正室の「超大事なお仕事」ってなんだ?

大河見た花(以下 見た花):センパイ! 今週もおじゃましま~す!
同門センパイ(以下 同門):ああキミか。よろしくね……(先週は結構押されてたから、気を引き締めないと)。
見た花:先週はずいぶん好き勝手にしゃべってしまって、どーもん、すみません!
同 門:(早速、きたか…)それは私のネタだろう(笑)。自由に語るのが楽しいし、ドラマ鑑賞のだいご味でもあるしね。

見た花:じゃ早速、「どうする家康」第19回の話をしましょうよ♪
同 門:(汗)そ、そうだね。

見た花:前回は、家康(松本潤)とお万(松井玲奈)の生々しいシーンにドキっとしました。小さな子どもがいる家はチャンネルをかえたかも?(笑)。
同 門:そうだね。今回は、やや生々しいレビューになるかもしれないけど、勘弁してね(笑)。
見た花:大丈夫です! わたしもオトナ・・・ですから(笑)。
同 門:そ、そっか(汗)。お万が家康の子をみごもって、瀬名(有村架純)は怒り狂っていたね。

見た花:しかも、お万は子どもともども浜松城から追放。そこまでやるの? ひどくないですか。
同 門:正室にはそういう権限があるんだよ。正室には大きな仕事が2つある。領主の妻として跡継ぎを産むこと。もう1つは、城で働く女性たちの統括と業務管理だね。
見た花:それは、超大事なお仕事ですね!

同 門:側室選びから、侍女や乳母の任免、領主の子どもの認知まで、その権限は幅広く、それらについては領主も口出しできないんだよ。現代の企業で言えば、女子従業員担当の人事部長、いや重役かな。

見た花:そうなんですか。瀬名が怒ったのは単に嫉妬だけじゃないんですね?
同 門:侍女に手を出すなら、まずは事前に正室に申請しなさい、ということ。

見た花:浮気するときに、事前に相談する人なんていないんじゃ?
同 門:(滝汗)そこで、人事担当重役の瀬名としては「聞いていませんよ!」と、家康の越権行為をとがめたわけだ。

見た花:第10回「側室をどうする!」では、於大の方(松嶋奈々子)と瀬名が、側室を嬉々として選んでました。正室の了解があればいいんですね?
同 門:正室のあずかり知らぬところで、男子がどんどん産まれたら、跡目争いの原因になりかねない。まして母親が身分の低い者だったら……。

見た花:その一族を巻き込んだ下剋上にもなりかねない。つまり、正室は「一族存続のリスク管理」も担っていたということですね!
同 門:ちなみに、お万の子は男子だったけど、家康の子として認知されなかったんだ。でも、徳川家の重臣に預けられ、ちゃんと育てられた。後に、家康の次男として認知され、豊臣秀吉(ムロツヨシ)と大名の結城氏の養子となった。その名は「秀康」。
見た花:えっ! 秀吉の「秀」と家康の「康」の字をもらったんですね。結構ランクの高い武将になったんですね?
同 門:一流の人格で武術にも優れた、たいへん立派な武将だったそうだよ。


瀬名=築山殿の「モヤモヤ感」ってなんだ?

見た花:ところで、今作の瀬名の描き方って、なんか不思議な感じがします。モヤモヤするというか……。これも例の「小さな仕掛け」なんでしょうか。
同 門:キミは、どう思う?

見た花:まず、どうして築山御殿に住むのか疑問です。本来なら、岡崎城で夫の家康と寝食を共にすべきでは? これじゃ、まるで「別居」じゃないですか。
同 門:なるほど。実は、瀬名=築山殿については、同時代の資料がほとんど残されていない。だから彼女がなぜ築山御殿に住んだのか、本当のところはよく分からないんだよ。他の戦国時代の女性についてもそうなんだが……。

見た花:ドラマで瀬名は「民の声を聞きたいから、築山御殿を開放する」みたいに言ってました。でも農民や商人が気安く領主の夫人に会いに来るんでしょうか? 
同 門:気安くは、会えないだろうね。何か、事情があるようだと?

