植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く、連続テレビ小説「らんまん」。寿恵子の母・まつを演じる牧瀬里穂に、寿恵子への思いと今後の見どころについて聞いた。


――まつは、寿恵子には自立した人生を送ってほしいと願っているようですね。
まつは元柳橋の有名芸者で、上級武士に見初められて妾となった過去から、娘の寿恵子には、男性に頼らず、地に足をつけて生きてほしいと願っています。『八犬伝』の世界に夢中な寿恵子をいさめるのも、現実はファンタジーのようにおもしろい出来事ばかり起きる世界ではないことを知ってほしいからなんです。

―― 妹のみえ(宮澤エマ)は、寿恵子を玉のこしに乗せたいようですが――?
みえは、まつとは正反対な考え方ではありますが、それぞれが寿恵子に幸せになってほしいと思っています。なので、みえとは言い合いをするシーンが多いのですが、感謝もしています。みえのおかげで、フィクションの世界にふけっていた寿恵子が、新しい世界へと踏み出すことができましたから。小さいころ、苦労を共にしながら生きてきた二人の間には、深い絆があるんだと思います。みえを演じる宮澤さんは、まつや寿恵子をぐいぐいと引っ張ってくださるので、とても心強いです。

―― 一方、寿恵子を優しく見守る、まつの姿も印象的です。
なかでも、万太郎さんが長らく「白梅堂」に来店しなくなったことを不安に思う寿恵子に、「自分の機嫌は自分で取ること」とさとすシーンは印象に残っていますね。男性に左右される人生を過ごす女性が多かった当時において、大事な考え方だったと思います。まつさんの強さが表れた場面でもありました。私もつい不安なことを考えてしまうときがあるのですが、自分が楽しいと思えることを探す、まつさんのポジティブな姿勢は見習いたいです。

――第45話では、初対面の万太郎に、「まっすぐ走って、お嬢様を迎えに来ます」と言われました。
植物学を始めるという大きな夢を持ち、常に明るい万太郎さんのことを印象良く思っていると同時に、寿恵子の結婚相手としては、「悪い人ではないんだけれど、どうなんだろう…」というのが、まつさんの率直な思いだと感じます(笑)。
ただ一方で、寿恵子が万太郎さんに対して好意を抱く気持ちには共感しているんですよね。夢に向かって、まっすぐ純粋に突き進む万太郎さんのキラキラとした姿は、誰もが自然と応援したい気持ちになるのではないでしょうか。

万太郎さんを演じる神木隆之介さんは、本当に万太郎さんそのもの。落ち着いていながらも、現場を明るく引っ張ってくださる、すてきな方です。
浜辺美波さんとは、今回初めての共演となりますが、常に「かわいいな」と思いながら演じています(笑)。なにより浜辺さんが、寿恵子を可憐に演じてくださるので、娘を思う母の気持ちが自然とわきあがってきます。

――池内万作さん演じる文太さんの存在も気になります……。
そうですね。口数が少ない、職人気質の文太さんとは、柳橋時代からの付き合いの長い関係ですし、お互いに尊敬しあっている仲。今後、二人の関係に変化があるのかどうか――、私も気になるところです。

――最後に、ファンの皆さんにメッセージをお願いします!
まつさんとしては、寿恵子には、地に足をつけて幸せになってほしいという思いがいちばんです。寿恵子と万太郎さんがどんな決断をくだすのか、私も楽しみにしています。個人的には、毎週のサブタイトルにもなっている植物が、どのように物語と絡み合ってくるのか、興味を持って見ています。いろんな見方ができる作品でもありますので、これからの「らんまん」も楽しんで見ていただけたらうれしいです。

牧瀬里穂(まきせ・りほ)
1971年12月17日生まれ、福岡県出身。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「まんぷく」、大河ドラマ「北条時宗」、「閻魔堂沙羅の推理奇譚」「再生の町」など。