“徳川家康”誕生の裏に「格付け」仲介手数料****万円!?
大河見た蔵(以下 見た蔵):センパイ~、第11回見ました! 今回は正統派の大河ドラマの作りでしたね!
同門センパイ(以下 同門):家康(松本潤)の叙位・任官から、武田信玄(阿部寛)との面会、瀬名(有村架純)の親友・田鶴(関水渚)の悲劇まで、いろんなエピソードがうまく織り込まれていたね。
見た蔵:さらに、家康お決まりの「ボケ」まで入って。おかずがたっぷりの盛り合わせ弁当みたい(笑)。でもボクの予想は外れて残念……。
同 門:キミの予想はちょっと先を行き過ぎていたね。まずは今川を潰せ、というのが信玄の「要請」、というよりは、ほとんど「命令」だった。
見た蔵:今川潰しは信長(岡田准一)も同じ意見だったんですね。
同 門:まずは順を追って振り返ろう。家康は徳川の姓を得て、晴れて「従五位下三河守」の叙位・任官を受けた。これで一人前の戦国武将になったんだ。
見た蔵:センパイ、そもそも「従五位下三河守」って何ですか?
同 門:これは朝廷から与えられるもので、叙位された「従五位下」は朝廷内のランキングで、勅許が下りるいちばん下のランク。任官の「三河守」は役職だね。今でいえば三河の国の知事というところかな。ところで叙位というのは本来、朝廷への功労に対して与えられるものなんだが……。
見た蔵:そうでもなさそうでしたね(笑)。登譽上人(里見浩太朗)に協力してもらって、「源氏の末流」だという系図を無理やり作ってましたから。これは、「捏造」かな(笑)。この源氏の末流って、源頼朝の子孫ってことですか?
同 門:いやいや、もっと古い。平安時代の初めからあるんだよ。そもそも「源」という姓は、皇室の生まれだけど、天皇にならないことにして、臣下となった皇族に与えられたものなんだよ。
見た蔵:ああ、『源氏物語』の光源氏みたいな存在なんですね。ということは、源頼朝はその子孫ということですか?
同 門:頼朝をはじめ、武家の源氏が本当にそういう血筋かどうか、誰にも分からないんだよ。自分たちでそう主張してるだけだからね(笑)。
要するに「高貴な生まれ」のアピールだな。家康の動機も同じで、源氏の末流を名乗ることで、自分たちの「格付けアップ」をしたかったんだろう。
見た蔵:だからお坊さんとグルになって家系図を作るんですね、なるほど。
同 門:まして平安時代から戦国時代まで何百年も経っているんだから、源氏の系譜に連なる人はものすごくたくさんいただろうし、誰が源氏の末流かなんてどうでもいい話だと思うんだけどね~。
見た蔵:そうですよね。子ども・孫・ひ孫・玄孫……、とどんどん増えますしね(笑)。石を投げたら源氏の末流に当たるかも。
同 門:もしかしたら、キミも私も源氏の末流かもしれないよ(笑)。
見た蔵:系図も怪しいけど、おカネも必要なんですね!
同 門 発令するのは朝廷だから、そっち方面に顔が効く高位の公家にワイロとして払うんだろうね。つまり、「仲介手数料」(笑)。
見た蔵:今の金額ではどれくらいなんでしょうね?
同 門:戦国期では1貫が現在の10万円程度らしい。任官にまつわる舞台裏は、遠藤珠紀先生のコラムを読むとよくわかるよ!
▼#12 徳川三河守家康に「源氏の末流じゃ!」▲
見た蔵:「格付け」のために、約1000万円ですか! ボルなあ~。
同 門:でも瀬名が言ってたように、その出費で領民の信頼を得られて、敵対勢力といくさをしなくて済むなら、安い買い物かもしれないね!
家康のボケっぷりとビビりっぷりが素敵すぎる?
見た蔵:今回は、家康のボケぶりも楽しめました!
同 門:以前、信長に鷹狩に誘われて、それ用の装束で行ったら、三河の反逆者狩りだったので、今回は具足つけて行ったら、「何だオマエ、その恰好は」と怒られた(笑)。
見た蔵:もう一つは会見に現れない信玄を臆病なネコになぞらえて、ふざけていたら突然本人が現れてドッキリ(笑)。
同 門:その話は後でやろう。ボケはもう一つあったよ。秀吉(ムロツヨシ)に、市(北川景子)が嫁入りしたと教えられるシーン。秀吉に「一度くらいしておけばよかったですね! へへへッ」と言われて、じくじたる思いで立ちすくむ。それを瀬名に突っ込まれて、オタオタする場面だ。
見た蔵:ボケる家康を演じる潤クンの芝居にも磨きがかかって素敵。そういう演技を見るのも楽しみになってきました。きっと、センパイの奥様もお喜びでしょう?
同 門:確かに、大喜びだった。でも、なんでわかるの?
見た蔵:まあ、なんとなく(笑)。(真相は前回を参照)。
同 門:市の縁談は信長の命令で、相手は近江の武将、浅井長政(大貫勇輔)。政略結婚だったんだけど、夫婦仲はとても良かったそうだ。そして3人の女子を産む。その長女が、後に秀吉の側室となる茶々(淀君)だ。
見た蔵:確か、秀吉も市を好きだったんですよね。その娘を側室にするのか……。なんか好感持てないな~。
同 門:信長と同盟を組んでいた浅井長政も、やがて敵対することになり、最後は討ち死に。市と娘たちは助けられて、市は柴田勝家(吉原光夫)と再婚させられる。
見た蔵:さらに、勝家も市が好きだったんですよね? よかったじゃないですか。
同 門:いやそうでもないみたい。市は長政が忘れられず、勝家に指一本触れさせなかったという言い伝えがあるよ。
見た蔵:……センパイ! あんまり先の話はやめてくださいよ。ネタバレです!
