「覚醒」が一体何なのか、これはまだ謎ですが……。
同 門:その瀬名と武田の間者・千代(古川琴音)の「会見」がまた出てきた。「織田か武田か」をめぐる女の戦い、いわば心理戦が展開された。

見た花:「武田と徳川の和議」を持ち出したものの、千代は一蹴。しかも「(苦しいのは徳川。だから)岡崎と信康(細田佳央太)さまを救えるのはあなたさまだけ」と反撃されて、瀬名は完全に押されてましたよね。
同 門:一方の家康(松本潤)は側室のお葉(北香那)に肩を揉ませたり、台所でイチジクをつまんだりして、相変わらず精彩がない(笑)。
見た花:久々に登場したお葉でしたが、特徴的なカクカクした動きですぐわかりました。というか、まだお勤めしていたんですね(笑)

同 門:その台所で於愛おあい(広瀬アリス)と出会った。これが家康の人生に「吉」を呼び込みそうだね。
見た花:於愛はド近眼で家康と万千代(板垣李光人)を取り違えたり、ド下手な笛を家康の前で披露して、反省の色もないという。

同 門:そう、なんともざっかけないキャラ。広瀬アリスがイイ感じに演じていたね。広瀬アリスは女子のファンも多いんだって?
見た花:わたしも好きですよ。素顔もあんな感じなんじゃないかな~。知りませんけど(笑)。

同 門:於愛は家康の側室となり、やがて徳川幕府二代将軍の秀忠を産むんだよ。
見た花:重要な役どころですね。瀬名のお眼鏡にかなって、よかった(笑)。『源氏物語』の「女子トーク」も盛り上がっていました。
同 門:瀬名は自分の後を託すような面持ちで、於愛に「殿をよろしく頼みます…」と言ってたね。

見た花:「これで安心じゃ」って、なになに? 家康と距離を置くってこと?
同 門:そんな雰囲気も漂う発言。息子の信康は長篠の合戦以来、心を病んでるしね。

見た花:その原因が家康以下、徳川の家臣団。信長(岡田准一)の思いのままにされ、いくさ続きです。さらに信康は、鷹狩りの途中に通りがかった僧侶を斬り殺すという暴挙に。
同 門:これは完全に「乱心」だよね。通説では信康は暴虐な人物とされているんだが、その根拠のひとつとされる、有名なエピソードだね。

見た花: 信康は瀬名に訴えてました。「みなが強くなれというから(強くなろうとした)……(そして、強くなったら)私は私でなくなりました。いつまで戦えばよいのですか」。痛々しいセリフです。
同 門:すると瀬名は、かねてから「恐れ多いはかりごと」を胸に秘めていた。信康さえよければ、それを実行すると。なんだか自分の命をかけている風情だった。

見た花:家康と乱心の息子を守りたいのかな。信長による徳川締め付けがさらに厳しくなってきましたからね。
同 門:信長の家臣になったとはいいうものの、徳川家臣団には「アンチ信長」の気風は十分に残ってるしね。

見た花:その代表格が信康ですよね。とにかく信長に頭が上がらない父親に強烈な不満を抱いています。
同 門:時には面とむかって父親を「情けない!」「臆病で卑怯者じゃ!」となじるのも厭わない。「信長様の犬」とまで言っていた。これは凄い(笑)。 

見た花:それに対し、ビシッとした態度が取れない家康は、ちょっと情けない。
同 門:重大なのは、信康が合戦で、総大将の家康の指示に従わずに独自行動を取ったこと。言うことを聞かないのは立派な軍律違反。普通なら戦線から外されて、さらに懲罰房入りだよ。
見た花:他の家臣にもしめしがつかない。家康は息子を甘やかしすぎでは?
同 門:「瀬名の覚醒」の背景には、家康の子育て事情も起因しているようだね。


「脇の甘さ」が招く徳川家の悲劇とは?

同 門:今回は信長に対する徳川家の「脇の甘さ」が浮き彫りになったね。
見た花:家康も瀬名も、岡崎の情報が五徳(久保史緒里)経由で信長にダダ漏れということにまったく気づいていませんね。
同 門:瀬名と千代との会見の内容もね。これは大変……、反逆罪ものだよ。

見た花:しかし信長は直接瀬名を標的にせず、まずはからめ手から攻めてきました。
同 門:家康の伯父・水野信元(寺島進)の処刑だね。変わり身が早くて、インチキ臭い、小ずるいキャラを寺島進が見事に演じていた。私は信元が大好きで、彼が登場するシーンは注目していた(笑)。

見た花:いち早く、今川から織田に寝返った人ですよね。え~、センパイはそういうキャラも好きなんですか?
同 門:(汗)実に、人間らしく、味わいのあるキャラだと思わないか。彼は武田方にこっそり兵糧を回していた。きっとそれで小金を稼いでたんだろう。

見た花:まあ微罪なんでしょうけど、信長はあえて家康に伯父の成敗を命令する。さすがにこれは過酷な要求と言えますよね?
同 門しかも甥に伯父を始末させるわけだからね。これは残酷。信長はかつて織田家中で彼より人望があった弟の信勝を殺してるからね。身内を殺すことにはそんなに抵抗感がないんだろう。
見た花:信元の申し開きには思わず笑っちゃいました。「(兵糧の横流しなんて)みんなやっとるわ、なぜオレだけなんじゃ」って。
同 門:そういうセコイ言い逃れ方がイイんだよ。いかにも信元らしくて(笑)。

