「側室をどうする!」はまだまだ終わらない?
大河見た蔵(以下 見た蔵):センパイ~、第10回の放送見ました! 今回も、いろいろビックリさせてくれましたね。
同門センパイ(以下 同門):君が心配していた側室問題は、セクシュアリティーが織り込まれて、驚きの展開が描かれたね。
見た蔵:於大の方(松嶋菜々子)はともかく、瀬名(有村架純)が率先して側室選びに参加したのも驚きでしたけど。
同 門:……(笑)。その2人のお墨付きで、お葉(北香那)が側室になった。
見た蔵:最初は嫌がってた家康も、時間が経つとまんざらでもなさそうでしたね。センパイ、側室って、そんなにいいもんなんでしょうか?
同 門:前回紹介した、ドラマ10「大奥」で将軍が苦悩しているのを見ただろう? 私にわかるわけがない!(というか、そのネタは勘弁してくれ。今日はウチに妻が……)
同門夫人(以下、夫人):アラ、見た蔵さん、いらっしゃい! お茶でも入れましょうね。
見た蔵:こんにちは。お邪魔してます! 今日は、センパイに大河ドラマのお話を伺おうと……。あれあれ、センパイ、どこ行くんですか?
同 門:ちょっとトイレに。驚きの展開については、後ほど……。
見た蔵:(エエッ、そんな殺生な……)お茶、ありがとうございます!
ところで、奥さんは「どうする家康」をご覧になっていますか?
夫 人:もちろん。松本潤クンの大ファンですから。「嵐」のファンクラブにも入ってたのよ。
見た蔵:じゃ、コンサートにも行かれてたんですか?
夫 人:チケットがなかなか当たらないのよ! すごい倍率でね。だから一度も行ってないの。
見た蔵:そうですか……。ときに「どうする家康」は面白いですか?
夫 人:女性キャストがいいわよね。私は、とくに酒井忠次(大森南朋)の妻の登与(猫背椿)がお気に入り。
見た蔵:(マニアックなところを攻めてくるなぁ)お葉が家康の寝所に向かうときに、いろいろアドバイスしてましたよね!
夫 人:そういえば、さっき、側室がどうとか言ってたわね。戦国時代の武将の家はそういうもので、普通のことだったんでしょ?
見た蔵:センパイは、そう言っていました。
夫 人:でも女性として、側室になるのは、本当にうれしいことだったのかしら? 侍女でいるより待遇はずいぶんよくなるだろうけど。実のところ、色恋がらみで側室になるケースは多くないんじゃない?
見た蔵:お市の方(北川景子)もそうですが、武家の女性ともなれば政略結婚が多かったと、センパイが言っていました!
夫 人:正室の侍女に殿がうっかり手を付けて、なんてこともあったと聞くけど。きっと、色恋よりも跡継ぎをつくるほうが最優先よね?
見た蔵:お葉も「お勤め」と言って、緊張していましたね。
夫 人:正室にとっても側室にとっても出産は避けられない、いわば「業務」。医療だって今とは比べ物にならない低いレベルでしょうから、子どもを産むのも命がけだったでしょうね。
見た蔵:その上「男子を産め」っていうプレッシャーもすごかったみたいです。
夫 人:本音では、「もう、やってらんない~!」じゃないかしらね。
ところで、家康って側室は何人いたの? まさかお葉ひとりじゃないわよね?
見た蔵:センパイに禁じられているんですが……(スマホで検索)。諸説あるものの、正確な人数は分からないみたいですね。
夫 人:じゃあ子どもは何人かしら?
見た蔵:16人だそうです。
夫 人:いま瀬名で2人、お葉で1人だから……、あと13人か。側室ひとりやふたりじゃ足りないわね。
見た蔵:今回の「側室をどうする!」は、まだまだ終われないですね!
『吾妻鏡』を読む家康、再び。その表情がステキすぎる!?
見た蔵:(センパイ遅いな)ところで、大河ドラマはいつも一緒に見るんですか?
夫 人:そうね。でも、忙しいときは、NHKプラスで見たりするかな。
見た蔵:感想を言い合ったりもするんですか?
