大河ドラマ「どうする家康」で、松平信康を演じる細田佳央太。
幼いころから徳川家のために強く、ひたむきに生きてきた信康だが、
長篠の戦い以降、彼の心に大きな変化が!?
細田に信康役への思いや今後の注目ポイントを聞いた。


――「どうする家康」の出演が決まったときの率直なお気持ちを教えてください。
いちばんは「大河ドラマに出演できる」という喜びが大きかったです。やはり、大河ドラマに出演することは1つの目標でしたし。それがこんなにも早く実現するとは思ってもいなかったので、それを果たすことができてすごくうれしかったです。


――信康の人物像をどのように捉えて演じていますか。
信康を演じるにあたって、さまざまな資料を読ませていただきましたが、「信康は問題児だった」など悪い印象で書かれていることが多くて。ただ、衣装合わせのときに、プロデューサーさんや監督からは、「いろいろな情報があると思うけれど、脚本に書かれている信康を大切にしてほしい」と言われました。

実際に脚本を読むと、信康はとにかくやさしい男。やさしすぎるゆえに弱い一面も持っています。家康の息子だからといって生まれつき優秀なわけではなく、「どうする? どうする?」と悩み、家臣や周囲の人々に支えられながら成長していった家康と同様、信康もまだまだ未熟な部分が多いです。

なので、生きるか死ぬかの戦国時代において、若くして岡崎城主として歩んでいく定めを背負わされた点においては、つらいことのほうが多かったかもしれません。

そんな中でも信康は家族思いで、父・家康、母・瀬名のことは本当に尊敬していたと思います。ただ、それ以上にやさしさゆえの弱さみたいなものが際立っているのが、信康の人間性だと捉えて演じています。


――信康を演じるうえで、意識していることはありますか。
自分自身のことで言うと、今回の大河ドラマの出演によって、これからの俳優人生が変わるのではないかと実感するくらい大事なシーンがたくさんあります。だからこそ、信康のやさしさや弱さに寄り添いつつ、それを表現することで信康の魅力を伝えたいと思いました。

ところが、実際に撮影に入ってみると初めての経験ばかりで、そのような考えも忘れるくらい余裕がなくなってしまい……。自分が思い描いていたことを意識しながら現場に立つ難しさを日々実感しています。

信康の人間性という面では、僕も似ているところがあるなと感じていて。僕自身、周囲の人には「つらいときや悩んでいるときは、もっと人に頼っていいんだよ」と言いつつも、いざ自分がその立場になると、悩みや苦しみを人には言えないんですよね。そして結局、一人で背負い過ぎて空回りしてしまう。

信康にもそんな一面があるので共感もできましたし、自然体で寄り添うことができたかなと。なので、信康の心の弱さを表現するうえでは、ありのままさらけ出すことを心がけています。


――信康と母・瀬名の親子関係が丁寧に描かれていますが、信康にとって瀬名はどのような存在だと感じていますか。
母上の存在は、信康にとって心のより所だと思います。父上からは武の部分や、城主としてあるべき姿を教えてもらったとすれば、母上からは人のやさしさなど心の面で教わることがたくさんあったのではないかと。

それこそ、若いうちから城主となって不安なことのほうが多かっただろうけれど、母上が気持ちを引き締めてくれたり、心の安定を保ってくれたりしていたのかもしれないですね。

物語の中でも、信康がいちばん最初に「しんどい」と心のうちを語るのも母上ですからね。まさに心の支えといいますか、本当の自分をさらけ出せる存在だったのではないかと思います。


――一方、父・家康は信康にとってどのような存在だと感じていますか。
間違いなくいちばん尊敬していた人だと思います。家臣団より歴は短いですけれど、父上のことを誰よりも近くで見てきましたし、逆に父上からも深い愛情を持って育ててもらっていたはずです。

いわゆる反抗期といいますか、父親にぶつかっていく場面も時折ありますが、信康がしっかり自分の意志を言える点では、城主としての振る舞いや考えを常に父上から学んでいたのではないでしょうか。


――家康役の松本潤さんと共演した印象はいかがですか。
あんなにも最前線でキャスト・スタッフみんなを引っ張ってくださる方はいないなと思うくらい、チームをけん引しています。撮影やお芝居においては、現場がどうすればうまく回るかを常に考えてくださっていますし、僕らが言いづらいことでも「このシーンはどのようにすればいいの」と自分のことではないのに監督に聞いてくださったり。

撮影に入ったときから、松本さんは「ドンっと来い!」という感じで構えてくださっていたので、いつも全身全霊で甘えさせていただいています。


――瀬名役の有村架純さんと共演した印象はいかがですか。
有村さんと共演して、お芝居のスキル的なことはもちろん、演じる役との向き合い方をぜひ聞いてみたいなと思いましたね。作品や演じる役が決まってから、いつもどのように心の準備をされているのかなど。

実際、撮影中に僕が信康を演じるうえで悩んでいたとき、有村さんにすごく励ましていただいたんです。そのときは、どんなことをしていても信康のことばかり考えていて、「ゲームをしたり、カラオケに行ったりしても、信康のことが頭にちらついて集中できないんです」と有村さんに話したら、「私もそういう時期があったよ」と寄り添ってくださり、とても気持ちが楽になりました。

松本さんや有村さんとの撮影現場でのやり取りは、まさに信康と父上・母上との関係に近いものがあったので、僕にとってはものすごく幸せな時間でした。


――長篠の戦いを終えて、今後の信康の注目ポイントを教えてください。
設楽原での織田軍の戦い方を目の当たりにして、信康は本当に衝撃を受けたと思います。正々堂々という言葉を重んじる中で勝つことが全てだと思っていた16歳の若き青年にとっては、壮絶すぎる現実だったのかもしれません。

父上ですら信長の戦い方やその強さに驚がくしていましたから、まだ心が完全にでき上がっていない信康にはそれ以上の衝撃だったと思います。

人のやさしさや弱さを知っているからこそ、今後信康がどのように変化していくのか。父上や母上との親子関係はもちろん、五徳との夫婦関係もどう変わっていくのか。そして、信康がどのような道を選択していくのか。ぜひ注目していただけたらうれしいです。

細田佳央太(ほそだ・かなた)
2001年生まれ、東京出身。4歳から俳優活動を始める。NHKでは「やけに弁の立つ弁護士が学校でほえる」などに出演。