見た花:民が来るとしても、ここで瀬名が寝泊まりする必要はないですよね。岡崎城にいて、必要なときに築山御殿に「出勤」すればいいじゃないですか(笑)。
同 門:家康が浜松城に移るときも、一緒に行かなかったよね。

見た花:センパイ……、瀬名は家康を「本当に愛してる」のかなって。
同 門:(汗)なんだか急に乙女チックだね。
見た花:だって、駿府で結婚したときはラブラブだったじゃないですか?
同 門:キミはまだ独身だからわからないと思うけど、結婚して何年か経てば、愛情表現の仕方だって変わるもんだ。

見た花:なんか、実感こもってます??
同 門:(滝汗)いやいや。その変わりかたも夫婦によって千差万別。だから端から見るだけじゃ、愛してるかどうかなんてわからないよ、きっと。

見た花:きっと?? でも人質交換で岡崎に来た後、瀬名は家康の子どもを産んでいませんよね。「夫婦」として過ごしていなかったんじゃないですか?
同 門:確かに。正室が2人しか産んでいないというのは、当時としてはちょっと少ない感じもするね。

見た花:流産や死産もあったのかもしれないけど……。
同 門:家康と瀬名の岡崎時代については諸説あるようだけど、私が説得力を感じた説が2つある。

見た花:第1の説は……?
同 門:瀬名はもともと今川の重臣の娘。時を経て、家康は今川と敵対関係になったから、そういう女性を妻にしているのはちょっと居心地が悪い。なので、家康は信長(岡田准一)の目をはばかった。跡継ぎの男子もいるから、もう瀬名を離縁してもよかったのだが、それではあまりに忍びないので、正室としての立場を残して別居したというもの。
見た花:家康の優しさが感じられるような気もします。
では、第2の説は……?

同 門:これは政局とプライドがらみ。瀬名と家康が結婚したのは、今川全盛期。家康は、義元から優れた資質を認められ、結婚によって晴れて今川一族となった。でも、所詮は元人質。家のかくからいうと、瀬名の方が家康よりはるかに上だったんだ。松平なんて、今川にしてみれば三河の田舎侍にすぎない。
見た花:「婿にしてあげた」、という感じだったんでしょうかね。

同 門:ところが桶狭間の合戦以後、その立場は逆転する。凋落の一途をたどる今川にとって、徳川は裏切り者の仇敵。しかも信長と組んで、日の出の勢い。しかし、瀬名から見れば、成り上がりの田舎大名にすぎない。そんな男の妻の座に甘んじているのは、今川重臣の娘としてはプライドが許さない。だから自ら別居を申し出たのだという説。
見た花:家挌の差ですか……。家康の嫡男の信康(細田佳央太)と、信長の娘で信康に嫁いだ五徳(久保史緒里)の関係を思い出しました。

同 門:五徳は幼いころから信長の娘であることを鼻にかけていたね、「父上に言いつけますよ」なんて。自分の父親のほうが嫁ぎ先よりはるかに偉いんだと。

見た花:浜松行きを五徳に勧められたときの瀬名の反応は、やや唐突で(笑)。「そなたはわたくしが邪魔か?」だって、あれも「小さな仕掛け」? それとも本音? センパイの家ではどうですか?
同 門:(滝汗)いやあ、どうなんだろう。よくわかんないなあ。
見た花:歯切れが悪い。ひょっとして、忖度?
同 門:本家!どーもん、スイマセーン(泣)
見た花:父親の権威をかさに着る五徳は、今後のドラマ展開のカギを握るような予感がします。徳川家の獅子身中の虫になりそうですね。

同 門:ところで、家康には何人子どもがいたか知ってる?
見た花:兄の見た蔵が、16人だといってたような……。
同 門:それは、きっと私の受け売りだろう(笑)。風聞によると家康は、いわゆる男女の営みを大いに好んで、夜寝るときは必ず女性を侍らせていたという。いくさの最中にも女性を戦陣に同行させたそうだ。