夫 人:いいえ。うっかり感想を言うとね、あの人、すぐ講釈を始めるの。それを聞くのがちょっとウザくてね(笑)。
見た蔵:そ、そうなんですね(……ちょっとわかる気もする笑)。
大河ドラマって、前回の「鎌倉殿の13人」も今回の「どうする家康」も、人間関係が複雑で難しくないですか?
夫 人:そんなに難しいかな~? 私は松本潤クンを見てるだけで楽しいから!
見た蔵:はあ……。(奥さん、俳優は「クン」づけなのか?)。
夫 人:家康がしょっちゅう困ったり、悩んだりするじゃない。そういうときの潤クンの表情が最高。勇ましいときより、そういうシーンが大好きなの! かわいいじゃない?
見た蔵:「鎌倉殿の13人」もそんな感じで見てたんですか?
夫 人:ええ。北条義時役の小栗旬クンも、前半のウロウロしてるところがよかったわね。後半の悪役ぶりもこれまた味わいがあったけど。
見た蔵:そういえば、「鎌倉殿の13人」のラストにサプライズ登場した、『吾妻鏡』を読む家康が、今回出てきましたね。
夫 人:お葉に肩をもんでもらって、気持ちよさそうな潤クンのシーンね。あのときのちょっとゆるんだ表情がステキよね! うん、ステキすぎる♡
見た蔵:……はぁ(苦笑)。
夫 人:そういえば、旬クンが太宰治役をやった『人間失格』っていう映画見た?
見た蔵:見ました。太宰がモテモテでうらやましかったです。
夫 人:見方が浅いわね~。あれは、太宰自身がなぜ自分がモテるのかわからずに、三人の女の間を優柔不断にウロウロする演技が見どころなの。
見た蔵:そこがいいんですか?
夫 人:そう。「鎌倉殿の13人」の義時も、終盤、なんで自分が権力者になったのか、よくわかってなくて、ふっ切れてないのよ。それを旬クンが見事に演じてたから、面白かったの! 大河ドラマだからって、歴史がどうのなんて、あまり考える必要はないのよ。
見た蔵:なるほど、そういう見方もあるんですね~(滝汗)。
夫 人:ああそうだ、側室になったお葉のお兄さん誰だっけ、「うどの」なんとかって…?
見た蔵:鵜殿長照(野間口徹)ですね! 家康が彼の城を落として、息子2人を人質にして、瀬名と子どもを今川氏真(溝端淳平)から取り戻したという。
夫 人:ああ……。野間口クンって、コミカルな役柄のイメージが強いんだけど、あの寡黙な武将姿はとてもカッコよかったわね~。
夫 人:あとほら、阿部寛クンがやってる、坊主頭でひげぼうぼうの……?
見た蔵:はいはい、武田信玄ですね!(いろんな楽しみ方があるんだなぁ……。ある意味、これはこれで「達人級」?)
同 門:ただいま~。なんか、盛り上がってるじゃないか。
見た蔵:センパイ~、どこ行ってたんですか?
同 門:いや、ちょっとコンビニに……。冷蔵庫に牛乳がなかったから。
夫 人:アラ、気が利くわね。
見た蔵:かゆいところに手が届く。まるでお葉みたいですね!
夫 人:家では存在感が薄いですって?(笑) じゃ、私は女子会でイタリアンの名店に行くので、ごゆっくり~。
同 門:……(苦笑)。
大河ドラマで描かれるセクシュアリティーは!?
同 門:やれやれ、妻のいるところで側室のこととか聞かないでくれよ(苦笑)
見た蔵:失礼しました~。でも、なんでそんなに困るんですか?