同 門:どーもん、スミマセン! ついウンチク語りの悪い癖が出て……。
見た蔵:笑(ホント、前回、奥様の言ってたとおり)
同 門:山の中での武田信玄の登場は圧巻。さすが阿部寛、風格があるというか、威圧感がハンパない! まさに「動かざること山の如し」だ。
見た蔵:「にゃーお、にゃーお、武田信玄だにゃーお」と信玄をおちょくっている家康たちの前に突然現れ、「ネコは嫌いではない……ハハハ」って、怖っ!
同 門:さらには、瀬名へのお土産に栗をくれたりしてね(笑)。
見た蔵:家康たちの会話は全部筒抜けだったってこと? それも怖っ!。
同 門:信玄は丸腰だったけど、しっかり、木の上から配下の者たちに家康たちを包囲させていた。抜かりはないよね。要求は、「今川を攻め、領地を分け合おう」。家康はビビりっぷりったら、否も応もできず。
見た蔵:きっと、奥様はその時の潤クンの表情も、見逃してないはずです!
同 門:潤クン??
田鶴と瀬名の篤い友情と「椿姫」ってなんだ?
見た蔵:言うが早いか、信玄は今川の本拠地の駿府を瞬殺で陥落させましたね。まさに、「
同 門:信玄のプレッシャーに耐えきれず、家康は引間城を攻め落すことになった。その城主が、田鶴の夫の飯尾連龍(渡部豪太)。彼は今川方だけど、いくさを避けるために家康と今川の和解を図ろうとしていたんだ。
見た蔵:それは今川氏真(溝端淳平)から見れば裏切り行為。それを氏真に知らせたのが田鶴なんですね。連龍は氏真に誅殺されてしまいました。
同 門:夫を売っても構わないくらい、今川に忠誠を誓っていたんだね。
見た蔵:夫に代わって引間城を守ると決断。演じた関水渚の女武将姿はカッコよかったな~。ファンになりました。
同 門:笑(……またか)。家康と瀬名の必死の説得にも関わらず、田鶴は少ない手勢を率いて徹底抗戦。そして、壮絶な討ち死にを選んだ。それは戦国武将の「美学」でもある。だから彼女は「烈女」として、その後も長く語り継がれたんだ。
見た蔵:「雪の寒さの中であろうと、独りぼっちであろうと、(椿の)凛と咲く姿に憧れるからじゃ……」。この、田鶴のセリフは泣かせましたね。
同 門:「椿姫」という別称の由来は、番組最後の紀行潤礼「どうする家康ツアーズ」で紹介されていた。その死を悼んだ瀬名が、100本余りの椿を植えて、塚を建てたという逸話にちなんでいる。
見た蔵:ヴェルディのオペラ『椿姫』かと思いました(笑)
同 門:おいっ、キミまでボケてどうする?
「独りぼっちであろうと……」彼女の生きる姿勢をうかがわせる、胸を打つ言葉。友情よりも、あえて信念を貫くんだね。失われた平和な駿府の追憶と、そして捨てざるを得ない瀬名との篤い友情……。
見た蔵:いくさが起きると、ホントろくなことがないですね。
同 門:田鶴にとって、今川義元(野村萬斎)が築いた平和を壊したのは信長であり、裏切った家康だったんだね。
見た蔵:駿府が陥落して、氏真はどうなったのかと思ったら、、、
次回のタイトルはずばり、「氏真」!
同 門:さて、ここでクイズです!
前にも言ったけど、氏真はこの後、江戸時代まで生き延びるんだけど、どうやって今回の難局を打開するのでしょうか。
見た蔵:もう、逃げ場はないですよね……?
ここは家康が今川義元の恩に免じて、信玄に詫びを入れて助けるんじゃないですか? いったん頭を丸めて、僧にするとか。
同 門:なるほど、出家すれば、さすがの信玄も氏真を殺せないか。後で還俗する手もあるしな。では、次回を楽しみに待つとしよう!
(第12回、大胆レビューにつづく)
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第1回:「どうする家康」が「鎌倉殿の13人」から引き継いだものってなんだ!?
第2回:「どうする家康」が“居心地の悪い”ドラマに感じるのはなんで⁉
第3回:家康を諭した於大の方のメッセージが深い!その真意ってなんだ?
第4回:お市の方より今川氏真がおもしろい⁉ってなんだ?
第5回:脚本家・古沢良太が描く織田信長VS.織田信長ってなんだ!?
第6回:立役者は半蔵(山田孝之)ではなく氏真(溝端淳平)ってなんだ!?
第7回:家康より“家”をつくるのがうまかった空誓上人ってなんだ?
第8回:三河一向一揆と本多正信の行動は“複雑系”ってなんだ!?
第9回:正信が家康を「大タワケ!」と言い切る理由ってなんだ?
第10回:家康の側室問題は続く!?大河で描かれるセクシュアリティーってなんだ?