見た花:でも、すごいのは、信長の頭の中を見事に言い当てていたことですね!
同 門:「オレはお前への見せしめなんじゃ……。信長のやりそうなことよ。(武田と内通している者がいるが)、そいつは、家康、オマエじゃなければオマエの身内のだれかじゃ!……信長はすべてお見通しじゃ」。
見た花:センパイ、引用がいつもより長いですね。さすが信元推し(笑)。悪知恵が回る人だけに、その勘はめっちゃ鋭いですね!
同 門:そんな信元も、「懸け」を間違えて悲劇を招いてしまった。


なごみキャラ七之助という「仕掛け」

見た花:信元は自害すると見せかけ、久松長家(リリー・フランキー)を人質に逃亡を企てる。しかし、七之助(岡部大)に討ち取られることに。
同 門:七之助というのは想定外だったのか、背後からズバッっと……。ここでも「懸け」が外れるという悲劇。
見た花:わたしの大好きな七之助にこんなことさせるなんて! 七之助がかわいそすぎます! 石川数正(松重豊)がやればいいじゃないですか!!

同 門:まぁ、落ち着こうか(笑)。どうやら、七之助が信元を討ったのは史実のようだよ。それに数正が討っても、当たり前すぎておもしろくないだろう(笑)。ドラマ的な葛藤が生まれない。
見た花:七之助は、もう半泣きな顔でやってましたよ。
同 門:信康にとって七之助は守り役だし、忠義の人。信康の信頼の厚い部下に、信元を殺させたことになるね。それをさせた家康への怒りがますます増幅することになる。

見た花:でもワタシ、納得できません! 七之助はせっかく「なごみ」キャラで通してきたのに……(涙)。
同 門 このドラマが彼をこれまで「なごみ」キャラにしておいたのは、今回の放送でキミみたいな人を動揺させるための「仕掛け」なんだよ。
見た花:やられました。。。これで、ますます家康と信康の溝が深くなりますね?

同 門:「武田への内通」だけど、鋭いのは信元だけじゃない。もう一人、石川数正がいる。瀬名に疑いをかけてたね。お人よしの家康は一笑に付してたけど。
見た花:築山殿の周辺の付き人を全て入れ替えるというあやしさ。でも、家康としては、幼なじみの愛妻がそんなことするはずはないと? 
同 門:でも、瀬名は千代に「大事な話ができる上の者を連れて参れ」と求める。これも大胆というか、のんきというか……。

見た花:千代は滅敬めっけいと名乗る唐人医師を連れてきました。これがなんと! 武田の重臣・穴山信君のぶただ(田辺誠一)の変装じゃないですか(笑)。
同 門:すごいVIPのお出ましだ。しかし、この情報も信長には筒抜けだろう。
見た花:瀬名の「恐れ多いはかりごと」は、どうなるのでしょうか?

同 門:次回のタイトルは「築山に集え!」。集まって何するのかな(笑)。
見た花:急転直下の展開になるのでしょうか。次回を見るの怖い、けど気になる。
同 門:今回はここまで。次回もまたみなさんに、11014!
見た花:センパイ、もういい加減にしてください(笑)。
(第24回の大胆レビューに続く)

過去の記事>>
【第1シーズン】
第1回:「どうする家康」が「鎌倉殿の13人」から引き継いだものってなんだ!?
第2回:「どうする家康」が“居心地の悪い”ドラマに感じるのはなんで⁉
第3回:家康を諭した於大の方のメッセージが深い!その真意ってなんだ?
第4回:お市の方より今川氏真がおもしろい⁉ってなんだ?
第5回:脚本家・古沢良太が描く織田信長VS.織田信長ってなんだ!?
第6回:立役者は半蔵(山田孝之)ではなく氏真(溝端淳平)ってなんだ!?
第7回:家康より“家”をつくるのがうまかった空誓上人ってなんだ?
第8回:三河一向一揆と本多正信の行動は“複雑系”ってなんだ!?
9回:正信が家康を「大タワケ!」と言い切る理由ってなんだ?
10回:家康の側室問題は続く!?大河で描かれるセクシュアリティーってなんだ?
第11回:家康の「格付け」仲介手数料****万? 風林火山な信玄ってなんだ⁉
第12回:氏真の「悲哀」と義元の「理想」ってなんだ?
13回:浅井長政(大貫勇輔)の信長(岡田准一)に対する本音ってなんだ?
14回:ついに家康(松本潤)覚醒!「信長の野望」で変身した長政と家康ってなんだ?
【第2シーズン】
第1回:夏目広次(甲本雅裕)と家康(松本潤)による「仕掛け」ってなんだ!? 
2回:瀬名(有村架純)のモヤモヤ感と家康(松本潤)の危機ってなんだ?
第3回:瀬名(有村架純)と千代(古川琴音)の背後にひそむ勝頼(眞栄田郷敦)ってなんだ?
第4回:衣裳も家康(松本潤)への脅しも演出!? 信長(岡田准一)の真の狙いってなんだ?
第5回:「長篠の合戦」を見届けた信長(岡田准一)と家康(松本潤)の心中ってなんだ?