同 門:(コホン)で、さっきの続きだ……。今回は驚きの展開で「側室をどうする!」は終わったね。
見た蔵:お葉が同性愛をカミングアウトして、家康がそれを認めて、側室のお役御免という。
同 門:最近では、セクシュアリティーをテーマにしたり中に織り込むドラマが増えている。よるドラ「恋せぬふたり」などはそのいい例だろう。お葉を演じた北香那は、このドラマで主人公・咲子(岸井ゆきの)の妹・みのり役を好演している。
見た蔵:そうだったんですね! 今回の生真面目なキャラクターもよかったです。
同 門:大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では、鎌倉殿となった源実朝(柿澤勇人)が、北条泰時(坂口健太郎)に和歌を送って愛の告白をしていたね。
見た蔵:泰時に「送る相手を間違えましたね?」とスルーされていましたけど。
同 門:少し前では、松山ケンイチ主演の「平清盛」(2012)で、藤原頼長役の山本耕史が男色を演じるシーンがあった。男性同士の同性愛は珍しくはなかったようだよ。公家もうそうだし、武将とその小姓とか、僧侶同士とか。
見た蔵:女性同士というのは、記録にないんでしょうか?
同 門:さて、どうだろうね。そういう女性はいただろうけど……。
ドラマでは、扱い方がセンシティブで難しいんだ。今回は、家康は同性愛について理解を示した、それくらい懐の深い人でした、というのがオチだよね。でも、ドラマからはそれ以上のメッセージは伝わらないように感じたんだ。
見た蔵:今回感じた居心地の悪さは、その辺から来てるのかな……。
同 門:セクシュアリティーやLGBTQといったテーマに対しては、当事者が自分らしく生きられる社会を目指して、公平公正な議論をし、アクションを起こさなければならない。これは、今まさに現在進行形の課題だよね。違う時代の話とはいえ、ドラマのいちエピソードとして扱うのは、やや無理があるようだ。
見た蔵:さて、今回のラストでは、政治情勢が大きく動き出しましたね。
同 門:信長(岡田准一)に伝えられた「討たれた将軍様」というのは、室町幕府の13代将軍・足利義輝(1536~65)。14代の義栄は政争に巻き込まれて将軍職はわずか8か月。そこで信長は義輝の弟・義昭を15代将軍に擁立して、京都の中央政権への足掛かりを固めようとするんだ。
遠藤珠紀先生の関連コラムを読めば、ドラマの背景がよくわかるよ。
▼#11 13代将軍足利義輝暗殺「将軍さま御討死」家康(松本潤)と将軍家との意外な関係とは!?▲
さてここでクイズ!
家康に武田信玄が、会おうと言ってきた。彼はどんな要求をするのでしょう?
見た蔵:信玄はライバルの上杉との戦を切り上げて、京を目指すわけでしょ? 信長も京を目指して動いてるんだから、背後を衝かれるとまずい。なので、家康に同盟を持ちかけて、信長に対抗したいんじゃないですか?
同 門:ほほう。キミの読みも深くなってきたね。
見た蔵:で、家康はこれを断るんです。やっぱり信長は怖いですからね。
同 門:では、次回を楽しみに待つとしよう。
さて、今夜は妻もいないし、一緒に行きつけの町中華行って一杯やろうか?
見た蔵:え? 奥さんは高級イタリアンで、ボクらはいつもの餃子とビール?
同 門:どーもん、スイマセーン! ウチの「おんな城主」は厳しくて、小遣いが少ないんだ。
見た蔵:まさに、民の苦しみがおわかりでない(笑)。
(第11回、大胆レビューにつづく)
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第1回:「どうする家康」が「鎌倉殿の13人」から引き継いだものってなんだ!?
第2回:「どうする家康」が“居心地の悪い”ドラマに感じるのはなんで⁉
第3回:家康を諭した於大の方のメッセージが深い!その真意ってなんだ?
第4回:お市の方より今川氏真がおもしろい⁉ってなんだ?
第5回:脚本家・古沢良太が描く織田信長VS.織田信長ってなんだ!?
第6回:立役者は半蔵(山田孝之)ではなく氏真(溝端淳平)ってなんだ!?
第7回:家康より“家”をつくるのがうまかった空誓上人ってなんだ?
第8回:三河一向一揆と本多正信の行動は“複雑系”ってなんだ!?
第9回:正信が家康を「大タワケ!」と言い切る理由ってなんだ?