植物学者・槙野万太郎(神木隆之介)と、その妻・寿恵子(浜辺美波)の波乱万丈な生涯を描く、連続テレビ小説「らんまん」。自由民権運動の壮士で、政治結社「声明社」のリーダー・早川逸馬を演じるのは宮野真守だ。万太郎に大きな影響を与える逸馬の魅力について聞いた。
――“朝ドラ”出演のオファーを受けていかがでしたか。
すごく驚きました。万太郎に自由の思想を植え付ける早川逸馬をぜひ演じてほしいという熱いメッセージを制作サイドからいただき、とてもうれしく思うと同時に、絶対に僕がやりたい!と思い、オファーを受けさせていただきました。
早川逸馬は、自由民権運動を先導していく人物。お話をいただいた後、当時のことをいろいろ調べました。そのなかで、当時の政治体制にフラストレーションを抱える人々を導く、エネルギーとなる存在が必要だったのだと感じました。
また、逸馬の演説シーンのト書き(セリフ以外の、動きや心情などを示す文章)に、「ロックスターのように」と書いてありまして。自分はコンサートの活動もしている人間なので、できることはいろいろあると思いましたね。
――撮影に入るにあたって、準備されたことはありますか。
いちばんは、土佐ことばですね。僕は、事前にいただいた音資料を、とにかく楽譜のように書いて、音の上がり下がりを細かく聞きながら、覚えるようにしています。特に演説のシーンでは、一人でずっと土佐ことばを話すので、最初はなかなか大変でしたね。
――早川逸馬はどんな人物だと捉えていますか。
ドラマの役割でいうと、逸馬は万太郎に大事な影響を与える役どころ。ですので、信念を持って本気で生きる逸馬の姿を見せられればと。
また、演説シーンでは民衆の心をつかむため、派手な動きや言い回しをする逸馬ですが、その一方で、すごく人をよく見ている人物でもあります。人の本質を見抜く、賢い人物。だから、万太郎と相対したときも、彼のまっすぐな純粋さをすぐに見出し、強いシンパシーを感じたのだと思います。
――万太郎が逸馬の演説に異議を唱えるという、とても印象的な出会いをしますね。
そうですね。「雑草は役立たずではない」という万太郎のことばは的を射ているし、それ以上に面白いことを言う奴だと感じたんだと思います。自分にはない万太郎の発想に、逸馬は興味を抱いていきます。また逸馬も賢いので、万太郎の言葉をうまく自由を主張する演説に結びつけ、聴衆をさらに惹きつけていく。それぞれ影響を受ける、今後の二人にとっても大切な場面だったと思います。
――神木隆之介さんと共演されていかがでしたか?

“朝ドラ”に参加することは初めてだったので、リハーサルだけの日がある事も知り、初日はものすごく緊張しました。ドキドキしながら現場に入ったら、遠くの方から神木君が「まもさーん!」って走ってきて。天使が向こうから走ってきてくれたようで(笑)、本当にうれしかったです。その後も、気負いなく全力で演じることができたのは、神木くんはじめ、皆さんが温かく迎え入れてくれたおかげです。
神木くんは、誰よりも明るいんですよ。その明るさが現場をすてきな空気にしてくれて。撮影後、連絡先も交換して「撮影大変なのに、いつも現場を盛り上げていてすごい!」と伝えたら、神木くんから「現場が楽しい方がいいですよね!」と。僕もいつもそう思っているので、共感しあえてうれしかったですね。今回、本当に濃密な時間を過ごさせていただきました。
――早川逸馬の見どころを教えてください!
逸馬の出演シーンはとにかくアツいです! これまでとはまた違った空気感を持つシーンとなっているのではないでしょうか。僕は、社会が大きく変わろうとする幕末~明治の時代が好きなんです。この時代の人たちが持つ熱量って輝いていますよね。逸馬は、「性別年齢関係なく、だれもが平等だ」とうったえていますが、それは現代にも通ずる考え方です。この現状をどうにかしたいと、命がけでもがく逸馬が、僕は大好きです。
当時は、そういったことを主張するのも困難で、生きていくこと自体大変だったと思いますが、社会をどうにか変えようとする人々の姿に、僕はグッとこみ上げるものがありました。ぜひ、逸馬に注目してもらえたらうれしいです。
1983年6月8日生まれ、埼玉県出身。声優・俳優・歌手。2001年に海外ドラマ「私ケイトリン」の吹き替えで声優デビュー。以降、劇場アニメ「DEATH NOTE」や「機動戦士ガンダム00」などで主演を務め、映画『ファンタスティック・ビースト』シリーズなどで吹き替えも行っている。NHKでは、「おげんさんといっしょ」などに出演。