見た花:「英雄色を好む」ですか?
同 門:それも「手当たり次第」だったとか(苦笑)。ただ、性病に関しては注意していて、「商売系」の女性は避けていたらしい。
見た花:節操がないのか、用心深いのか、よくわからない~つ! もし本当なら、子どもはもっといたかもしれませんね。正室の認知がおりなかっただけで(笑)。

同 門:家康は晩年、「健康のために、夜の営みは控えたほうがよいかのう」とか家臣に漏らしていたという。
見た花:瀬名が家康と別居したのは、実はそのあたりが理由だったり?


瀬名が招く家康の危機ってなんだ?

同 門:今回は、家康と瀬名の関係性を考えてみたら、やや「生々しい話」になってしまったね。
見た花:でも、瀬名の実像は不明なことばかりだと、よくわかりました。史実がわからない分、脚本の古沢良太さんは自由に書けるから、ドラマの意外な展開に期待できそうですね?

同 門:それは前向きな卓見。今作では、史実の隙をついて、さまざま冒険を繰り返しているね。今回は瀬名について色々勝手なことを話したけど、時代考証の小和田哲男先生は、「歴史的に絶対ありえない」こと以外はOKにしているそうだから、通説よりドラマの方が「本当」かもしれないよ(笑)。

見た花:そういえば、ドラマの中で家臣団が、徳川家の存亡の機に、「お手付きなんて!」と家康に怒っていましたね。
同 門:徳川軍は、三方ヶ原合戦での大敗のダメージから回復できていないから、三河の領土は次から次へ武田に侵略されている。信玄亡き後にもかかわらず、武田軍の攻撃は激しかったんだ。そんな状況のなかだから、当然だよ。

見た花:次回予告は、「岡崎クーデター」
徳川は外から攻められるだけでなく、内側から崩壊する恐れが出てきそう?
同 門:武田軍は調略により内通者を作り上げ、敵を内側から潰すというのは、信玄以来の常套手段なんだ。これは未然に、しかもギリギリのタイミングで防げたが、本当に徳川は危なかったらしい。しかも通説だと、このクーデターには瀬名が一枚噛んでいたとされる……。
見た花:えっ、そうなんですか? なぜ、瀬名が……?
同 門:その辺をどう描くのか、そこが次回の最大の見どころかもしれないね。

見た花:ドキドキしてきちゃった。センパイ、次週もよろしくお願いします!
同 門:はーい、よろしくね。(というか、私がついていけるのか 汗)。
(第20回の大胆レビューにつづく)

過去の記事>>
【第1シーズン】
第1回:「どうする家康」が「鎌倉殿の13人」から引き継いだものってなんだ!?
第2回:「どうする家康」が“居心地の悪い”ドラマに感じるのはなんで⁉
第3回:家康を諭した於大の方のメッセージが深い!その真意ってなんだ?
第4回:お市の方より今川氏真がおもしろい⁉ってなんだ?
第5回:脚本家・古沢良太が描く織田信長VS.織田信長ってなんだ!?
第6回:立役者は半蔵(山田孝之)ではなく氏真(溝端淳平)ってなんだ!?
第7回:家康より“家”をつくるのがうまかった空誓上人ってなんだ?
第8回:三河一向一揆と本多正信の行動は“複雑系”ってなんだ!?
9回:正信が家康を「大タワケ!」と言い切る理由ってなんだ?
10回:家康の側室問題は続く!?大河で描かれるセクシュアリティーってなんだ?
第11回:家康の「格付け」仲介手数料****万? 風林火山な信玄ってなんだ⁉
第12回:氏真の「悲哀」と義元の「理想」ってなんだ?
13回:浅井長政(大貫勇輔)の信長(岡田准一)に対する本音ってなんだ?
14回:ついに家康(松本潤)覚醒!「信長の野望」で変身した長政と家康ってなんだ?
【第2シーズン】
第1回:夏目広次(甲本雅裕)と家康(松本潤)による「仕掛け」ってなんだ!?