植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く、連続テレビ小説「らんまん」。酒造りに魅了される万太郎の姉・綾を演じる佐久間由衣に、役への思いや万太郎、竹雄との関係性について話を聞いた。


――「らんまん」に出演が決まった時のお気持ちをお聞かせください。

胸がいっぱいになりました。「ひよっこ」(2017年)で、時子というすてきな役を演じさせていただいたことは、私にとって大きな糧となりました。また“朝ドラ”に携わらせていただけることができたら、今までの経験以上の役割を担えたらと思っていたので、自分の目標がひとつかなったようでした。

――今作の台本をお読みになっていかがでしたか?

脚本の長田さんが書かれるト書き(セリフ以外の、動きや心情などを示す文章)は、役者さんの想像をかきたてるものであふれていて、すごくすてきな脚本だなとまず感じました。そして、今作の出演をきっかけに、コンクリートの隙間や小道に生えている雑草をはじめ、日常にあふれる命の大切さ、そして誰もが何らかの役割を担って生きていることを改めて考えさせられました。

――演じる綾の人物像を、どのように捉えていますか?

長田さんからは、「綾は太陽に向かって伸びている植物のような人」だと伺いました。太陽にぐんぐんと向かっていくような、前向きさと明るさをもっている人です。ただ第4週で、万太郎と綾はきょうだいではなく、いとこだとタキさん(松坂慶子)から明かされました。そんな複雑な境遇を抱えているキャラクターでもあります。明るい性格ながら、抱えているものが多い綾のような人物を演じることは、私にとって初めての挑戦。難しくもありますが、楽しみながら演じています。

実は撮影が始まる前、高知の土地を直接感じたくて一人で訪れました。実際に行ってみたら、たくましい人たちがたくさん。自分らしく生きるために、自分の思いをちゃんと出す素直さ、いさぎよさを感じたんです。そんな高知の人たちの強さを感じたうえで、綾という役について考えていきました。物語序盤は、自分の思いを素直に言えない綾ですが、心の中には熱い思いを秘めているんです。そんな中、自由民権運動と出会って、秘めていた激しさがあらわになってくる――。当時の情勢に、綾がたくましくぶつかった瞬間だと思います。

そして第24回の放送で、綾は峰屋の手代衆や蔵人、分家の人たちの前で、「峰屋を私に任してほしい」とうったえます。女性だから酒造りの仕事はできないという当時の考えをくつがえした、大きな転換点となりました。綾の長年の熱い思いが実を結んだ瞬間で、私にとっても大切な場面となりました。

――万太郎を、神木隆之介さんが生き生きと演じていられますね。

そうですね。植物学者の牧野富太郎さんをモデルとした主人公・万太郎を神木さんが演じると最初聞いたとき、より見る人の心に響くになる作品になると思いました。神木さんは、本当に万太郎そっくりなんです。好きなことをする時間を大切にしている気がします。少年の心を常に持ち続けている方なんだと思います。万太郎同様、好きなものに対する集中力や体力は、とても尊敬します。

そんな万太郎と綾を、厳しくも優しく見守るタキさんを演じる松坂慶子さんはすごくチャーミングな方です。タキさんは怒るシーンが多いのですが、常に笑顔で現場を和ましてくださっています。皆を笑顔に明るくしてくださる存在です。

――竹雄に対しては、綾はどんな気持ちだと思いますか?

綾は、竹雄の思いに気づいてはいると思うんですよね。長く一緒にいて何かを感じている部分はきっとあると思いますから。ただ、今は大切な家族の一人という存在なんだと思います。

竹雄を演じる志尊くんは、ワンちゃんみたいだなって思います(笑)。瞳が綺麗で澄んでいる志尊くんを竹雄という役を通してみたときに、なぜかワンちゃんみたいに見えてくるんですよね。
志尊くんはよく周りを見ていて、例えばカメラのアングルが分からなくなってしまったとき、「今はこっちから撮っているから、こう動けば大丈夫だよ」と声をかけてくださったりと、いろいろと教えてくれるんです。本当に頼もしい存在です。

竹雄と万太郎との3人のシーンは、いとおしいです。それぞれ個性はバラバラですけれど、一生懸命前に進む姿には台本を読む段階から感動していました。ぜひ3人の関係性、行く末にも注目していただきたいです。

これから綾は、峰屋の酒造りにしっかりと向き合っていきます。今後も、当時のしがらみやルールに対して立ち向かうといった、万太郎の冒険とはまた違う挑戦をしていきますので、ぜひ、今後の「らんまん」も楽しみにしていただけたらと思います。

佐久間由衣(さくま・ゆい)
1995年3月10日生まれ、神奈川県出身。NHKでの主な出演作に、連続テレビ小説「ひよっこ」、「オリバーな犬、 (Gosh!!) このヤロウ」「ひきこもり先生」など。